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第19話 鼓動
「撮ったわ。もうダメ。店員さんに分かっちゃう」

 真由子は震える指で鈴木に電話をすると、小さな声で、でも切羽詰った声で、訴えた。

「送ってください」

 そう言うと、鈴木はケータイを切った。

 自分のスカートの中を撮影する屈辱は、これが2回目だ。

 が、絶対に安全な自宅でするのと、カーテン1枚だけで辛うじてプライバシーが守られている試着室とでは、恥かしさがケタ違いだった。

 真由子のケータイ画面には、自分のスカートの中がハッキリと写っていた。
 
 パンストがピッシリと太股と股間を締め付け、白いショーツがその中に張り付いていた。

 いやらしい画像だった。

 真由子は息を殺して、画像を送信する作業を行なった。

 なんともいえない緊張感が、個室内に充満していた。

 トイレに走りたくなるような緊張感だった。

 乳首が硬くなっているのが分かった。

 
 鈴木の次の指令は乳首のアップだった。

 あまりの緊張感に、個室内で時折「はぁはぁ」と喘ぎながら、真由子は薄手のセーターと茶色のカットソーを脱ぎ、ブラジャーを外すと、すでに勃っている乳首にピントを合わせて、シャッターを押した。

「カシャッ」

 またもや、真由子の心臓が高鳴り、その鼓動が自分の耳にまで届いた。

「だめ、本当にもうダメ……許して……」

「いい画像ですよ、真由子さん。今日は白のパンティーなんですね。パンスト越しに見えるパンティーはたまらなく、いやらしい。乳首、コリコリになってないですか? もしかして興奮しているんですか?」

 電話口の鈴木は、チャットの時のおじゃん丸になっていた。

 練習……確かに電話でも緊張していた鈴木は、こうして電話でノビノビと真由子に命令出来るまでになっていた。

「次はパンティーを膝まで下ろして、スカートをまくって、撮ってください」

「そ、そんな……」

 ……………

「次は全裸をお願いします」

 もしだれかがカーテンを開けたら……。
 
 シャッター音も確実に漏れている……。
 
 下着の試着にしても不自然に時間がかかりすぎている……。
 
 不審に思った店員が声をかけてきたら……。

 真由子は手早く全裸になると、どんな画像かフレームを確かめることなく、3回シャッターを切った。
 
 いま、自分はこんなところで全裸になっている。

 これまで味わったことのないスリルが、真由子の全身を覆い、立っている両脚がブルブルと震えた。

 とにかく、真由子はスカートを身に着けた。少しでも早く、体を隠したかった。
 
 息を殺している時間があまりにも長く、呼吸が乱れ、苦しかった。
 

「下着を着けないで、試着室を出てください」

 下着を付けないという命令を拒む時間も、真由子には惜しかった。

 とにかく終わった。20分、いや30分はかかっただろうか。
 
 真由子は全裸にスカートとカットソー、その上にセーターを羽織り、ショーツとブラジャー、パンストを丸めてバッグに詰めると、試着室を出た。

 努めて冷静を装ったが、顔は明らかに上気していた。


 真由子は店員に不審がられたくないので、黄緑の方の下着上下を購入した。

 レジを待つ間、ノーブラの乳首をチェックし、スカートのすそを押さえる真由子の横を、男の店員が通った。

 真由子は全裸を見られているような恥かしさに、全身がカーッと熱くなった。

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