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第11話 下着
 いま自分がしていることを思うと、落ち込んでしまう真由子を支えていたのは、皮肉なことに真由子を落ち込ませているおじゃん丸だった。
 
 おじゃん丸の株の実力は、真由子の後悔を吹き飛ばし、気持ちを強くさせる力を持っていた。

 おじゃん丸のおかげで、この半月の真由子のデイトレは15勝2敗という驚異的な成績をおさめることができた。

 75万円まで減っていた真由子の株資金は、150万円に復活した。

 それは真由子が捨てた羞恥心とプライドへの対価といえた。

「あと250万円か。このペースなら案外早そう」

 株は資金が増えれば増えるほど、儲かる金額が大きくなる。

 仮に3%の値上がりで売った場合、75万円の投資では2万2500円の利益だが、150万円を投資すれば、4万5000円の利益になる。

 真由子は半月前より1つの勝負で2倍儲けることができるわけだ。

 特におじゃん丸の勝負する銘柄は値動きの激しいものばかりで、時には1日で20%も値が上がる場合もあった。

 あと半月ぐらいで、残りの250万円を取り戻すことは十分に可能だった。

「早ければあと半月、遅くても1カ月だわ」

 この計算だけが、真由子の希望の光となっていた。

 
 その後も出来る範囲の恥かしい画像を真由子はおじゃん丸に送り続け、おじゃん丸はデイトレの情報を真由子に教えた。

 2人の関係は良好だった。
 
 真由子の証券口座の資金は200万円に迫った。
 

 しかし、次第にエスカレートするおじゃん丸の要求は、ついに真由子の羞恥心の限界に届こうとしていた。
 
 恐れていた、あそこの画像を要求しはじめたのだ。
 
 チャット中、興奮したおじゃん丸は、何度か真由子にあそこの画像をねだった。

 そのつど、真由子はのらりくらりと断っていた。
 
 が、今晩のおじゃん丸はしつこかった。


〔まこ〕 もう、またその話なのぉ。そんなことより、わたし今日、すごくエッチな気分なの。激しくして……

〔おじゃん丸〕 見たい。もうガマンができない

〔まこ〕 あそこは見るもんじゃないわ。私だって、自分の見たことないもん。入れるところよ……

 自分で打った文字に赤面する真由子だった。
 
 事実、これまで付き合った男たちや夫にだって、部屋を明るくして、あの部分を見せたことは一度もないし、自分でもしっかりと見たことなどなかった。

 それでもおじゃん丸は引かず、「見たい」と繰り返した。
 
 いい加減うんざりして来た真由子は、

〔まこ〕 もお、怒るわよ。せっかくのエッチな気分が冷めちゃうじゃない。

 と、おじゃん丸を突き放して見た。
 
 すると、おじゃん丸はあっさりと引き、別の要求を提示した。

〔おじゃん丸〕 じゃあ、パンティーを送って。いま穿いている、脱ぎたてを

〔まこ〕 どうするの?

 真由子は、分かりきっていることを聞いた。

〔おじゃん丸〕 匂いをかぎたい。まこのいやらしい匂いを

〔まこ〕 やだぁ〜。ムリよ。そんなこと。恥かし過ぎるよぉ。もっとほかのことにして。コーチ、お願い!

〔おじゃん丸〕 あれもダメ、これもダメじゃ、もう儲けさせてあげないぞ。

 今度は、おじゃん丸が切り札を出して来た。

 これには屈するしかない真由子だった。

〔まこ〕 送るって、住所とかは?

〔おじゃん丸〕 オレが指定する郵便局に局留めで送って。まこの住所はテキトーにウソを書けばいい。

 真由子は、なるほどと思った。

 きっとネットでこういう売買の経験があるのだろう。

 おじゃん丸のキモさが改めて際立った。

 
 人間、一度経験したことがあることは、すべからくハードルが低くなる。

 洗濯済みの下着なら何度も盗まれたことがあるし、陰毛だって付き合って来た彼氏のうち、何人かには懇願されてその場で抜いて渡したことがあった。
 
 顔も知られていない、会うことも拒否しているおじゃん丸に対して、真由子は下着を送ることにそれほど抵抗感はなかった。
 
 大体が、おじゃん丸に最初のメールを出す時、なにかお礼が必要だと思った真由子が、まっさきに頭に浮かべたのが下着や陰毛だったぐらいだ。

 1点1銘柄という約束で、真由子は小さなダンボール箱にブラジャー2点、ショーツ4点、パンスト1点、そして陰毛3本をそれぞれラップで包み、送った。

 すでにこれまで送った画像に写っている下着ばかりを選んだので、いままでの画像が、実際に真由子が使用した下着だという証拠になった。

 この下着とチャットで、2週間分くらいの銘柄情報にはなる。

 うまくすれば、もう自分からは何も提供しなくても、株の負け分を取り戻せるかもしれない。

 恥かしい気持ちより、一度にたくさんの銘柄分のお礼が済むうれしさの方が、真由子の中では大きかった。

 もちろん、おじゃん丸が求めているのは汚れたままの真由子の下着だ。

 しかし、真由子ははじめから、そんな下着を送るつもりは毛頭なかった。

 洗濯し、自分の痕跡をすべて洗い落としてから、香水を振りまき、送った。

 この甘い香りを、真由子の匂いと勘違いしてくれればと思った。

 下着フェチのおじゃん丸にそんな小細工が通用するとも思わなかったが、その時はその時で考えればいいと思った。

 立場は徐々に逆転してきているのだ。

 いまやもう、おじゃん丸が真由子を求めている。

 ならば、どうにでもなると真由子は思った。

 
 案の定、おじゃん丸は、下着が洗濯済みであることを見抜き、文句を言った。が、その文句は強いものではなかった。
 
 洗濯されているとはいえ、真由子が実際に穿いていた下着には違いなく、チャットでおじゃん丸は十二分に興奮していた。
 
 おじゃん丸からすれば、次がある。

 洗濯済み下着の次は、脱ぎたての下着。

 おじゃん丸は怒って真由子との関係を断ち切るという選択が、出来なくなっていたのだった。

 それでも表面上の関係は、真由子が株情報を教えてもらう立場で、淫乱妻だ。

 真由子はおじゃん丸に感謝し、喜んで欲望のはけ口になり続けた。

 真由子の株資金は下着を提供した見返りの情報で、250万円を超えるところまで来ていた。

http://www.honnavi.com/rank.cgi?mode=r_link&id=4341


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