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この作品は<R-18>です。
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序文……俺の痴漢体験
序
俺は自分で言うのもなんだが、もてるタイプの男ではない。
女に惚れられたことなんか、三六年生きてきて一度もない。
童貞を捨てたのも恥ずかしながら、吉原のソープランドで自分より一〇歳以上年上の年増のソープ嬢だった。
二三歳の時だ。
大学入学したてのときも、バイト先でも、俺は『既に俺は童貞を捨てて、それなりに女遊びをしてるぜ』って顔をしてきたが、実は女の手を握ったのも体育祭のフォークダンス以来なかった。
それも高校は男子校だったので、そういう機会は中学のときになる。
あっ……中学卒業後に女の体を触った経験が経験があったことを思い出した。
それは高校二年の冬のことだ。
朝、いつもより遅い電車に乗ることになった。
俺は高校まで電車通学だったのだが、満員電車に乗るのが嫌だったため、普段は電車が混む前に乗るように心がけていた。高校の頃には既に体重が七〇キロを越えていたため、自分の体温で汗をかくようなお粗末さだったのだ。
その日は寝坊し、駅に着いた頃にはすでにラッシュアワーの時間になっていた。
俺は厭々ながら、人の波に流されるように無機質な青色の鉄の塊の中に吸い込まれていった。
吊り革に掴まることも許されない超満員電車の中。自分の手がどこにあるかも判らないほどの混みようだ。
俺は持っているカバンを放さないように気を付けた。
これだから満員電車は嫌いだ。
その時である。
不意にカバンを持っていない手の意識が飛んだ。
俺の手の平に安物の背広の感触とは明らかに違う感触が触れた。あとで知ったが、それはカシミアっていうヤギの毛糸で作った高価なコートらしい。
しかし俺は意識がそこに集中したのは、その高級毛糸の感触のためではない。そのコートの奥にある柔らかいが弾力のある感触のためだ
カシミアのコートは、高級なだけあって、薄くても保温性が高い。そのため、安物の化繊入りのウールに較べて柔らかく、軽いものだ。ということは、コートの上から中に包まれた体の感触が想像できる。
俺より一〇センチほど低い、若いOLだろう。二〇歳代半ばといった感じだ。今となればストライクゾーンど真ん中のホームランコースの年齢だが、当時の自分としてはギリギリオネエサンといった感じだった。
が、好みと手の平に伝わる感触は別物だ。
俺の手の平はその女の尻の辺りにちょうど位置していた。無理をすれば、ギュウギュウ詰めの電車の中でも手を動かすことができただろうが、俺は無理に手を移動することはなかった。
その代わりと言っては何だが、無意識のうちに俺は、その女の下半身の双丘にある峠の位置を確認するように、手を上下に移動させていた。
心臓は今まで経験したことがないくらい早鐘のように鼓動している。隣に密着している朝から疲れた雰囲気のおっさんに気付かれるかと思ったくらいだ。
柔らかい。
俺は冷静を装いながらも手を上下し続けた。女は後姿で顔をうかがい知ることができない。
ショートカットの御髪からシャンプーの香りが俺の鼻をつく。あまり花のことは知らないが、その香りがバラであることはすぐに解った。
俺の手はいつの間にか上下だけではなく、小振りだがツンと上に向いた小山をまさぐるように楽しんでいた。
女は全く動じていないのだろうか。こっちに顔を向ける素振りすらなかった。
時間にして二、三分といったものだろうか、次の駅のアナウンスが車内の雑多な音の中に掻き消されるかのように耳に入ってきた。
まもなく、電車は待ち構えるプラットホームに滑り込むように停車し、中身を入替えるように全てのドアを開け、乗客の乗降を促した。
女はその人波に乗るように駅へと姿を消した。
残ったのは俺の手の平に残る柔らかい感触だけだった。
永遠に感じたその感触は、季節が替わる頃まで俺の心に安らぎをもたらした。
だが、その後も何度かラッシュアワーの電車にわざわざ乗ったりしたが、そういった経験をすることは卒業するまで一度もなかった。
当時から俺は自分から痴漢をする勇気すらなかった。
俺は自分が男として、こんなに身勝手だったということをその時、微塵にも思ったことがない。
そう……これから起こった不思議な経験をするまで、俺は自分がもてないのは、世間が悪いと責任転嫁した身勝手な考えを持っていたのだ。
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