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第5話 入室
 メールに書かれていたURLをクリックすると、背景が真っ黒のあやしげなサイトが現れた。

 無数のチャットルームがあり、どこも男たちが卑猥な言葉を掲示して、女が入って来るのを待ち構えていた。
 
 そのなかのひとつに、おじゃん丸というハンドルネームがあった。


「まこさん限定」


 まことは、真由子から由を取ったおじゃる丸だけのための名だ。 

 真由子は一度、背筋を伸ばしてから、入室した。


〔おじゃん丸〕 ちわー

〔まこ〕 はじめまして。よろしくお願いします。

〔おじゃん丸〕 よろぴく で、なにしゃべる?

 随分と軽い男だった。明らかに自分が優位な立場にいる、そんな感じのモノ言いだ。

 それでも、顔色をうかがわれるよりはいいと真由子は思った。

〔まこ〕 すいません。お忙しいのに。私、こういうところ慣れてないので。普通のチャットなら時々するんですけど。

 普通のチャットも数えるほどしか経験はない。が、自分からチャットに誘った手前、ウソを打った。

〔おじゃん丸〕 オレも最近はごぶさた。誘われたから。チャットって、アダルトじゃなかったの?
 オレ、こういうトコ専門(^◇^;)

〔まこ〕 いえ、いいんです。大丈夫です。

〔おじゃん丸〕 じゃ、トレーダーの朝は早いから、本題ね。目的はなに?

〔まこ〕 株のこと、いろいろ教えていただきたいです。

〔おじゃん丸〕 オレのメルマガ読んでるでしょ。ほかにどんな?

〔まこ〕 いきなりは図々しくて言いにくいんですけど、おじゃん丸さんの明日の注目銘柄とか。

〔おじゃん丸〕 そういうことか……。いいよ。別にオレなんかのでよければ。有名なデイトレーダーでもないし。ただ、まこが本当に女だっていう証拠に声ぐらい聞かせてよ。
 
 やはりおじゃん丸は、まこのことを疑っていた。当然だった。

 メールでケータイ番号を送るから、かけてくれと言って来た。
 
 真由子は番号非通知で、おじゃん丸に電話をした。

 チャットのノビノビとしたモノ言いとは違って、暗くこもった男の声だった。


「もしもし、あの、こんばんは。まこです。おじゃん丸さんですか」

「ああ……」

「あの、すいません、いま長く話せないんですけど……でも、私、女ですから」

「ああ。チャットに戻ろう」


 テレフォンセックスに持ち込もうとしていたわけではなかったようだ。


〔おじゃん丸〕 男のいたずらか、おばさんだと思ってた。声の感じだと20代前半? 大切な読者さんに失礼だけど、チャエッチしよ。 銘柄教える交換条件。

 ついに来た。覚悟はできている。

 真由子は年齢を答え、質問されるままに、住んでいる所、スリーサイズ、髪型、顔はだれに似ているか、いまの服装、下着の色、性感帯などを答えていった。

 ウソを考えるのも面倒なので、すべて本当のことを書いた。

 バーチャルでは、本当のこともウソになる。

 29歳。主婦。子供なし。都内のマンション。

 B85(Dカップ)・W58・H86。

 肩よりちょっと長めのストレート。

 最近では伊東美咲ちゃんかな。パジャマです。
 
 ただ、下着だけは大胆な方が喜ぶと思い、黒のTバックにした。本当はピンクのレースだった。

 性感帯は胸、あそこと打った。

「はい、これで勝手に想像して、興奮してね」

 どうせ何ひとつ信用されない、虚しい文字を打ち込むと、真由子は送信した。

 おじゃん丸は、やはり黒のTバックに反応を示して来た。
 
 信用はしていないが、かといって、疑っては盛り上がらない。

 興奮したければ、おじゃる丸も騙されるしかない。


〔おじゃん丸〕 おいおい、黒Tかよ、刺激的〜。

〔まこ〕 今日は特別。夫へのサービスなの。キャッ!

〔おじゃん丸〕 これからダンナとエッチするの?

〔まこ〕 さっき……
 
 おじゃん丸の興奮が一気に加速した。

〔おじゃん丸〕 えッ! 生々しい〜。さすが淫乱妻


「だれが淫乱妻だ!」

 でも、これは言わば接待チャット。

 早く終わらせたい真由子は、たたみかけることにした。
http://www.honnavi.com/rank.cgi?mode=r_link&id=4341


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