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第3話 氷結
真由子の夜のサービスによって、夫の機嫌はすこぶるよくなったが、肝心のデイトレの成績は無残を極めた。
200万円の株資金は、デイトレデビューからひと月で半分になり、2カ月後には50万円になっていた。
取り戻すためには資金がいる。
真由子は自分名義のクレジットカードからキャッシングを繰り返し、その残高が4社から200万円にまで膨らむのに3カ月とかからなかった。
そして桜が散り、フレッシュマンたちが希望に燃える春のある日、真由子は放心状態でベッドに横たわっていた。
「……もう、やめなきゃ。借りた200万円まで全部なくなっちゃう。ああ、どうやって返せばいいんだろ。頭がヘンになりそう……」
夫にすべてを打ち明ければ、おそらくなんとかしてくれるだろう。
万に一つも離婚なんて言葉を切り出す夫ではない。
そのくらい愛されている自信が真由子にはあった。
愛?
真由子は自分の価値のほとんどすべてが、その美貌に対して与えられてきたことを百も承知している。
ならば、夫の愛も、真由子の性格や人間性に対するものではなく、美貌に対してだ。
「見た目への愛」
「空洞の愛」
「愛なんて、そんなものよ」
男に持て囃され、同性に羨ましがられて生きて来た29年の間に、いつしか真由子の心にある愛は氷結していた。
薄っぺらな愛ばかりに囲まれ、彼女の愛は出る幕を与えられることなく、自らの輝きを封印させていたのだった。
「だめ、とにかく自分でなんとかしなくちゃ」
夫に頼れば、それこそ「見た目への愛」が明確になってしまう。
「能力もないのに株なんかに手を出して、大損したバカな女だけど、顔がきれいだから、いい体をしているから、許すよ」
夫が決して口にすることのない本音が、リアルに真由子の脳裡をかすめる。
これ以上、「見た目への愛」をあからさまに意識しては、夫婦生活など耐えられない。
きれいだから大事にされる中身はカラッポの人形。
それが夫が真由子に向ける視線の正体だと、真由子は思っている。
そもそも、エリートで、2枚目で、やさしくて、周囲からこの男なら真由子とつり合いが取れると思ってもらえるだろうから結婚した相手だ。
「見た目への愛」を、真由子は「世間の目」で受け入れたに過ぎない。
美しすぎる高嶺の花の自分と、つり合いが取れる男はそうはいない。
その中で消去法で選んだ夫だった。
それでも、心の奥底にある本音を隠しながら、お互いそれなりにうまくやっている。
しかし、これ以上、夫の本音を真由子が確信してしまったら、その均衡を保つ自信が彼女にはなかった。
「とりあえずは、スッキリするしかないか……」
手馴れた手つきで乳房を揉み、下半身を露わにすると、真由子は股間をまさぐり、割れ目を濡らした。
イクためだけの素早い作業だ。
機嫌の悪いクリトリスを無理やり固くし、激しく摩擦する。
その気のない体も、本人の急所を心得た愛撫には抗うこともできず、いつものような快感の波が襲って来て、そして果てた。
完全にモヤモヤが霧散するわけではないが、やることをやれば多少は落ち着く。
その多少は落ち着いた気持ちで、もう1度、善後策を考える真由子だった。
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