警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
俺は恵理との情事(未遂だろ?)のアト、有紀とヨロシク遣っていたコトがバレテしまった。
またしてもかよ?
ハラに据えかねた恵理が俺を注意しようとした時、中断するように携帯が鳴った。
そして恵理は、携帯に掛かって来た相手を俺は気にならないのかと訊ねて来た。
俺は「課長の『オトコ』にはなれませんし、なりたくナイですから」なんて心にもナイコトを口走ってしまった……
第20話 お嬢様?
「……」
俺の強烈な一言が余程コタエタんだろう。
恵理は向かいのテーブルで立ったまま、息を呑んで呆然と立ち尽くしていた。
そして恵理の息遣いさえ聞えてきそうな静けさに、俺は険悪な雰囲気が漂っているのを微かに感じ取っていた。
ずるっ……
俺が味噌汁をススッテいる音がヤケに大きく聞こえる。
「食べないんスか? ……メシ」
俺は恵理とは視線を合わさずに、抑揚のナイ喋り方をした。
顔を上げなかったから表情は見て取れなかったが、テーブルの上から見える腰の辺りで軽く握り締められていた白い拳が、ぐっと強く握られていた。
その拳が俺に向かって飛んでくるか……?
とも思ったが……
「……」
不意に俺の視界から、恵理の姿が消えた。
パタン
恵理の部屋のドアが閉じられた。
俺は口を動かしながらも顔を上げ、恵理が消えて行ったドアに視線を送った。
……言い過ぎだ。
恵理のハネッカエリの性格から、何かもっと言い返して来るかと思っていたのに……
携帯の相手がオトコだか、オンナだかあの状況では俺に判るワケなかったんだ。
俺のカンで、オトコだと勝手に思っていただけだったんだ。
ホントに。
あーあ、マジで核心……突いちゃってたよ……
「課長〜? メシ、済んでないっスよー?」
俺は座ったままで声を張り上げた。
「……」
返事……ナシ。
「喰っちゃってもイイっスかぁ〜?」
「……」
駄目だ。
俺、恵理を泣かしちゃったのかなぁ?
俺は恵理のコトを気にしながらも、テーブルに残った食い掛けの恵理の玉子焼きに箸を伸ばしていた。
間も無くして、恵理の部屋のドアが開いた。
「……」
椀を持って味噌汁を掻き込んでいた俺の手が止まる。
俺は恵理のガラリと変わった姿に眼を剥いていた。
恵理は薄いアイボリーのジャケットを腕に掛けていた。
純白のシャツの襟を立て、その胸元には小粒ながらも存在感のあるダイヤのネックレスが輝いている。ピアスにも同じくダイヤ。左手首には豪華なバングルタイプの腕時計と、細い金色の鎖があった。下はジャケットとお揃いのタイトスカートだ。
こうして見ると、ヤッパリ正真正銘のお嬢様。
キアイが入ったそのイデタチは……明らかにドコカにお出掛け。
俺へのアテツケかよ?
今日、予定無かったんじゃないのかよ?
『ダメ(連れて行かない)』って言ったからか?
「今日、遅くなるから。夕飯要らない」
俺の視線を撥ね返すように、恵理は無表情でそう言った。
まるで社内に居るみたいだ。
「はぁ……」
「車、好きにしてて良いから」
その視線は、俺からの一切のコメントを拒絶していた。
「フィット、無いと困るんじゃ……」
「別ので行くから」
は? ……別の?
二台もあるのか。贅沢だな。
車はフィットだけじゃなかったのかよ?
ナンで今まで隠してたんだ?
別のがあるんなら、ナニも一緒に会社に通勤するコトねーだろう?
「じゃ」
恵理はツンと澄まして俺に背を向けた。
……怒って……る?
ベランダで洗濯物を干していると、マンションの地下駐車場から一台の真紅の車が現われた。
(洗濯機は乾燥機能があるが、基本俺は外気に晒しての自然乾燥がスキだ)
へぇ〜BMWのM6かぁ〜〜〜
サスガは金持ちが住んでいるマンションだ。アレ一台で家が買えるぞ。
俺は洗濯物を干しながら、暢気にその真っ赤なBMWを眼で追った。
車が右折して、右側シートに座っていたドライバーが見えた――
パサリ……
俺の手から、洗濯したばっかりの恵理の淡いピンクのスリップが無造作に落ちる。
「えっ……恵理?」
俺はそんなに視力が良い方じゃない。だけど、ドライバーのシルエットは確かに女性で、俺が毎日眼にしている女のものと変わらなかった。
ドライバーは、間違いなく恵理だったんだ。
虻川のオヤジが居る修理工場に遣って来た俺は、偶然来ていた松永や向井達四人と合流していた。
久し振りの再会に募るハナシも一杯あって、暫らくは和気アイアイと盛り上がっていたが、俺がココに来た理由にハナシが及ぶと、雰囲気が一転した。
ココに俺が来たのは、勝手に置いてあった俺の※-1)ランエボを復活させる為だったのに、オヤジの奴は俺のランエボをトックに廃車処分にしていたんだ。
「勝手にすんなよ! こンのぉ! クソオヤジ!!!」
「うるせぇ! テメェのモンなんか知るけぇ!」
コトが発覚して俺とオヤジは掴み合いになったが、幸いにも松永達が俺達にストップを掛けていた。
ひと悶着あり、更には俺が乗って来たフィットを見るなり、急に皆一様にお互いの顔を見合わせて口をツグンデしまった。
「なっつ、ナンだよ? 俺がフィットに乗ってちゃワルイのかよ?」
チョットカッコ悪いけどよ?
俺の様子に、向井はいいやと首を横に振った。
「そうじゃない。司、オマエいつからフィットに乗ってる?」
「え? つい最近……だけど?」
俺は周りの空気が読めない状態で戸惑った。
ナンか深刻そうな雰囲気……?
「オマエ、八幡神社の夏祭りに行った?」
「? ああ」
それがどうかしたのかよ?
「……やっぱし」
皆から、溜め息が漏れた。
=「コイツだよ」
=「ああ……」
=「ゼッタイ」
それぞれが囁き合う。
ナンだよ? 気味悪ィな。
「オマエ……ヤバイよ」
松永が眉間にシワを寄せて、キビシイ表情をした。
「ナンで?」
「ナンでって……」
ハナシが読めねー。
がぁ〜っははは……
黙っていたオヤジが突然馬鹿笑いしやがった。
酒ヤケした赤ら顔をくしゃくしゃにして。
「ははは……司よぉ、お前ぇ〜、そのフィットで連中の※-2)GT-R潰したんか?」
「いっつ?」
……ツブシタ……?
オーバーホールは免れねーとは思っていたけど、やっぱお釈迦にしてたのか。
=「ヤバイよ司ぁ〜」
なおも豪快に笑うオヤジを後目に、松永が小声で諭す。
「ヤバイって、ナニが?」
「乗っていた連中、成和会の奴等だぞ?」
「……」
背筋に冷たいモノが奔った。
成和会――この辺り一帯の暴力団だ。
「連中、その時の白いフィット、マジで捜してるぞ?」
「お前ンだろ? あの車」
向井がフィットに向けて顎を杓った。
「……」
いや、俺のじゃナイケド……
「見付かったらタダじゃ済まされないぜ?」
松永が青ざめた顔で俺を脅した。
「そう、ビビルな。白いフィットなんかザラだ。そこいらで走っとる。ナンバーさえ連中が覚えていなけりゃーな?」
オヤジは軽く受け流すが、多分それはきっとムリ。
追いかけっこは二十分以上もしていたんだ。
ゼッタイ連中にナンバー覚えられてるし。
「ま、見付かりゃあそれはそれで振り切って逃げるまでよ?」
オヤジはそう言って不器用にウインクを遣した。
カルク言うなよ。
「……キモイ」
俺はボソリと呟いた。
オヤジのウインクなんか欲かねーや。
「あん? ナンか言ったかぁ?」
オヤジはヒヒヒと笑って、俺に擦り寄って来た。
キモイよオヤジ。
「うわ、オヤジ酒臭ぇ〜〜〜」
俺は鼻を摘んで顔をロコツに顰めた。
再びオヤジが馬鹿笑いする――
オヤジとの遣り取りは、ピットに入って来た赤い車で中断された。
う〜〜〜ん、久し振りに聞く高級車のクリーンなエンジン音。
「うわ、すっげ〜〜〜」
「フル装備BMじゃん」
振り返った松永達が感動モノの声を上げた。
赤いBM……???
ナンだかイヤな予感が……
ガチャッ
勝手知ったる様子でピットに停まったBMWのドアが開いた。
真紅のドアから、白いスニーカーを履いたほっそりとした女のオミアシがスラリと現われる。
「おお〜っ」
松永達のドヨメキが聞こえ、俺はゴクリと喉を鳴らした。
「いっつ???」
「……」
BMWから降りて来た女は、サングラスを徐に外すと、一瞬だけ俺と視線を絡めて来た。
猫のようなキツイ視線で一瞥をくれるが、無表情を決め込んでいる。
……恵理!!!
ナンでココが判ったんだよ?
だけど、今のお嬢様姿の恵理は、俺の眼には『触れるコトさえ叶わない遠い存在の女』に映っていた。
シカトかよ……
俺は軽く舌打ちした。
「お待ちしていましたよ。お嬢さん」
オヤジは急に営業口になって、丁寧に頭を下げた。
「お世話になります」
恵理はオヤジに軽く会釈をすると、ニッコリと微笑んだ。
どうやら俺を捜してじゃなくって、偶然ココに来たみたいだ。
しかも、恵理がオヤジに向かって頭を下げてるし!!!
※-1)ランエボ=三菱ランサーエボリューション。
※-2)GT−R=日産GT−R。
いよいよ今日で2007年が終わります。
応援してくださった皆様、お世話になりましたサイト様、ご指導・ご鞭撻・そしてご協力頂きました先生方……
本当にありがとうございました。
2008年が皆様にとって素敵な年でありますように!!!
何故かR18サイトさんで、えっちナシで終わってしまいましたが……(^^;
ワタシ、和 貴も一層努力致します。
今後とも宜しくお願いいたします。
(2007/12/31 和 貴)