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エロなしです。なんだかぐだぐだした展開になってしまいました、すみません。
第二十三話 愚鈍
 セロ達は粉雪がちらほらと降る中、金を払い馬車に乗せてもらっていた。
馬車は街道を通りまっすぐに進んでいく。
馬車の中ではやることがなくて、セロは持っている武器のチェックをしていた。じゃらじゃらとでてくる数々の武器はどれも問題はなかったが、よく使う愛用の剣だけは刃こぼれが目立った。

(随分長いこと手入れもせずに使っていたからなあ…そろそろ鍛冶屋に頼んで磨いでもらうか。)

「どうしたの?そんなに剣を見つめて。」

「いやあ、刃こぼれが目立ち始めたからなんとかしなきゃなあって。」

「あら、町で新しいのでも買えば良かったじゃないの。」

「やだ。それにこの剣めちゃめちゃ高かいんだぞ。馴染みもあるしな。」

「どれくらい高いの?」

「家が建つくらい高い。」
 アラキナは値段を聞いて絶句し、剣を買うくらいなら家の方が買いたいと内心思いながら剣を見つめた。

「勿体ないわね…。」

「剣は男のロマンだから女にはわかんないかもな。」

 馬車が止まったので、セロは寝ているエヴァンジェリンとフェイを起こして馬車から降りた。着いたのは小さな村だ。
「お客さん、今日は吹雪になるらしいからここの村に今日は滞在した方がいんでないかい?」
御者はセロにそう言うと料金を受け取り戻っていった。

「あーもう、雪って本当やだな。じゃっ今日は宿を見つけたら各自自由行動と。」
 自由行動とは言ったが小さな田舎の村ではあまり遊べないだろう。宿を取ると、セロは村を歩き出した。後ろからアラキナも追ってくる。

「どこへ行くの?」
 アラキナはまたセロにナンパをされても困るので監視する気満々だ。
だが、こういうときに限ってアラキナに言えない行動をするつもりは元々なかったりする。

「鍛冶屋探すところ。」
 
 セロは適当に村人に鍛冶屋がいないか声を掛けた。
「いるにはいるんだけどねえ、その人達は剣とか作ってる人じゃないんだよね。主に髭剃り用の剃刀を作ってるんだよね。あと、はさみとかさ。まあ、行ってみるだけ行ってごらん。あそこの赤レンガの煙出ている家がそうだから。」

「ありがとう。」
 セロは剣が専門の鍛冶屋に行きたいところだったが仕方なくそこに行ってみることにする。
赤レンガの家に入るとやけに髭が濃い男が二人でてきた。

「なんか御用ですか?髭剃りのことなら私達兄弟になんなりとお申し付け下さい。私が兄のラムダッシュです。」

「私が弟のブラウンです。ちなみに私達兄弟は一日に五回は髭剃らないとすぐぼうぼう。」

「あっ…さようですか…。あの、剣の刃こぼれは直せない?」

「刃物は刃物だし、直せますよ。扱ってないのは剣なんてこの村では売れないからってだけだしね。」

「あっそうなの、じゃあこれ頼むよ。」
 セロは剣を兄弟達に渡した。兄弟達は剣をじろじろと二人で見つめてうんうんと唸る。

「むむんっこれ伝説の剣かなんかですか?地面に突き刺さってて選ばれし人しか抜けないーみたいな?」

「えっいや…普通に買いました。」

「へええ、でも良い剣だねー。初めてみるよ、こんな上等な剣。」

「あっわかる?いやあ、違いがわかる鍛冶屋さんだなあ。」
 セロは剣の良さをわかってもらい嬉しそうにニタニタしていた。
ブラウンは早速直しの準備をし始めて、ラムダッシュは仕上がり時間と料金の説明をセロにする。

「一時間半くらいで多分できると思います。今回は初回ということで一万のとこ二万でいいですよ。」

「ちょ…増えてる。なにが、でいいですよだ。」

「冗談ですよ。五千でいいです。」
 ラムダッシュは青い顎を撫でながら人の良さそうな笑みを浮かべた。
セロはついでに剃刀も買い、後で取り来ると言ってアラキナと赤レンガの家をでた。

「小さい村だし、期待はできないけどなんか店ないか探してみようか。」

「ええ、そうね。」
 この村は小さい村だが、色白な美人が多いことでちょっと有名な村だ。
すれ違う若い女性達はみんなどことなく顔が似ている。セロは店を探しながらついつい女性達にでれでれと見とれてしまう。アラキナはセロの足をぐりぐりと踏んで睨みつけるが、あまり効果はなかった。

「この村(美人が多くて)良いところだなあ。」

「そうね…。ねえ、なんか甘いもの食べたくなちゃった。」

「じゃあ喫茶店でも探すか。寒いし俺もどこかに入りたいしな。」
 雪は止んだり降ったりを繰り返していて、とても外は寒い。
指先も感覚があまりないくらいだ。
 見つけたのは小さな喫茶店だ、小さな村ではこれくらいしかない。
扉を開けるとカランカランとベルが鳴り、店員が来て席に案内してくれる。

 メニューはとても少ないのであまり選べないだろう。
アラキナはケーキと珈琲を注文し、セロは珈琲のみを頼んだ。

「あんた、もしかして甘いもの嫌い?」

「嫌いじゃないんだけど、あんま食べたいと思わないんだ。そう言えばフェイは甘いもの好きなんだよね。いくらでも食べれるくらいに。」

「フェイが?意外だわね。あんたのほうが甘いもの好きそうなのに。」

「そう?」
(ここの、店員さん可愛い。短いフリフリのスカートが素晴らしい…)
 セロは性懲りもなく、女性店員の足と尻を舐めるように見つめている。
女性店員が違うテーブルの食器を片付けようと少し屈むと、魅惑の角度になり下着が見えそうで見えない。それが、想像をかきたててまた良い。
セロはニコニコしながらその素敵な光景を眺めている。
 女性店員は厨房の方へ行くと、お盆にセロ達が頼んだものを乗せていそいそと持ってくる。

「可愛い…。」
 セロはその愛らしい店員の仕草に思わず小さく囁いた。
アラキナは悔しくてしょうがないのでセロの脛をこつんと蹴った。

「おまたせしました。」

「君、いくつかな?可愛いねえ、好きなタイプは?」
 典型的なうざい客のセロに店員は困った顔を浮かべる。
くだらないことで店員を引き止める奴、下ネタをかましてセクハラしてくる奴、メニューがまだ決まってないのに店員を呼ぶ奴はうざい客の条件とも言える。その一つにセロは当てはまっていた。
「いいのよ、無視して。」
 見かねたアラキナの言葉に店員は従い、仕事を済ませるとそそくさと厨房に戻っていった。

「ヤキモチ妬き。」

「うるさいわね、そんなんじゃないわよ。店員さんがかわいそうだったからだもんね。」

「はいはい。」
 セロは温かい珈琲を飲み一息ついた。アラキナは美味しそうにケーキを食べる。食べるとき、とても幸せそうな顔をするのでセロの顔も綻ぶ。

「おいしい?」

「うん。一口食べる?」

(でたっアラキナの「うん」、可愛いー。)

「食べさせて。」
 セロは口を開けた、アラキナに食べさせてもらう気満々だ。
アラキナは照れながらもケーキをセロの口に運んだ。「あーん」とかは言ってないが、傍から見ればなんとも腹立たしい光景だ。周りの者は爆竹やねずみ花火を投げつけたくなるような気分にさせられるだろう。特に恋人がいない者は余計にだ。

 暫らく店にいたが、そろそろ剣が仕上がっている頃だ。
セロとアラキナは会計を済ませて、ラムダッシュとブラウンの元に行く。
剣はピカピカで新品のように輝いていた。セロは上機嫌で受け取り鞘に戻して頬擦りして剣を抱きしめた。


 風が出始め雪もひどくなってきたので宿に戻り、その日一同は早くから就寝した。
次の日は、早く起き早いうちに宿からでて移動する。

 山ではないが、雪が降っていると足取りが悪い。暖かい気候のときより一同の移動ペースは随分と落ちた。
 灰色に汚れたどろどろの雪の上を歩き続けていると馬車がぬかるみに深くはまり難儀していた。馬は頑張って馬車を引くが車輪がぬかるみの上で虚しく回転するだけで馬車自体は動いていない状態だった。

「頭悪いなあ。」
 セロは見かねて馬車に近寄った。
近づいてくるセロを御者はただぼーっと眺めていた。

「毛布かなんか布あるか?」

「ええっとはいあります。ひざ掛けが中に…。」
 御者はセロの問いかけに素直に答えて馬車の中の者に声を掛けた。

「ゼフィーラ様、失礼します。ひざ掛け毛布を…。」

「いいわ、持って行って。」
 セロは中が見えないのが、どんな女性かわからないが透き通った耳障りの良い声だけは聴こえた。御者から毛布を受け取ると車輪と地面の僅かな隙間に差し入れた。

「おい、いいぞ。引っ張ってみて。」
 今度はがたがたと揺れたが泥濘から抜け出せ馬車は動けるようになった。
泥濘にひいた毛布はぐちょぐちょになってしまったが、御者はセロに礼を言った。
馬車の中のカーテンが開き窓も開いた。そこから、ゼフィーラと呼ばれた女性が顔を出した。

「ありがとうございま…!!」
 女性はセロの顔を見て驚き言いかけたところで絶句してしまう。
女性の反応でセロは困惑するが、軽い会釈をしてその場から離れてようとした。

「お待ち下さい!レオンティウス様…。」
 セロ達は唖然としながら立ち尽くした。セロはこの女性を知らないし、一度もレオンティウスなどと名乗ったこともない。

「えーと、人違いでは?」
 セロは困ったように笑い女性に言った。だが、女性は聞こえていないのかセロに抱きついた。

「ずっと、心配しておりましたのよ。会いたかった…。」
 手癖の悪いセロは抱きつかれて抱きつき返した。

「俺も会いたかった。」
 勝手に話を合わせるセロにアラキナは拳骨をくれてやり、ゼフィーラから引き剥がした。
ゼフィーラはアラキナをきっと睨むが、アラキナも負けじと中指を空に突き立てて睨み返した。

「あなた、誰かと勘違いしているようだけどこの人はレオンティウスとかいう人じゃあないわよ。」

「いいえ、この人はレオンティウス様に間違いありませんわ。とりあえず、奥方さまと領主様に元気なお顔を見せてあげてくださいな。」
 ゼフィーラはセロを馬車に無理やりに近い形で引きずり込み馬車を発車させた。
アラキナは走って御者の隣りに飛び込み、エヴァンジェリンとフェイは馬車の上に飛び乗った。
(なんて強引な女なのっ人違いだって言っているのに私達を置き去りに連れ込むなんて。)

「あのうレディ…本当に人違いですって。」

「……存じております…髪の色があの方は金髪だけれどあなたは茶髪…だけど顔がそっくりだわ。無理は承知ですが、領主様にあなたを見せて差し上げたいの。」

「えーっと…でも…。」

「お願い…。」

「はい!」
 セロは潤んだ美女の瞳に見つめられてあっさりと承諾してしまった。
馬車に揺られて城に着き一同はセロを取り返そうと馬車からセロを引っ張り出す。
セロの右腕にはアラキナが左腕にはエヴァンジェリン絡みつき、ゼフィーラを睨んだ。

「駄目だって、こいつはセロだし、別人だもん。」
 エヴァンジェリンは声を荒げてセロを引っ張った。
セロは二人に囲まれご満悦でアホ面でニタニタしているだけだ。

「そうよ、強引に連れて行くなんて失礼だわ。」
 アラキナも敵意剥きだしでゼフィーラを睨んだ。
高い身分のゼフィーラに対し遠慮もない二人だ。ゼフィーラは二人を落ち着かせようと咳払いをしてから口を開いた。

「失礼を承知で連れて行きました。人違いはわかっておりますが、悲しみにくれる領主様に見せてあげたかったのです。レオンティウス様はこの城の後継者でしたが、三ヶ月前に急に行方不明になってしまわれたのです。領主様も奥方様も悲しみにくれました。そこで、馬車の中でセロさんに頼んだのです。一日でいいからレオンティウス様のふりをしてお二人を慰めて欲しいと。」

「でも、そんなことしても解決にならないじゃん。」
 口を開いたのはフェイだ。言っていることは正しいが、ゼフィーラを悲しみに追い込んだ。

「まあまあ、フェイ一日だけだしさ。いいんじゃない?」
 エヴァンジェリンはゼフィーラの反応を見てついゼフィーラの肩を持った。

「リューがいいならいいけどさ。」
 フェイはセロを見た。セロは自分にふられて考え込んだ。
(一日くらいならいいかな。どうせ進みが悪い雪道だし。)

「んじゃあ、一日だけね。」

「ありがとうございます。」
 ゼフィーラは深くお辞儀をしてセロ達を部屋に案内する。広い階段を上り二階へと上がって行くときに、階段の壁には肖像画が飾ってあった。
それに描かれた人物はセロにそっくりだ。金色の髪で、遠くを見つめる眼差しは気品に溢れていて真面目そうだ。

「これが、レオンティウスさん?」
 エヴァンジェリンがゼフィーラに訊くと、ゼフィーラは頬を染めて頷いた。

「確かにそっくりだけど、こっちのが数千倍格好良いよな。同じ顔でもふざけた顔じゃないし。」
 エヴァンジェリンは描かれたレオンティウスを眺めながらうっとりしていた。
同じ顔でも、セロはどこか顔がふざけていてスケベ面だが、レオンティウスはそういうところが全くなく、セロとは違っていやらしさの欠片もありはしない。

「育ちと性格が違うだけでこんなに違ってしまうのね。」
 アラキナもエヴァンジェリンに同意の声をあげてレオンティウスの絵を眺めている。

「ちょっとー傷つくんですけど…俺が駄目駄目みたいじゃないかよ。」

「駄目駄目だもんなー。セロ顔、品がないし。」

「エヴァひでーよ…。」

「まあまあ、さあ上がりましょう。」
 立ち止まる一同を制してゼフィーラは部屋に案内した。
エヴァンジェリンとフェイとアラキナは使われていないが掃除は行き届いている部屋を貸してもらい、セロだけはゼフィーラにレオンティウスの部屋に案内された。
レオンティウスの部屋には大きなベッドがあり、上質な木でできた家具が置いてある。あまりごちゃごちゃと飾り立てずシンプルな物しか置いていない。

「一日レオンティウス様になっていただくのだからあなたはここをお使いになってください。今から、侍女達にお召し物を持ってこさせますので、少々お待ちを。」
 セロは一人部屋に取り残され、エッチな本は置いていないだろうかと部屋をくまなく探した。

「ない、なんにもない。そっくりさんは潔癖なのかな。性欲ないとか?」
 しかし、セロは諦めずに探すベッドも机も見たが、ベッドをセロはもう一度探しなおす。
ベッドなんて定番すぎて誰も隠さないはずだ。だが、ベッドには巧妙に隠されし本があった。
ベッドのマット下の木の部分に薄っすらと線が入っている。隠された引き出しがそこにはあった。セロはにっと笑い、線がある部分を軽く押した。すると、引き出しがにゅっと飛び出て卑猥な本が出てきた。題名はアカNE・タルホスペシャル。

「なにもそんなに巧妙に隠さないでも…健全なことなのに…。」

 一人でぶつぶつ言っていると侍女が部屋に入って、セロの服をさっさと脱がして上等な布でできた服を着せた。髪もささっと整えられて、セロは貴公子のように飾り立てられた。
 ゼフィーラはセロの姿にうっとりとしながら溜息をつき熱い視線を送った。

「もう少し真剣な顔をしていてくれませんか?」

「あの、ボクの顔ってそんなにふざけてます??」
(今普通の顔をしていたつもりだったのに…どういうこと??)
言われた通りになるべく真剣な顔をしてゼフィーラに見せる。

「ぷっ…。」

「なぜ笑う?」

「…すみません。普通でいいです。」 
 腑に落ちない思いでセロは顔をしかめる。
ゼフィーラは気にせずセロを領主の元へと連れて行った。

(あーちょっと緊張してきた。うまくできるかなー両親のことレオンティウスはなんて呼んでたんだろう。)

「ゼイオン様、ラーラ様、レオンティウス様が見つかりました。」
 ゼフィーラに領主の部屋の前で待たされ、中のやり取りを聞きながらどう演技していいのか考えていた。

「なんだと??それは真か!?わしのレオンティウスが…。すぐに連れてきてくれ。」

「本当に私達のレオンティウスが…。」

「はい、もうおりますわ。入ってきて下さい、レオンティウス様。」

「はーい、パパー、ママーただいまんこでーす。」

「…レオンティウス?」

(あれ、違ったか?) 

「そうですよ、ダディー?…お元気してました??」
 セロは馬鹿丸出しだが、これでも一生懸命だ。ゼイオンの肩を抱き挨拶しながらセロはレオンティウスの母ラーラに目を向ける。

(熟女だが、まだまだイケル、ひょひょ綺麗なおばさん。)

「わあ、ママン…レオンさみちかった…。」
 セロはラーラの胸の谷間に顔を埋め左右に頬擦りした。ラーラは拒絶はしなかったものの困惑気味だ。
(ひゃほーい)

「レオンティウス…一体どうしたと言うのだ…。そんなに明るい性格だったか?」

「ゼイオン様、レオンティウス様は頭を強く打ってしまい少しお加減が悪くなってしまっただけなのです。」
 ゼフィーラは慌ててセロをフォローして誤魔化した。

(正常なんだけど…)

「そうか、かわいそうに…レオンティウス一体この三ヶ月どこに行っていたのだ?」

「えっ…えっと…ふ、風俗行ってました!!」

「まあ…なんてこと…。」
 ゼフィーラは頭を抱えたが、セロは空気も読まず風俗に行ってきた感想をつらつらとゼイオンに聞かせる。ゼイオンは少し興味深そうにうんうんと頷きながら聞いている。

「今度はわしも連れて行くがよい。」

「はい、任せてよパパ!」

「あなた!!」
 ラーラは流石に怒ってゼイオンを睨みつけた。

「ごっごめん……なさい。」

「ママ、パパを叱らないで!ママが怒るところなんて見たくないよ…。それに風俗くらい可愛いもんじゃないか。」
 
 しかし、なぜレオンティウスは失踪したのだろう。両親にも愛されているようだし、なにが不満なのだろう。なにか重圧を感じることがあったのだろうか。セロにはわからなかった。

「あの、疲れたので一旦自室で休みます。」
 セロは一礼して、部屋へと戻った。
ゼフィーラは急いでその後を追う、セロは追ってきたゼフィーラに訊く。
「レオンティウスの消息不明後は部屋は調べたか?」

「いいえ。掃除はしておりましたが、そこまで踏み込んでいません。」

「後継者争いはあるのか?」

「…ないとも言い切れませんね。」

「表立ってはないということか。」
 セロはレオンティウスの自室に入ると机の中を引っくり返して手掛かりを探し出す。セロは一度本気で気になりだしたらとことん追求したいタイプだ。

 レオンティウスは部屋からして几帳面な印象がある。なにか残しているかもしれない。
机の中にはいくつかの手紙があった。ほとんどゼフィーラからのラブレターだったり、友達からだったり怪しい手紙は一つもない。

 セロは机の中をくまなく調べた。すると、机に仕掛けがあるのに気がついた。
だが、その仕掛けをどう動かせばいいのかわからない。
机の引き出しをはずすと不自然に四角く出っ張った場所がある。仕掛けをどうにかすれば開くのだろう。

「あーもう面倒くせえ。」
 セロは直したての剣を取り出して人の家の物だというのにも関わらず切り壊した。
すると何枚かの紙がでてきた。セロはそれを手に取り読んだ。

----自分になにかあったときの為にこれを書いておく。
叔父上を父上は信用しているが、私はしていない。調べると領主の座を前々から狙っていたことがわかった。だが、父上は私の言葉を聞き入れてはくれない。
父が十二月一日に私に正式に領主の座を譲ることを発表すると言ったがその前に私はどうなるかわからない。
なにかあったのならば、叔父上を疑ってくれ。
エリック、君は私の一番の理解者だ、君ならこれを見つけてくれると思っていた。----

「で、捕まっちゃったのかな?情けない男だなーもう。親父に聞き入れてもらえなくてもここまでわかってりゃなんとかできんだろうによ。こりゃ融通が利かないタイプだな。」

 セロはゼフィーラの元に行きエリックが誰なのか訊く。
ゼフィーラはさっとセロに紅茶をだすが、エリックの名を出した瞬間顔の表情が暗くなった。

「レオンティウス様が一番信用している家臣です。でも、もうこの世におりません。レオンティウス様が失踪した後に発作で亡くなりました。」

「発作じゃなくて、やばいことに首突っ込んで殺されたのかもな。」

「そんな…。」

「なんで、ちゃんと調べない?ちょっとここの城はおかしいぞ。領主も正直言って馬鹿だし、その息子も馬鹿だ。全てあまい、あますぎだ。随分ここの地は平和そうだが、そのせいで頭が呆けちまってるとしか思えない。」

(元凶である叔父の男も馬鹿だ。頭悪いのが集結しちゃってる。)

「なんと無礼な…。」

「生きてるか知らないけど、もう少し調べたらどうだ。ここの領主は息子を心配しているわりになんも動いちゃいない。」
 ゼフィーラにレオンティウスの手紙を渡し、セロは今度は領主の元に行く。
ゼイオンの弟の居場所を聞くためだ。


(安請け合いして、こんなところ来るんじゃなかった。)
 そう思ってはいても女の頼みはいつだって断れない。

「帰るときがっぽり金取ってやる。」
 この地は、全て徹底していた自分の生まれ故郷とは大違いだ。
セロの乗りかかった船はレオンティウスの行方を追うことになった。



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