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第18話……里香の体で
18
 俺の目の前にあるトイレの鏡に映っているのは、あきらかに彼女の姿だ。
 何が起きたのだろうか。
 俺は事態を飲み込むまで相当時間を費やした。
 なぜなら、俺が香山里香になっているからだ。
 俺はブラウス越しに胸を掴んでみた。
 柔らかいそれは確かに女のそれだ。まさぐるように触っていると力が段々と入ってくる。
 息が段々激しくなってくる。
 体の中から熱いものがこみ上げてくるようだ。
 俺は辺りを見回して、個室へと向かった。
 ブラウスのボタンを外し、穿いているズボン……パンツといった方が良いのだろう、それを下ろしてからそれらを貯水タンクの上に軽くたたんでから置いた。
 俺はというより、“里香”は今トイレの個室で下着姿になっている。
 サテン地の濃いピンク色のブラジャーは黒いレースで縁取りがしてある。同色のパンティーはややハイレグ気味だが、浅ばきのためにお尻のところが心持ち頼りない。
 中学のとき、姉の下着を物色して、穿いたときと同じ感覚だ。
 あの時も興味本位で洗濯物になっていた姉の下着を穿いてみた。当時、今までにないくらい自分の息子がビンビンに大きくなった記憶がある。
 今は俺自身は興奮しているのだが、その興奮を表すモノが股間に付いていない。
 俺はパンティー越しに股間に手をやった。
 もちろん、そこには俺の大事な一物はない。
 パンティーのレースをあしらった部分から俺の手は段々と股間の奥の部分へと移動する。
 指の腹でまさぐる。
 気持ち良い。息が自然が激しくなっていく。
 頬が熱くなるのが分かる。
 俺はパンティーのクロッチ部分を触った。
 プックリとしたところが敏感になっている。そこを勢いに任せて強く触れた。
「痛っ!!」
 そんなに力を入れたわけでもなかったが、痛みを感じた。
 俺はその一番感じやすい、プックリとしたところを自然と優しく触った。
 それがまた、今まで以上に高揚感を高める。
「気持ちいい……」
 自然と声が出てしまった。俺の、と言っても里香の声が個室の中で反響している。ということは吐息も個室の中で反響しているのだろうか。
 しかし、それでもこの気持ち良い、高揚感を伴う行為を止めることができない。
 もう片方の手もブラジャーの上からではなく、カップをずらして直に胸をまさぐっている。
 やはりと言うか、乳首のところが特に敏感になっている。
 乳首を触るたびに全身に電気が走ったような感覚が襲う。
 そして、その度に乳首が充血していくのが分かる。
 もう自分で何をやっているか判らない。
 俺はパンティーをずらし、片方の足を抜いた。
 そのため、パンティーはもう片方の足首の辺りに心細そうにぶら下がっている。
 俺は股間に手をやった。指を秘部の奥へと進めていく。
「あん……」
 自然と声が出た。
 俺は自然と足を広げた。それによって指が秘穴の奥へと入りやすいようになった。
 指が激しく前後する。自分の手じゃないみたいだ。
 俺の、里香の指はあなの中でも気持ち良いところを貪欲に探している。
 腹の中をかき回せれているような感触が俺を襲う。
 まるで体の中にドリルを入れているような感覚だ。
 腹側の壁辺りを探るように触る。じんわりとした何ともいえない気持ち良さだ。
 グチュグチュといやらしい音をたてる度に感覚は鋭敏になり、両手が触れているものへの対応が激しくなる。
 その度に体中に電気が走り、意識が遠くなっていく。
「アハン……」
 声も一段と大きく激しくなる。
 個室の中でこだまするが止めることができない。
「気持ちいい……いや、逝きそう……」
 体の芯からこみ上げてくるものがある。しかし、それは男が射精するときの恍惚感とは異にするものだ。
 頭が白くなっていく。
 それでも手を止めることができない。両手がもっと激しくなる。
「ア、ア、アン〜」
 腰がビクンと脈を打つように前後する。それも一度や二度ではない。
 始め、ゆっくり脈を打っていた腰が一層激しく二三度脈を打ち、止まった。
 俺は逝った。
 それも女として逝った。
 しかし、男のそれとは違い、急速な減速感がない。まだ体が熱い。
 今、体の敏感な部分を触ったら、また時間を置かずに逝きそうだ。
 触ってみようと思案をしているときだ。
「里香ちゃん」
 トイレのドア越しに早宮の声が聞こえる。
「トイレにいるの?」
「は、はい!」
 俺は狼狽したように返事をした。俺は急いでパンティを上げ、ずり上げていたブラジャーを直すためにカップの中に無造作に胸をつめた。
「もうミーティング終わったから。資料探しはまだかかるの?」
 早宮は長く地下から帰ってこない後輩を案じて、降りてきたようだ。
 そういえば、今日は定例の週末ミーティングの日だった。
「はい。もう大丈夫です」
 俺はできるだけ里香を装い、返事した。
「そう。それだったら、私は先にオフィスに戻ってるわね」
「はい。心配かけてすみません」
「気にしないで」
 早宮の声と同時にトイレのドアが閉まる音がした。
 もしかしたら、早宮のオナニーの声を聞かれてしまったのだろうか。
 自分のことだが、自分じゃない自慰行為に、急に恥ずかしくなった。
 俺は服を整えると資料室から適当に紙資料とCDロムを持って、オフィスへと戻った。
 時間はすっかり、終業時刻を過ぎていた。


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