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馬鹿女が見舞いに来なくなったお陰かどうかは知らないが、俺は院内のナースちゃん達に一杯カワイガッテ貰って順調に回復した。
ところが、元々金のナイ俺にバカ高い治療費が請求され、半年も家賃を滞納していたマンションの大家から遂には住む家を追い出されてしまった。
俺は已む無く友人宅を転々とするハメに……
出社すると、俺の部署を社長自らが出向いて案内してくれた。
……そこには、あの馬鹿女が……
えっつ? この女が課長で俺の上司だってぇええ??? 
第4話 形勢不利?
部署に配属された当日も、業務の説明は一切ナシ。
 
よくそれで仕事が出来るなって?
 
俺の部署にはCAD図面が作成出来るPCが一人に一台ずつ宛がわれている。
 
そのPCには、インターネットはモチロン、社内情報やメール・チャット機能からお助けマニュアルなんかの情報も当然リンクしてある。
 
馬鹿女は俺に一言、業務関連とお助けマニュアルのDBがどこのフォルダに入っているかを教えると、後は総てPCで調べるようにとしか言わなかった。
 
……なんて大雑把な上司なんだ?
 
見掛けと中身が全然つり合ってねーぞ?

 
大雑把と言えば……
 
この前も馬鹿女は、俺に業者カタログの紙面情報を電子データ化するように依頼して来た。
 
俺はその資料カタログがどこにあるのかを聞いたのに、「見ればわかるでしょっ?」と壁一面の資料キャビネットを指差して言い放った。
 
仕方なく膨大な量のキャビネットを俺は端から端まで延々と探したが、結局それは見付からなかった。
 
他の社員に聞けば、全く関係の無い別の場所にあるキャビネットにその資料があったんだ。
 
俺はその資料探すのに、まる一日も掛かったんだぞー!(怒)
 
自分の持ち場の資料置き場くらい知ってろよな?
  


「日高さん、この計算式これで合っているの?」
 
昨日提出していたフレーム強度の構造計算に、また馬鹿女がインネンを付けて来た。

「何度も見直したんですけど? 間違っていますか?」
 
俺の言い方が気に入らなかったのか、馬鹿女は口を尖らせた。

「私は、合っているのかと訊いているのよ?」

「だから……」

「貴方が私に質問するの?」

「……」
 
言い掛けた出鼻をくじかれた。
 
俺はムッとなる。
 
最近、毎日がこんなカンジ。
 
俺は話の内容について議論したいのに、この馬鹿女は俺の言い草が気に入らなくて突っ掛かって来る。
 
自分で構造計算なんかササッと出来る頭持っているのに、馬鹿女は俺には特に冷たい。
 
部下のミスは上司のミスだろ?
 
もし、これで俺が間違っていたとしても、アンタが上に提出する前に黙って確認すれば良いじゃないか。フォローしてやるってぇ意識はねーのかよ?
 
仕事しろよ。
 
あ〜〜〜うぜ〜〜〜


「……再確認させて下さい。ご返却願えませんか?」
 
俺は、渋々片手を出した。

「合っているのかと訊いているだけよ?」
 
ぶち!
 
らちの明かない押し問答につき合わされ、それでなくても栄養失調気味で苛々していた俺は、遂にキレた。

「だから返せよッ!」
 
俺のそのひと声に、タダでさえ静かだったフロアの誰もが息を潜めてシンとなる。

「何よその反抗的な態度は!」
 
馬鹿女も負けてはいない。
 
フィットで俺のインテグラを負かした時みたいな視線を投げ付けて、応戦して来やがった。
 
くう〜〜〜っつ! 
 
今、思い出しても頭に来る〜〜〜ッ!
 
興奮したせいか、手足の先がシビれて息が上がった。

「態度どうこう言うなよ! 大体課長は忙しいって言って……」
 
俺はそこまで言うと、急に身体が動かなくなった。モチロン、口も動かないから喋れない。

あれ?
 
ふら付き?
 
ナンだ? この浮遊感は?


「きゃあぁー!」
 
その場に居合わせた事務員の彩加(さやか)ちゃんと美紀(みき)ちゃんのかわいらしい悲鳴が耳に残った。
 
その日、余りの空腹に、俺は馬鹿女と言い争いをしている最中でありながらも、眩暈めまいを起こして派手にぶっ倒れた。
 
部署内は一時騒然となった……らしい。



(あれっつ? ナンだこれ?)
 
自分の身体が変だ。
 
俺は自分自身の中に居た。
 
まるでSFの主人公が自分の感覚を切り離されて、サイボーグにでもなっているみたいな感覚って言えばイイのかな?
 
目の前の大木の前に女が居た。
 
その女はあの馬鹿女――

なにぃ?
 
俺は焦った。
 
馬鹿女は奇妙にうねった大木に、両手を頭の上で合わせて荒縄で縛り上げれられていた。
 
シャツ一枚しか着ていない馬鹿女の胸元は乱れて大きく肌蹴はだけられ、既に上下とも下着は取り払われている。

俺が脱がした設定か?

 
いつもは髪飾りできっちりまとめている黒髪が、乱れて頬や首筋に貼り付いていた。
 
ぐったりとしたその表情で時折、「はあぁん……」とか言って甘い溜め息が漏れている。

うわ……

モノ凄い色っぽさに、俺は鼻血が出そうなくらいのぼせ上がった。

うん?
 
俺の利き手が何かを掴んでいる。
 
不思議に思って視線を落とし、左手のモノを見詰めた。

えっ? こっつ、こっつ、コレはぁ〜〜〜
 
手が震えた。
 
俺の左手は、馬鹿女の体液でぬらぬらに光った極太バイブを握り締めていた。
 
察するトコロ、馬鹿女はこのバイブで1(ラウンドを終え、汗にまみれて快感の余韻に浸っているのか?

チョッと待て……こんなの俺じゃねーぞ? ……つか、るんならこんなコソクなマネなんかしねーし。

モウロウとした途切れ々の意識の中で、馬鹿女は涙眼になりながら「お願い、もう止めて」とうわ言のように何度も繰り返してツブヤイテいた。
 
柳眉を寄せ、潤んだ瞳で、切なく俺を見上げて来る。
 
その表情がまたイイ!
 
俺の顔が卑猥に笑った。

「まだだ。俺に公衆の面前であれだけの大恥を掻かせたんだ。その代償は大きいからな? 俺は最低限の生活さえままならなくなってヒト以下の生活を強いられたんだ……あの時、オマエのフィットさえ居なければ、俺はこんなに酷い目に遭うコトは無かった……全部オマエのせいだ!」
 
俺は自分に『非』が有る事でさえ、卑怯にも馬鹿女に転嫁して言い放った。

何だよ? これって本当の俺? 深層意識下の俺の本性なのか?
 
俺の声に、馬鹿女はいやいやと首を横に振った。

「良いザマだ! こうして外で見ず知らずの奴等に、もっとオマエの恥ずかしいコトを見てもらえよ!」
 
いつの間にか辺りには野次馬の人だかりが出来ていた。

って、野外プレイかよ?

「……い……や……見ない……で……」
 
声も絶え々に懇願する。

「さあ、第2ラウンドだ!」
 
俺は馬鹿女の折れそうな細い両足を抱え上げ、M字開脚させながら、バイブのスイッチを入れた。
 
低いモータ音と小刻みの振動が、大きく開いた馬鹿女の中に潜り込む――

「いっ、いやあああ……」
 
馬鹿女が身体を大きく仰け反らせ、悲鳴を上げて泣き喚く。
 
取り乱した淫乱な姿が俺の網膜に焼き付けられる――



「ん……?」
 
ココどこだ?
 
温かい。
 
俺は懐かしい(?)ベッドの感触にうるうるした。
 
さっきのは夢だったのか……? 

それにしても、妙に生々しかったよなぁ……
 
俺はまだ動悸どうきが止まらないでいた。

「……」
 
全身が汗ばみ、股間が凄く熱くてズキズキする。
 
やべーな……俺、まさかこんな妄想でイッちゃったのかぁ?
 
両腕が何かの抵抗を感じながら、もぞもぞと動いて俺の分身に触れた。
 
いつもの存在感……何とかセーフだったみたい。
 
俺って、そんなに馬鹿女のコトが嫌いなの……か?
 
……まあ、少なくとも馬鹿女からは嫌われているのは確か……だよな?
 
ホッと安心したら、左腕に軽い重みと、妙に暖かい温もりを感じた。
 
俺はてのひらを返して、その温かい重みの原因をまさぐった。
 
むにっ!
 
柔らかい……ってナンだ? 

コレ? 

……あっつ! コレは…… 
 
えへへ〜
 
覚えのあるこの堪らない感触に、眼を閉じたままで俺の顔がだらしなく緩んだ。
 
けど、コレは誰の???


「……?」

ぱちっと眼を開けて左腕の方を見た。

「うごっ……」
 
俺は慌てて声を押し殺す。
 
俺の目の前に、さっき(時間的にどの位経ったのか判らないけど)まで俺と口喧嘩していたハズの馬鹿女が突っ伏して眠っていた。
 
俺の左手は、馬鹿女の片胸かたちちをしっかりと掴んでいたのだ。
 
夢でのコトもあって、俺は赤面しながら慌ててぱっと手を離す。
 
ひやぁあ〜、さ、さ、触っちゃったよぉ〜
 
これって痴漢になるのか? 不可抗力だあぁ!
 
えっ、えっ? ナンで?
 
俺は辺りをキョロキョロと見回した。
 
遮光カーテンから漏れ出て来る、外から差込む月明かりに辺りは薄暗く照らされていた。
 
八畳ほどの、俺にとってはメチャクチャ広いフローリングの部屋。
 
ベッドの反対側の壁には一面がクローゼットだった。
 
こんなにクローゼットが必要か? 

俺なんか衣装ケース一つで十分に間に合うぞ? 
 
俺は無駄に広い(と、庶民的に思った)この部屋に呆れた。 
 
察するところ、病院内ではないらしい。
 
どう見たって個人の寝室。
 
これってこの馬鹿女の……部屋?

「ウソッ」
 
俺は慌てた。
 
……まさか襲われたりはしてないだろうな?
 
真っ先に頭に浮かんだ不安。
 
俺だってあんな妄想……ってか、夢を見ていたんだ。可能性としては十分考えられる。
 
俺はベッドの中でランニングとトランクス姿で眠らされていた。(誰に脱がされたんだ?)
 
ザワワと悪寒を感じながらも、俺はそのベッドから馬鹿女を起こさないように、そーっと這い出し、脱走する準備を……
 
ぐううう〜〜〜!

「!」
 
あっちゃー!
 
馬鹿馬鹿! 俺の腹の虫! こんな時に何で喚くんだよ?
 
たちまち馬鹿女の眼が覚めた。
 
ってぇ、このノリは何かの童話のハナシかよ?

「ウン……? あら、気が付いたの?」
 
まだ眠そうに眼をこすりながら、俺を呑み込もうとしそうなくらいの大きな欠伸をした。
 
ひいいい……
 
俺はもう半泣きだ。

「しっ、失礼しましたぁ!」
 
俺はそそくさと部屋から出て行こうとして、馬鹿女から首根っこを掴まれた。
 
そのまま後に引っ張られ、情けなくベッドに引き倒される。
 
こういうシチュエーションって、普通男女逆じゃねーか? 
 
ナンで俺が引き倒されなきゃなんねーんだよッ? 

恥ズイじゃねーか!


「どこに帰るの?」

「……はいい?」
 
その言い方は、既に俺がどんな状況で生活して日々を繋いでいるのかを知っている口振りだった。

「何……の、こと……」
 
愛想笑いが凍り付く。

「どこに帰るのかって訊いているのよ?」
 
社内で俺と口論していた口調とは全く違っていた。
 
ナゼだか優しく聞えるのは、この馬鹿女が俺を救ってくれた女神様に見えたからか?
 
……き、気のせいにしておこう。

「……」

「また社内の仮眠室に戻って生活するつもり? いつまでもバレてないと考えない事ね?」
 
サスガの俺も、コレには言葉を失った。
 
……何でそんな事まで知ってンだよ?
 
幾ら俺よりも金持ちだって、幾ら俺よりも恵まれた環境だからって、幾ら俺よりも年上でキレイな美人だからって……

面と向かってハッキリ言うなよ。
 
それだけでヘコんじまうよ。

「……」

「黙秘するの? 黙っていたって時間の無駄よ? さっさと認めて謝れば?」
 
その言いようにムッとなった。
 
俺に逃げ道さえも作らせずに追詰める言い方……相変わらずキツイんだよ。
 
やっぱり、さっき優しいと思ったのは気のせいだ。

「ナンで個人的なコトまでアンタに報告して謝ンないといけないんだよ?」
 
俺は口を尖らせた。
 
馬鹿女は一瞬、口籠くちごもって顔色を変えた。

「そ、それは……日高クンの上司として……」

「関係ねーだろっつ? モットモらしい理屈さえ思い浮かばねーのかよ?」
 
おっつ、形勢逆転かぁ?

 
ぐううう〜〜〜!

思いっ切り、俺のハラが鳴った。
 
ンがあああ!
 
せっかくのチャンスが台無しだ。

「くっくっくっ……あーっつははは……」
 
馬鹿女がまたしても馬鹿笑いをする。
 
ちえっ!
 
俺は赤面しながらそっぽを向いた。

「くすくす……ああ、ゴメン。笑ったりして……」
 
え?馬鹿女が謝った?
 
俺は自分の眼と耳を疑った。

「お腹、空いてるのよね?」

「ええ……まぁ」
 
俺は大人しく肯定した。
 
つか、この状況下での否定は不可能だろ?

「キッチンに食材があるから、何か作って?」

「……?」
 
俺は再度自分の耳を疑って固まった。

「聞えてる?」

「……はい。聞えてます」

「じゃ、作って?」
 
馬鹿女はにっこりと余裕で笑った。

「はいい?」
 
何スかぁあ???
 
今、何て言った?『作って』……だと?
 
俺、飢え死にしかけてるのに……普通、こういった状態ならとっくに食事が出来てるってのが話のセオリーじゃねーのか???

「あの……」

「なに?」

「作って……って、俺がですか?」

「そうよ? 他に誰が居るの?」

「……」
 
俺は黙って馬鹿女を指差した。

「アタシ? 無理。ほら、早く起きて作って。アタシだってお腹空いたんだから」
 
言うなり、俺は二の腕を掴まれて無理矢理ひょいと引き起こされた。
 
俺よりも身体小せーのに、見掛けに寄らず、力強えーな?

「あの……無理……って?」

「だって、作れないもん」
 
はあああ???
 
しかも、『そんなの当たり前じゃん』ってぇ顔すんの、止めてくんない?
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