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官能は薄めです。
第二十四話 二兎
 ゼフィーラにレオンティウスの残した手紙を渡してから、すぐにゼイオンが動いて対処したが、レオンティウスは谷底に突き落として殺害したとゼイオンの弟は語った。
 セロはくだらない事件に巻き込まれてしまったと思いながら、その日は雪もひどくなりそうなので城に泊まることとなった。
 
 三時ごろセロは城から抜け出して、スーパーに一人で買い物にきていた。
菓子と酒を買いレジに並んだところで、レジのおばさんにセロは捕まってしまった。
「ちょっと、あんた新人のジョージじゃないの。なに堂々と仕事サボって買い物してんのよ。」

「えっちょっと…人違いですって。」

「問答無用、そんな嘘が通じるわけないでしょ。はやくエプロンつけて五番レジに入りなさい。」
 おばさんは有無も言わさずセロを新人ジョージとして扱い、セロにレジ打ちのバイトをさせた。

「キュウリが一点、ちくわが五点、かぼちゃが一点入りまーす…。」
 おばさんが怖くて逆らえずセロは一人レジ打ちを地味にこなすことになった。

「ちょっと、合計違ってるじゃないの!ちくわは五本買うと三割引きでしょ!!」

(しらねーよ…)
「はっ大変申し訳ございません、すぐに打ち直しますので…。」
 泣き出したい思いでいっぱいになるが、セロは黙って仕事を続ける。

 一方その頃、アラキナはセロを探しに行っていた。
(まったくもうどこ行ったのよ。ナンパじゃないだろうね…)
一人心配しながら、街の中をぐるぐると回った。
 歩いていると前から女性に絡まれている男性を見つけた。
女性が男の腕にくっついて離れない様子を見てアラキナは怒りながら、男性にラリアットをくれてやる。

「あんたね、急にいなくなったと思ったらやっぱりそういうわけなの!最低よ、心配したじゃないの。」
 男性は困惑の表情を浮かべてアラキナを見つめた。絡み付いていた女性はアラキナに驚いて逃げ出してしまった。

「…あの、あなたは?」

「ふざけるんじゃないわよ。とぼけないで。」

「あっ僕はもうバイトに行かなければならないんで、それじゃあ失礼します。あーもう、女の人に絡まれてしまったせいで完璧遅刻だ…。」
 走って逃げ出そうとする男の襟首をアラキナは逃すまいと引っつかみ引き寄せた。
ぐえっと声を漏らし男は、驚きの目でアラキナを見た。

「どこ行く気?帰るわよ。領主さまがセロに話があるんだってさ。」

「僕はセロじゃない…ジョージです。」

「この期に及んで言い訳しないでよ。大体髪色まで変えて私を欺くつもりだったの??」

「いいえ…地毛ですよ。」

「さあ行くわよ。」
 アラキナはジョージをセロと完璧に思い込み引きずっていく。

 アラキナは周りを見渡すとカップルが溢れているのに気がついた。今の自分とセロと見せかけたジョージと歩いている姿は他の者から見れば恋人同士にも見えるのではないかと、ショーウィンドウに映る自分とジョージを眺めた。
 アラキナは嬉しくなってジョージと腕を組んだ。ジョージは状況が読み込めないが、見知らぬ美女ににくっつかれて赤面して俯いた。

「ねえ、どっかでお茶してこうか。せっかく街にいるんだもの勿体ないわ。」

「えっでも…。」

「…駄目?」

「い…いえ、行きましょうか。」


 そして、場面をセロに戻すと死人のような顔でまだレジを打っていた。
次の客がセロの前に立ったときセロはその客から視線を感じて手を止めて客を見た。
若くてボインな娘がニコニコとしながらこちらを見ていた。セロも胸に見とれてニコニコする。
「おっぱいが二点入りまーす。」
 つい自分の立場を忘れてセロは早速下ネタをぶちかました。
だが、ボインな娘はニコニコしてまったく引いていなかった。

「ジョージ君もたまにはエッチなこと言うんだねー。ねえ、今日こそデートしてよね。ジョージ君てば硬派で全然のってくんないんだもん。」
 セロはこのとき初めてジョージになって良かったと感激していた。
(俺は今日からリューでもセロでもない、ジョージだっ。)

「いいよーすぐにこれ終わりにするからねーで、誰だったかな?」

「ひどいよー、ルチカのこと忘れるなんてえ。」

「ごめんごめん、昨日宇宙人に拉致られてから記憶が一部破損しちゃってんだよね。」
(イケルぞ、このままファックだ。やっときた俺のモテ期。)

「またー冗談ばっかり。」
 セロはおばさんの目から逃れて、ルチカの手を引いてスーパーから抜け出した。
ヤオサマとスーパーの名前が書かれたエプロンを着けっぱなしでセロはルチカと手を繋いで歩いていた。

「ルチカちゃんどうする?ずこずこでもしとく?」
 セロはダイレクトに調子こいてちょいちょいと連れ込み宿を指差しながら交尾の誘いをした。ルチカは多少は不信感を抱いたもののまだセーフのようだ。

「もー今日のジョージ君エッチー。」

「男はエブリデイエッチだよ。いつでも、股間マシンガン。」
 わけのわからないことを言いながらセロはルチカの腰を引き寄せ密着状態で宿の入り口に向かった。ルチカは少しだけ困惑しつつも抵抗は見せない。
(イエスッイエス!キタキター。ヘイッルチカおっぱい見せろい。)
抵抗しない様子にセロは大喜びなった。

部屋に入るとピンクに近い赤い照明が怪しく二人を迎えた。
「ふふっジョージ君とエッチしちゃったってみんなに自慢しちゃおっ。」

(ジョージとやらはモテるようだな…俺はモテないってーのに。チキショーでもありがと☆)

「ねぇ、さっきから思ってたんだけどさ、ジョージ君ちょっと老けた?」

「…気のせい。」
(老けたですって??まだ若いわい…畜生)

ジョージは二十歳だ、セロより七つも下だから老けて見えるのは仕方がない。
期待に満ちた目を向けるルチカを引き寄せて、両頬を優しく包みセロは見つめた。
(か…可愛い顔。)

ルチカはそっと目を閉じてセロを待った。
当然口付けて、その口付けをしてる間にルチカの服に手を入れて背中を撫でた。 若いルチカの肌はすべすべで手に吸い付くようだった。
ルチカは万歳をして、セロに服を脱がせてもらう。ルチカの肌は冬でも小麦色だ。
 その肌の色は健康的でセロにとっては新鮮だった。 胸は大きめだが重力に逆らいツンと誇らしげに上を向いている。
 揉めば、手を押し返す弾力があり、甘い匂いがした。
持ち上げて手を放せば可愛らしくぷよんと跳ねた。
「最高だな。」
セロは陳腐だが確な感想を漏らし薄い茶色の乳首に舌を這わせた。

「んぅ…おっぱいだめ…。」

「胸が感じんの?」

「うん…。」
ルチカの乳首は刺激を受けて固くなり形をはっきりとさせていった。
両方の乳首を舌と指で交互に可愛がるとルチカの少し幼い顔は艶を帯て女を感じさせた。
元々舌足らずな喋り方のルチカは快感を与えられてもっと舌足らずになっていく。

「んやっジョージ君もっと強くして。」
 言われてセロは強く乳首を摘みぐりぐりとしてやった。
 ルチカは面白いくらいに反応し、鼻にかかった甘い声をあげた。
胸でこんなに感じる女性はセロは初めてだ。
胸の愛撫に時間をかけてようやくルチカの下履きに手を掛けするすると脱がせた。
ゆっくりと足を開かせるとそこは熱を持ち蜜を溢れさせていた。
これだけ濡れていればすんなりと男を受け入れそうだが、セロにとっては珍しいタイプの女性なので愛撫に時間をかけてセロはもっとルチカの反応を楽しむつもりだ。
手始めに膣に中指を入れ空いてる方の手でぷっくりした芽を撫でた。
「ふっ…うん…」

 ルチカは快感から逃れようと腰を浮かせて後退しようとし、その瞬間セロは顔を出した肉芽にしゃぶりついた。

「ああぁやああっ」
 悲鳴に近い声をあげルチカの体から力が抜けた。

「もしかして、イッた?」
ルチカはセロの問いかけに力なく頷いて見せた。
感度のいいルチカにセロは大満足だ。

 セロはひくひくと動くルチカの蜜壷に肉茎を沈ませていく、中はきついが柔らかくざらついたそこはセロを自覚なく責めた。
ルチカのは名器だ、みみず千匹だかカズノコ天井だか噂の名器の持ち主だ。
 予想してなかった感触にセロは驚き一度引き抜いた。今までたくさんの女性を抱いてきたが、それに出会ったのは初めてだ。

「だめー抜いちゃ…はやく…。」

「あーはいはい…。」
(すぐ果てちゃいそう…)


 セロが楽しんでる中、アラキナはジョージと楽しくとパフェを食べていた。
「パフェ頼むなんてあんたにしては珍しいね。甘いもの食べる気にならないとか言ってたのに。」

「アラキナさん、何度も言うようで人違いですってば。」
 アラキナはようやくジョージに違和感を感じ始めた。カツラにしては自然で、それにいつもより若く見える。
 アラキナは席を立ちジョージの傍によるとジョージの服に手を掛けて少しずらした。
ジョージはアラキナの行動に驚き赤面し、アラキナはジョージの肌を見て蒼白になった。

「ないわ…傷が一つもない…やだ、本当にセロとは別人だったの…。」

「はい。ようやくおわかりになりましたか?」

「わーっごめんなさい。私ったら…。」
 アラキナはジョージに頭を何度も下げて謝った。ジョージは慌てて止めるが、アラキナは気が治まらなかった。
 
 そのときアラキナはレオンティウスの肖像画を思い出し、そのイメージがぴったりジョージに当てはまることに気がついた。
谷底に落されたものの遺体は誰も見ていない。ならば、ジョージがレオンティウスである可能性は高い。そう同じ顔がいくつもあるはずもない、アラキナはそう考えて口を開いた。
「本当にごめんなさいね。あの、あなたって領主様の息子さんよね?」
 アラキナは申し訳なさそうな表情を浮かべ再び謝罪をしてから、確信を得ようと考えを口にした。
「僕が領主様の息子?…」

「ええ、もしかしてあなた記憶がないの?」

「…はい、ある日気がつけば川岸に倒れていて近くにいた人に助けられました。僕はなにも覚えてなくて助けてくれた人に名づけられ今もお世話になっています。」

「じゃあ間違いないわ。あたなを心配して待ってる人がいるのよ。」

「…でも、僕は急にそんな領主さまの息子だと言われてもピンとこないし…。」

「わかるけれど、あなたのことを心配して嘆いているのに放置しておくのも可哀相だと思わない?」

「…。」
 ジョージは黙り込み俯くとアラキナはジョージの手を握って微笑みかけた。
ジョージは純情なのでこれしきのことでいちいち反応してしまう。

「きっと大丈夫よ。会うだけあってあとのことはそれから考えればいいじゃない。ね?」

「アラキナさん…。」
 同じ顔でもセロとジョージは全く違うなとアラキナは感じながら店を後にした。
先に歩くアラキナの後姿にジョージは熱の篭った視線を送った。アラキナが振り返るとはっとして頭を振るって平常な顔をつくった。
ジョージは一目惚れというよりアラキナに二目惚れをしてしまったのだ。

 アラキナはそんなことは知るわけもなく、前方を見て立ち尽くしていた。
連れ込み宿から、出てきた男女に目は釘付けだ。
 ヤオサマのエプロンにだらしないふざけたスケベ面の男は間違いなくセロだ。
可愛い女の子と肩を組みでれでれしているセロの様子に修羅と化したアラキナが歩み寄る。
恒例になりつつあるお仕置きタイムだ、ゆっくりと歩いてたがその速度は徐々に上がりアラキナは走り出しセロにローリングソバットをぶちかました。

「はんっ…」
 バキッと軽快な音を立ててセロは吹っ飛び無様に転がった。セロは白目を剥いてぴくりとも動かない。
ルチカはセロを慌てて起こし介抱を試みるが、仁王立ちの修羅の出すオーラに青ざめわけもわからずに逃げ出した。
 ジョージは呆然として立ち尽くすが、すぐにアラキナに駆け寄った。
「アラキナさん!なんてことを。」

「だって…。」
 アラキナはうっすら涙を浮かべてジョージを見つめた。先ほどの修羅の顔ではない、儚げで愛らしい可憐な乙女の顔だ。

「…まっまあ無差別じゃないのでしょう?じゃあいいと思います。」
 なにがいいのかわからないがジョージはアラキナを肯定した。
三途の川から戻ってきたセロはゆっくり身を起こしなにが起きたのかわからずきょろきょろしている。

「あれー…ルチカちゃんどこ…?」

「お目覚め?」
 青筋を浮かべているアラキナが視界に入りセロは飛び上がった。

「ひっ…違うんだ違う…これにはいろいろとわけがあって。」

「それはあとで聞いてあげましょう…。」

「はい…。」
(やべえ、アラキナがフ○ーザ様に見えてきた。第一形態から一気に最終形態いっちゃった感じだな…)

 セロはアラキナが怖くて直視できずに目を逸らし、アラキナの背後に立つ男に目がいった。
自分にそっくりな男を前にセロはぽかんとしてジョージを見つめた。ジョージもまたセロに釘付けになる。
「なんとまあ…二十歳くらいの頃の俺とそっくり…。」
 ただ、自分より品があり自分よりモテるジョージに妙な敵意を持った。簡単に言えばやっかみだ。セロはジョージにずいと近づきジョージのズボンに手を掛けて引っ張って中を覗きこんだ。セロはにっとしてどうでもいい自身を取り戻しジョージの股間を軽くぱしぱしと叩いた。

「ふんふん…まあこっちは勝ちということで。」

「…?」
 ジョージはそんなところを見られて頬を赤くする。

「頬染めるな。」
 セロは純情な反応に苛立ち地面に唾をぶっと吐いた。純情な女性にはひたすら優しくするが、純情な男にはやけに厳しい。

「セロ、彼が死んだとされたレオンティウスよ。」

「あーそう。じゃさっさと連れて帰って事件解決だな。」
 興味なさそうにセロは行ってヤオサマのエプロンを投げ捨てた。
ジョージのせいでレジ打ちさせられたのかという八つ当たりもある。

 城に戻るとレオンティウスの生存に城中が大騒ぎになった。
セロは騒ぎを無視して借りている部屋に行き荷物をまとめフェイが借りている部屋に行った。

「なぜ来る?」

「だって、あいつが帰ってきたからあの部屋使えないじゃん。ケチしないで今日は一緒に寝よ。」
 セロはフェイのつむじをくるくる円を描きなぞりながらさらさらした髪を指に絡めた。

「いちいち気持ち悪い真似すんな。」

「射精。」

「射精は関係ないだろ…。どっからそのワードがくんだよ。」
 セロは寝転がってフェイの尻を枕にそのまま眠り始めた。

「ご飯の時間になったら起こしてね。」

「ケツ痺れるまで動くなってこと?」
 フェイの問いに答えることなく寝息を立ててセロは寝始めた。
フェイはゆっくりと腰をずらし、セロの頭の下に使っていた枕を差し込んでやった。さらに毛布を掛けてはみ出た部分をしまうという細かい世話をするフェイだった。なんというか気持ち悪い仲の良さだ。
だが、セロが大きな連続した屁をブベブベぷうぷうと放つとフェイは静かに部屋から去ってしまった。

 その頃、レオンティウスと呼ばれ騒がれていたジョージは自分を取り残し、勝手に騒ぐみんなを複雑な思いで見ていた。両親の顔を見てもピンとくるものもなく、婚約者と名乗るゼフィーラが傍にいても知らない人にしか思えない。ジョージは周りに人がたくさんいるのに孤独感でいっぱいになった。一人でいる孤独より、こちらの孤独の方がこたえる。

 通りかかったアラキナはジョージの様子に見かねて声を掛けた。
「もう、休んだら?急に城に戻って疲れただろうし、まだ混乱してるでしょう?別に今部屋に戻ったって気づかれないわよ。みんなもうあなたが戻った喜びで満足しているようだしね。」

「そうですね、ありがとう。」
 アラキナはそのまま廊下にでて階段を上ろうとしたが、ジョージに引き止められた。

「アラキナさんは何をやっていたんですか?」

「明日でちゃうから見学してたのよ。で、それが終わったから借りてる部屋に戻るとこ。」

「そうですか、少しお茶でもしませんか?」

「ええ、いいわよ。ちょうど咽が渇いていたとこなの。」


 セロがウハウハな夢を見ている間、アラキナとジョージは静かに楽しくお茶の時間を過した。
 フェイが部屋に戻り、アホ面で寝ているセロを起こしてやりセロは夢精しそうなところ起きて助かる。
「すんごい久しぶりにエロイ夢見たわ。もう飯?」

「まだだけど、もう少しだから。」

「おまえ、俺が寝ている間に、エヴァにハメてきたんじゃないだろうな?」

「ねーよ。あいつもおまえと同じくアホ面で寝てたよ。」

「あっそう。あー乳首痒いー。」
 セロは乳首を掻きながら身を起こし、左右にゴキゴキと首を捻った。
時計がゴーンと鳴り六時であることを二人に知らせる。二人は食堂に向かい食事をして、その夜は仕方がなく同じベッドで寝た。

 朝がきてここを発つ準備を済ませて、部屋からでる、セロは廊下を進みフェイはエヴァンジェリンを起こしに行った。

 階段付近に近づくとなんだかひそひそと喋り声がする。
セロがその場に来たとき、アラキナがジョージの頬を叩いていた。セロは朝から修羅場を見てしまい立ち尽くした。一体なにがあったというのだろうかと推測するが答えはすぐにみつかった。アラキナが口元を拭ったのを見てセロはジョージに口付けされたことをすぐに悟った。
 このまま、黙って見ているわけにもいかないがセロはどうやって声を掛けていいのかわからなかった。

「えーっと、おはよう…。」
 セロは静かに二人に挨拶をしてその場を通り過ぎた。アラキナは全てを見られていたのかと思い焦ってセロを引き止めた。

「待ってよ、あの…。」
 アラキナは動揺して言葉がまとまらず伝えたいことがうまく伝えられなかった。
セロはアラキナに非がないことはもちろん理解している。だが、中途半端なアラキナとの関係はセロが口出しすることを躊躇わせる。無言でアラキナの頭を撫でセロは再び歩みだした。
 今度はジョージがセロを引き止めた。

「なんだ?」

「僕はアラキナさんを好きになってしまいました。アラキナさんを僕にください、あなたより幸せにする自身はある。」

「俺はアラキナのお父さんかよ…。まあ、いいんじゃないの互いがそれで良ければさ。」
 この城なら不自由なくアラキナは暮らせるだろうし、自分達と旅にでるより危険もなさそうだ。なにより、ジョージのように幸せにする自身もなければ、曖昧で好きだとも言い切れない自分よりよっぽどいい。魔術師が必要ならばどこかでスカウトすればいいとセロは考えた。
 喪失感はあるが、発言したことに後悔はない。

 アラキナは少しも引き止めぬセロに失望し、ショックで立ち尽くした。
そんなアラキナにジョージは向き直り、想いを告げた。

「僕はまだこんな状態だけれど領主の息子と自覚し、立派な領主になろうと思います。それをアラキナさんに支えて欲しい。結婚を前提にここに残ってください。」
 ジョージの告白にアラキナは赤面して黙り込む、なにしろ生まれて初めて真剣な告白を受けたのだ、まっすぐに見られて悪い気はしないが、まっすぐな視線に耐えられずアラキナは目を逸らした。

 そんな二人の様子をセロは目を細めて見ていたが、再び背を向けてその場から姿を消した。
すぐ後にエヴァンジェリンとフェイもセロと一緒に食事をしたが、そんなことがあったことは二人は知らなかった。

「あのさ、アラキナここに残るから。」
 幸せそうにホットケーキを食べていたエヴァンジェリンはセロの一言にホットケーキを喉に詰まらせ咽こんだ。

「なんだってえええ?」

「領主のせがれに見初められたんだよ。」
 表情を変えることなく伝えるセロにエヴァンジェリンは女性として怒りを覚えた。

「んで、おまえ了承しちゃったのかよ??」

「ああ。」

「この馬鹿っなんで止めないの!?」

「止める権利もないからな。」

「権利なんていらないだろ、馬鹿馬鹿馬鹿っ。」

「エヴァよせ。」
 エヴァンジェリンが息を荒げて怒りセロに文句を言うのをフェイが静かに制した。

「なんで、止めるの!?フェイの根暗!」

「根暗は関係ないだろう。それに二人の問題だ。」

「だってアラキナはセロが好きなんだよ?あーもう今頃引き止められなかったことを泣いているに違いない…あたしアラキナのところに行ってくる。」
 エヴァンジェリンは止める間もなく走って部屋をでた。
セロは少し困った顔を浮かべ珈琲を飲んだ。

「フェイ、エヴァンジェリン連れてきて。もうここでたいから。」

「わかった。」

 余計なことを考えまいとセロは立ち上がって両頬を軽く叩いた。


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