警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
この小説は年下×年上のBL小説です。
年下攻めという言葉に嫌悪、不快感を抱く方はすぐさまUターンされた方が賢明です。
再会
駿平の言葉が翔の心のわだかまりを溶かしていった。改めて友人のありがたみを実感する。
もう迷いはなかった。
翔の頭の中にあるのはあの青年、ただ一人だけに向けられていた。
ひたすら走った。もう止まれない。自分の今の気持ちを抑えるものは何もない。
目指すはあの公園。今朝も向かった特別な場所。
(いてくれ、いてくれ、いてくれ……!)
何度も呟きながら、翔は全力疾走する。一秒でも早く到着したいために。
目的の公園に到着すると、翔は走ったために息切れをしてしまい、両手を膝に当て、息が整うのを待つ。
「ハァ……ハァハァッ……」
流れる汗を手の甲で拭いながら、それでも少しずつ落ち着いてくる心臓を抑え、ゆっくりと公園内にと入っていった。
ドクン……ドクン。一歩と歩くだけで鼓動が跳ねる。
まるでそれは再び訪れる運命の予感。翔の高鳴りは治まりそうになかった。
辺りに人影はなかった。まだ梅雨シーズンであり、今にも雨が降りそうな天候とあり、子供たちが公園で遊ぶといった光景は何処にもない。
公園内は静寂に包まれていた。
翔はまたも深い溜息を一つ漏らす。やはりダメだったか……。そんなにうまく会えるわけないか。世の中は実に厳しいものだ。
がっくりと肩を落とし掛けた時、その瞬間に翔の視界に入ったヴィジョンがあった。
その光景に翔は瞳を大きく見開き、またも時が止まった錯覚さえする。
運命は再度訪れる。あんなに待ち望んでいた光景が、今目の前に広がっていた。
ベンチの片隅でじっと座っている人物。その人物は何をするでもなくただ蹲るように身を小さくして座っていた。そして手には昨日、翔が渡した傘をしっかりと持っていた。
翔が思い描いていた光景が実際に起こっている。そう、これは夢なんかではない。
間違いはない、あの人だ……。自分が望んでいる、誰よりも会いたくて焦がれていたその人が今、自分の視界内に映っている。
翔の全身が一気に震え出した。
今、自分の視界の中にあの人がいる。間違いなくあの人が……。
翔の全身が打ち震える。
幻影でもなんでもない。正真正銘、会いたいと思い続けていたあの人がいるのだ。
自然と翔は引き寄せられるように青年の元へと近付いていく。昨日と同じように、自分は再現しているんだ。
翔の気配に気付いた青年ははっとなって顔を上げる。
昨日と違うといえば、今日は雨が降ってないというところだけか。他は昨日とまったく変わりはない。
青年と目が合い、途端に翔は歩みを止める。
心臓が破裂しそうだ。爆発するのではないかと思うぐらい、翔の心臓は大きな音を刻んでいる。
「あ……、あの……」
声を掛けてみたが、それから後が続かない。第一声がこんなんじゃな割けない。もっと気の利いた台詞が出ないのかと後悔する。
青年の澄んだ瞳が自分を映している。それだけで興奮しそうだ。
青年はじっと翔を眺め、そしてすっと立ち上がるとぎこちないが微笑を浮かべた。
「……昨日は……ありがとう……。その……、傘を返そうと思って……」
同時に黒傘を翔にと差し出す。それは昨日、翔が青年にと渡した傘だった。
だが翔は青年の声が聞けたことに感動して、差し出された傘の存在など目に入らなかった。
そんな翔に不審に思った青年は、戸惑いの表情にと変貌する。
青年の表情が曇ったことに翔も正気に戻り、慌てて出された傘を受け取る。
「あ、わざわざありがとうございます!」
思いきり頭を下げる。何でこんなぎこちない態度をしてるんだろうか。
傘を受け取ったことに青年はほっと胸を撫で下ろす。
「本当は朝早くに返したかったんだけど、君の家の住所とか知らないし……、俺もここに越したばかりでよくわからないから、君が何処の学校の生徒かわからないから……、ここに来れば君に会えるかなと思って……。でもよかった、君に傘を返せて。……本当にありがとう……」
ぽつりぽつりとまるで言葉を選んでいるような、そんな青年が愛しくて仕方がない翔であった。
そして自覚する。間違いがないと……。
自分は間違いなく、この青年に対して恋心を抱いていると。誰よりもこの目の前の青年が愛しくて、このままずっと時が止まったまま、何時までも一緒にいたいと願っている自分がいることに、翔は改めて実感するのだった。
青年が自分を求めてここまで来てくれたことが嬉しい。
翔の中に光明が差した思いだった。
そして誰よりもこの青年が愛しい。愛しくて出来ることならこのまま奪い去りたい。束縛したいとさえ熱い情欲に身を焦がす自分がいて、はじめてだらけの体験に、翔は身震いしそうになる。
「本当に……嬉しいです!」
言葉が続かない。もっと言いたいことや聞きたいことなどたくさんあるはずなのに、いざ本人を目の前にすると、言葉は何の意味もなくなってしまう。
「俺の方こそ助かったよ……。そして君を濡らしてしまってごめん。……俺の所為で君を濡らす羽目になって申し訳ないことしたなって……」
自分の身を案じてくれたことが余計に嬉しい。
「いえ! 俺が勝手に渡しただけですから……。だって貴方をあれ以上、濡らしていたくなかったんです。雨なんかに……」
そこまで言って翔ははっとなって口を噤んだ。
――雨なんかに……――
この人を奪われそうな気がしたなんてどうして本人を前に言えようか。決して口に出してはいけない。これ以上は悟られてはならない。これ以上、口を開けばこの青年への愛の言葉が滝の如く流れ出るだけだ。
もし自分がこの人に愛の告白をしたらこの人はどんな顔をみせるだろうか。きっと軽蔑の眼差しで自分を見るだろう。そして気持ち悪がられる。男が男を好きになるなんて、絶対におかしいと思うに違いない。そして自分から離れていくだろう。
折角こうして再会出来たのだ。このまま永遠の別離なんて絶対に嫌だ。
翔は首を軽く横に振ると、慎重に言葉を選ぶ。
「でもよかったです、風邪引いてないようで……」
「……え?」
青年が微かに反応する。
「ずっと雨に打たれていたようだから……」
「…………」
急に押し黙る青年。
その青年の雰囲気から言ってはいけないことを言ったのかと焦りを覚える。
「あ……、でも本当にお互いに風邪引かなくてよかったですよ!」
余計に薮蛇だ。翔は気の利いた台詞の一つも言えない自分を悔いた。
(あーっ、俺の馬鹿馬鹿! なんてこう馬鹿なんだーっ!!)
心中、翔は自分で自分を強く恥じ、そして責めるのだった。
青年はずっと黙ったままだ。
その雰囲気に翔もどうしようか戸惑うばかりだ。どうすればこの雰囲気から打開出来るのだろうか。
だが青年は翔の瞳を見据え、消え入りそうな声音で一言だけ述べる。
「それじゃ……、俺行くよ」
その一言に翔は咄嗟に引き止める。
「あっ! 待ってください!」
もう離れるなんて、しかもこれでお別れなんて嫌だ。折角再会したというのに、これで今生の別離なんて絶対に嫌だ。認めたくない。
そんな翔の激情が去っていこうとする青年を引き止めていた。
踵を返そうとしていた青年は、翔の切羽詰った声音に反応して足を止める。
「あの……、名前、名前教えてくれませんか?」
咄嗟に出た言葉がそれだった。何とかして繋ごうと必死だった。
「俺は……神崎 翔っていいます」
そういえば自分も名前を名乗ってなかったことを思い出し、自分から名乗るのが礼儀だと翔は自分の名前を口にした。
いや、それよりも自分の名前を青年の記憶に刻んで欲しい、少しでも自分という人間を片隅にでも残して欲しいという気持ちが働いたからだ。
またも沈黙が流れる。青年は視線を彷徨わせ、次に翔の顔をじっと見詰めるとゆっくりとだがまた口を開く。
「俺の名は…………」
一瞬の沈黙の後、青年の口が再び動く。
「俺の名前は北条拓海……」
小声だが、青年は自分の名前を明かした。
それに翔は感激のあまり瞳を大きく見開き、顔を素直に綻ばせるのだった。
やっと憧れの青年が出てきました(笑)
これでやっとこさBLっぽくなるのではないかと……。
一応、この小説は純愛を意識してます。
男同士の純愛ってどうよ? もしくはそんなのBLじゃないでしょ! と感じる方は、この小説は不快感を抱くだけかもしれません;;
話すと色々と長くなるので省きますが、この小説は長年温めていた作品です。少しでも気に入ってくれる、もしくは同感してくれるとありがたいです。