警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
遂に俺は恵理からのギブのコールを出した。
勝った!!!
そう思ったのは束の間。俺は恵理の反応にブレーキが利かなくなってしまい、恵理の身体に夢中になっていた……
止めると言っていた俺が……
コレって、俺が違反したコトになるんだろーか???
第19話 意地悪?
「課長? もう起きてくださいよ。掃除、デキナイじゃないスか」
「うう〜ん……」
気だるそうな生返事が返って来た。
早く起きて食って貰わないと、片付かないし、俺の予定が狂っちまう。
「朝食、冷めちゃいますよ?」
「今日はナニ?」
消え入りそうな声で囁く。
「和食です。鮭に、ダシ巻きタマゴ、トーフとワカメの味噌汁。納豆はご随意に」
「お味噌汁、お揚げ入ってるの?」
「いえ」
「お揚げも入れてくれないと起きない……それに、鮭はいい。朝から欲しくないの」
ひく……
全く……相変わらずの好き嫌い。
俺の顔が引き攣った。
「いい加減に起きてくれませんかぁ? 九時半過ぎてますよ?」
「今日は予定ナイもん」
恵理はベッドの中でモソモソと動いて、起きるのを嫌がった。
こンのぉ〜〜〜今度こそ犯すゾ?
ベッドの中の恵理は、まだ真っ裸だ。
「課長の都合でしょ? 俺、行きたい所があるんです」
「ドコ?」
「……修理工場」
「……修理……工場? 行って見たぁい!」
恵理は瞳をキラキラさせて、急にガバッと起き上がった。
そして、自分が昨夜の俺とのゲームでそのままの姿だってコトに気が付いた。
白い肩から胸元にかけて付けられた幾つものキスマークが、昨夜、俺との関係がウソじゃないってコトを物語っていた。
傷にならないようにと注意して結んでいた両手にも、薄っすらと……見ようによってはアザが付いているみたいだ。
その姿はまるで強姦されたアトみたいだった。(って、やっぱし『みたい』じゃなくってそのまんまなのかな?)
恵理は真っ赤になって、慌ててシーツを手繰り寄せる。
その仕草に、妙に『女の子』らしさを覚えて、俺は軽くソソラレタ。
けど……
「ダメです」
俺は甘えてナツク恵理を、不本意にもムリに拒否していた。
「どぉして?」
そんな眼で見ないでホシイ……
結局理由は言えなかった。
行き先は虻川のオヤジのいる(車の)修理工場だった。
俺が車を覚えたのは十七の時。
トーゼン、無免許。
呆れるホドの度重なる補導に、俺は親からトックに見放されていた。
代わって未成年の俺の面倒を見てくれたのが、アブ(虻川)のオヤジだった。
子供の居ないオヤジは、俺の身元引受人を何度も遣ってくれたし、ホントウの親子みたいな付き合いをしてくれてた。
木村工業に就職が内定した時は、親以上に喜んでくれたし、コレを期に『峠』から卒業して、車も其れなりのに換えろと説得されていた。
オヤジの意見に素直になれず、逆らって……あン時は何度も殴られたっけ……柔道の締め技で、堕とされたコトだって一度や二度じゃなかった。
俺にとってのイチバンの拠り所的存在のオヤジだったから、入社式での事故のコトも、退院後の悲惨な生活も、逆に一切知らせてはいなかった。
つか、言えねーよ。
音信不通はこれが初めてじゃなかったが、これ以上、オヤジの頭を心配で真っ白にさせたくはなかったから。
なのに恵理は一緒に連れて行けと言う。
ムリだ。
恵理を見たら、恵理に向かってナニを言い出すか判らねー。
多少のコトは聴けても、コレばっかりは聴けねーな。
オヤジは見た目ヘンクツそうなクソジジイだが、中身もやっぱりヘンクツなクソジジイだった。
けど、仕事となればハナシは別だ。
見た目まんま……ヘンクツさならではの職人技。
オヤジの腕を頼って遠方からワザワザ遣ってくる奴も居る。意外と顔も広いし、人を見極める眼もスルドイ。
店構えはボロイし、今にも店舗兼自宅が崩れそうだ。
この第一印象からして、オヤジに修理依頼をしようと言う無謀な初心者は滅多にお目にはかからなかったが、縁あってオヤジが手懸けた車のオーナーは、その殆んどがリピーターになっていた。
その車のエンジンのベスト回転数を微妙な音と振動で聴き分け、同じ車種・年式と言えどもドライバーのクセを見切って微調節が出来るオヤジだ。
『ワシは車と会話が出来るけんのぉ?』
そう言って、誇らしげに笑うオヤジに、俺は尊敬の念を抱いていた。
だからこそ、俺は恵理を連れては行けなかった。
連れて行けば、多分……
今、俺が思っているコトをズバリと見透かし、言い当てられそうだったから……
『その女(恵理)には手を出すんじゃあねぇぞ?』って。
……判ってるよ。
自分で判っているコトを、自分以外の者から改めて言われるホド辛いものはナイと思う。ましてや、ソレが自分の力ではどうするコトも出来ないのなら、尚更だ。
「……」
遅い朝食を摂ろうと椅子に座った恵理の視線が、向かいに居る俺の左頬で止まった。
「ナンです?」
「その顔……」
「え?」
俺は慌てて利き手で頬を押さえた。
俺の頬には有紀から喰らった平手の名残があった。
マズイ……
「それ、ヤッタのアタシ?」
へ?
一瞬の間があった。
「え?……ええ、パンツ穿いたネコに」
俺はコレを幸いと、不敵に笑った。
恵理は俺がアレから夜中に出て行って、有紀とヨロシク遣っていたのに気付いていないんだ……
そう思うと、自然と頬が緩んだ。
「……ネコ?」
恵理は小首を傾げてくすすと笑った。
俺もつられて愛想笑いを浮べる。
「……んな、ワケないでしょっつ? 知ってるんだから。司が昨夜出て行ったコト」
「う……」
恵理の豹変振りに一瞬怯んだ。
「夜中に起きたら居なかったじゃない」
うわ……またしてもバレバレかよ。
「んな、ナンのコトですかぁ〜〜〜」
「惚けるの、止めてよね? 大体アタシの目の前で堂々と……」
言いかけた恵理の顔が強張った。
恵理の部屋から携帯の着信音がカワイらしい音を鳴らし始めたからだ。
「……」
「?」
俺は恵理の様子を窺った。
「課長?」
「……」
恵理はそのままフリーズしている。
あの呼び出し音は、確か以前聴いたような……???
「鳴ってますよ? 携帯」
時間で切れても、再び同一人物からの着信音が鳴らされる。
中々鳴り止まない携帯と、中々動き出さない恵理に、俺は首を傾げて訝った。
「う……わ、判ってるわよ?」
『恵理が出て来るまで鳴らしてやる……』
何度も掛かって来る着信音には、相手の執着心みたいなのが見て取れた。
「出た方がいいと思いますが?」
「判ってるってば」
口を尖らせた恵理は、俺との遣り取りを中断した携帯の相手に不満そうだった。
「はい……」
チラリと部屋から、ダイニングに座っている俺の方を一瞥すると、恵理は俺に背を向けて更に奥へと姿を消した。
今度も内容まではハッキリとは聞き取れなかったが、時間や場所の確認をしているらしかった。声の具合からしてソワソワと落ち着きが無い。
ナンだよ……恵理だって『オトコ』とナンノ約束だぁ?
人のコトが非難出来る立場かよ?
ハナシを終えて戻って来た恵理に、俺は全く興味が無いように振舞った。
「……ね?」
「はい?」
「さっきの相手……気にならない?」
覗き込むように、恵理は黙って玉子焼きをパクついている俺を低い目線で見上げて来た。
「……別に?」
俺は内心穏やかじゃなかったが、表面上では、俺の様子を面白がって窺っている恵理の視線に、却って冷静で居られた。
=「別に……別に……って」
俺のコトバを小声で反芻し、恵理は少しだけガッカリと肩を落とした。
「俺が課長のお相手にヤキモチ妬いたらイイんですか?」
俺の何かしらの反応をネコの瞳でワクワクと期待している恵理を見ていたら、急にナンだかムカついて……無性にハラが立って来た。
恵理と俺とがソコマデの仲だとは思われたく……ナイ?
俺の本心って……そうなのか?
それとも単なる意地悪……か?
「そんな……」
「いいですか? 俺は課長の『オトコ』にはなれませんし、なりたくナイですから」
俺は、自分でも驚くホド冷淡に言い放っていた。
ああ〜〜〜っつ、俺、ナニ言ってんだ?