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本編の更新です。…石を投げないでいただけると嬉しいです。
女の聖地 1
 考えごとをするとき、顎に指をあてるのが彼の癖だ。唇を噛みしめているのか、軽く歯ぎしりしているのか、僅かに顎が動くのが見える。
 小さく息を吐いた後、顎の下に親指の腹を当てていた手は、翻って顎の先を包む。手袋を外した指先は、爪が短く整えられていて、きれいな手だとエミリーは思った。
 もう一度、彼が溜め息を吐く。
「あのさ」
 シーマスがいきなり振り向いた。ぼんやりしていたエミリーは、思わずぴくりと体を震わせる。褐色の瞳の奥に苛立ちを見つけた気がして、彼女は肩を竦ませた。
 何か悪いことをしただろうか。それとも。
 緊張していたエミリーの鼓動が、ますます早くなる。
 シーマスと向き合うと、いつも自分が責められているような気がして、ほとんど反射的にエミリーは謝りたくなる。だがそれが、さらに彼を苛立たせていると知って、最近はこらえるようにしていた。
 目を逸らさない方がいいと思いつつ、エミリーはつい視線を床に落としてしまった。シーマスが次の言葉を発するまでの僅かな時間も、目を合わせていられない。
「ぼーっとしてないで、なんか手ぇ考えてよ。オレじゃ、もう手に負えねんだからさ」
「うん……」
 ごめんなさい、と続けそうになるのを辛うじて飲み込んだ。シーマスの言うとおり、ぼんやりしていた自分が悪いが、謝ったところで、彼の気が済むわけではない。
 それよりも、脱出の方法を考えるのが先だ。
 エミリーたちが入ってきた入り口の扉はぴたりと閉ざされて、こちらからは全く開けることができない。
 閉じ込められてしまったのだ。
 
 四方を石壁に囲まれた冷たい部屋は、大人七、八人が立っていられるほどの空間しかない。エミリーとシーマス、二人でいるには狭すぎる。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。何故かよく思い出せなかった。シーマスが先を歩いていて、エミリーが彼に続き、部屋に入った途端、扉が閉じてしまった。
 そうだ。そんな気がする。他の仲間たちは、扉の外の廊下に閉め出されてしまったのだ。
 しばらくシーマスは、扉を叩いて、外にいるはずの仲間たちに呼びかけたり、頑丈そうな木製の扉をこじ開けようとしていたが、びくとも動かなかった。鍵や閂すら見当たらない扉は、壁と同化してしまったかのようだ。
 彼は次に、積み上げられた石に囲まれた無機質な部屋の、壁から床まで、ひと通り調べて回った。扉を開ける装置、秘密の通路、脱出路など隠されていないか。
 しかしそれも徒労に終わった。
 天井だけは確認していないが、小柄なシーマスが手を伸ばしても届かない位置にある。石壁は滑らかで滑りやすく、身軽な彼といえども、足をかけて登るのもままならないようだった。
 魔術師であるエミリーは、念力で物体を浮かせることができるが、人間を浮かべるほどの力はまだ発揮できない。
 彼女も魔術を使って入り口の扉を調べてみたが、どういうわけか、閉ざされた扉に魔術的な力は一切働いていないようだった。機械的なからくりで、閉じてしまったらしい。
 外から仲間たちが開けてくれるかもしれないと期待した。だが二人が閉じ込められてから、かなりの時間が経つ。外でも、開ける方法が見つかっていないのだろう。
 お手上げだ。

 とはいえ、何かしら方法を見つけて脱出しなければ、やがてはこの狭い部屋で飢えと乾きにより、あまりありがたくない末路を迎えることになる。 
 シーマスが打つ手なしといった風ならば、エミリーが別の手を考えるしかない。彼女は魔術を操ることができるのだ。技術を駆使して、どうにか事態を打開しなければ。
 念力を使って、何かに閉ざされている扉を強引にこじ開ける。大地の精霊に呼びかけてみる。方法はあったのだが、何故かエミリーは集中できずにいた。部屋の隅に立ち尽くしている彼女は、扉を忌々しそうに睨みながら、何ごとか考え込んでいるシーマスに気を取られてしまう。
 冒険者としてパーティを組んでいる仲間たちの中で、エミリーは彼が最も苦手だった。
 悪い人間ではない。だが相性が悪いというのか、どうもエミリーの言動が彼を苛つかせることが多いようだ。
 女性には優しく、礼儀正しくあれという概念が薄いらしいシーマスは、動作がやや鈍く、ぼんやりしていることが多いエミリーを遠慮なく怒鳴りつけてくる。優しい両親と叔父に育てられた彼女は、それまでほとんど男性の怒声など耳にしたことがなかった。体を強張らせて萎縮するエミリーを見ると、シーマスは罪悪感を覚えるどころか、ますます不機嫌になるようだった。
 よりによってその彼と、二人きりでこんな狭い部屋に閉じ込められてしまうなんて。
 しかし今のところシーマスは、部屋の隅に佇んでいるエミリーを怒鳴りつけたりはしていない。先ほどの台詞も、彼にしては随分と柔らかい言葉だった気がする。
 ここのところ、エミリーに対するシーマスの態度がやや軟化しているのは、やはりあのことが原因だろうか。
 魔術に集中しなければと思うのに、エミリーの鼓動は緊張のために高まっていく。

 恋人でもなく、異性としての好意すら持っていないシーマスに、エミリーは既に二度抱かれている。
 もののはずみと偶然が重なった結果だが、未婚であり、恋人もいなかった彼女にとっては、不本意ながら彼が初めて知った男性であり、今のところは唯一肌を重ねた男でもある。
 それは屈辱であってもいいはずだった。何故ならエミリーは、パーティーのリーダー、ルークに心を惹かれているからだ。
 しかし、そもそものきっかけはシーマスの欲望であったにもかかわらず、エミリーは何故か彼を嫌悪することができずにいた。
「ねえ」
 再び、いつの間にか床に視線を落として、考え事に没頭していたエミリーに、呆れたような声がかかる。
 顔を上げれば、入り口近くにいたはずのシーマスが、すぐ目の前で、不機嫌に腕組みをしている。
「何ぼーっとしてんの? 状況分かってるか? こっから出られないと、オレもお前も窒息するか乾いて死ぬか、どっちかなんだけど」
 シーマスは男としては小柄だが、それでもエミリーより頭半分は高い。彼女を見下ろす眼光は鋭かった。
「あっ……、今、どうやって出るか考えてるの」
 反射的にそう言ってしまった。嘘をつくことを嫌うエミリーは、途端に後悔した。だが、本当は何を考えていたかなど、彼の前では口が裂けても言えない。 
 それを聞いたシーマスは、唇を歪めた。
「嘘つけ」
 静かだが、冷たい声が響いた。エミリーの言ったことを信じていない。怒っている。一瞬、彼女はそう考えたが、違った。彼は笑っている。

「全然違うこと考えてたんじゃないのか?」
 腕組みを解いたシーマスが一歩近づくと、エミリーの視界は彼の体に遮られて陰る。鼓動がもう一段高まった。
「そんなことない。ずっと、ここから出る方法を……」
 シーマスと目が合わせられず、目の前にある彼の胸の辺りを見つめながら、エミリーは弱々しく首を振った。
「ホントかよ」
 シーマスの右手が伸びてくる。無意識に肩を竦ませたエミリーの頬をかすめると、彼の手は淡い金色の髪の中へと潜り込んだ。
 エミリーの髪が軽く玩ばれ、シーマスの体がさらに近づく。小さなエミリーの体は、彼の影にすっぽりと包まれてしまった。
 どうしたのだろう。
 エミリーの心臓はさらに激しく動き出す。
 シーマスがエミリーを抱いたのは、本当にはずみだ。以降、彼がエミリーの体を求めたり、愛や好意を打ち明けることもなく、二人の間の情交は、無かったかのように振舞っていた。
 エミリーの方も勿論、彼を嫌悪する気持ちは沸かなかったものの、逆に好意を抱くようになったわけでもない。ただ、同じことは繰り返したくなかったので、できるだけ二人きりにならないように気をつけてはいた。
 こんな遺跡の奥で、シーマスと共に閉じ込められてしまう羽目に陥るとは、思ってもみなかった。
 まさかまた、シーマスは何かよからぬことを考えているのだろうか。
 エミリーは、彼から逃げるように、一歩体を引いた。肩が軽く壁にぶつかる。彼女が立っている場所は、既に部屋の隅であった。逃げることもできず、ただ追い詰められたことに気づかされただけだった。
 次の瞬間、エミリーを逃がすまいとするように、シーマスが彼女の小さな頭を引き寄せる。抗う間もなく、シーマスの顔が近づいた。驚きと緊張に目を見開いたままの彼女に、優しく唇が重ねられる。

 乾いた唇が、エミリーの下唇を軽く食む。シーマスの舌がそこを舐めると、唾液が擦れる微かな音が聞こえた。
 陶酔は一瞬で、エミリーはすぐに我に返った。彼の腕と胸をに手をかけて押し退けようとするが、いつの間にかエミリーの背中にもシーマスの左手が回り、逆にしっかりと抱え込まれてしまう。シーマスは屈強な方ではないが、非力なエミリーではとても力で敵わない。
 唇を割って、男の舌が忍び込んできた。生ぬるい、他人の体の一部、粘膜の感触に、エミリーは鳥肌が立つ思いだった。歯を食いしばり、それ以上シーマスの舌を受け入れまいとする。
 シーマスはやや荒い息を吐き、小柄なエミリーの身体を抱き寄せた。服越しに体温が近づく。瞼を閉ざしているシーマスを見て、ふっと体から力が抜けそうになったが、彼女もぎゅっと目を閉じ、食いしばった歯に力を込めた。
 少しの間、エミリーの歯や歯茎を撫でていた舌は、諦めたようにするりと抜けていく。唇が離れるのを感じ、薄目を開けたエミリーは、自分の唇から、唾液がか細い糸となってシーマスの舌まで伸びているのを見た。嫌悪感と共に、腰の奥が得体の知れない衝動に包まれて震えた。
「エミリー、なんかいい方法浮かんだ?」
 顔を離したものの、相変わらず彼女を抱き締めたまま、シーマスは小声で言った。
 突然口づけなどしておいて、何も考えられるわけがない。エミリーは彼の考えていることが分からず、僅かな非難をこめて、男の顔を見上げた。
 やはりシーマスは笑っている。彼女を見下ろす褐色の瞳は、心底楽しそうだった。
「考えてる……。だから、離して」
 顔を赤らめながら首を振り、エミリーはやっとシーマスから逃れようと、体をよじった。しかし彼は腕の力を緩めなかった。
「オレはもう、どうでもいいや」さらに目を細めて、シーマスは囁いた。「できることはやったし、出られないなら出られないで、しょーがねえ」
 そんな、なげやりな。
 エミリーは呆れて眉を顰めたが、彼女の表情に頓着することなく、彼は続けた。
「どうせここから出られないなら、最後に二人でいいことしようよ」
 顔にかあっと血が上る。シーマスは何を言っているのだろうか。
「しっ……シーマス……」声が裏返りながら、エミリーはどうにか答える。「そんなこと言ってる場合じゃないわ。本当にここから出られなかったら、大変よ」
「じゃ、お前が自分でいい方法考えろよ」
 呟いたシーマスの右手が、エミリーの頭の後ろで動く。軽く髪が引っ張られて、何故か体がぞくりとした。その刺激に思わず目を閉じながら、エミリーも小声で言った。
「考えるから……離して」     
「やだよ。オレはオレで好きなことするから、嫌だったら、早く手立てを考えな」
 シーマスの声の、ちりちりするような響きに目も開けられないうちに、再び唇が唇で柔らかく塞がれる。

 舌は入り込んでこず、シーマスの唇は、エミリーの唇から顎の下へと滑った。エミリーは小さく震えながら、顔を僅かに反らせる。そうすることでシーマスは動きやすくなるのだが、彼女にとっては全く無意識の仕草だった。
 彼の顔はエミリーのほっそりした首筋へと移り、その一点に強く吸いついた。
「や……!」
 ちゅうちゅうと音がするほど強く肌を吸われ、くすぐったさと淡い恐怖を感じて、エミリーは首を竦めながら声を上げた。
 首筋を吸われたまま、シーマスの左手が背中から下がり、エミリーの腰のあたりを撫で回す。何かを煽るような、淫靡な動きだった。その手から逃れようとすると、柔らかい体を彼に押しつける格好になってしまう。
 シーマスの手はさらに下へと滑り、エミリーの、丸く形のいい尻に触れた。そこを掌で優しく撫でられる。
「んっ……や……。離して」
 エミリーはもう一度、シーマスの腕に手をかけて彼を押しのけようとした。だが何故か、力が入らない。
 首筋を吸っていた唇がやっと離れ、強く吸われてじんじんと痺れるそこを、優しく舌が撫でた。ぞくぞくする快感が襲ってくる。
 ややくせのある金色の髪を玩んでいたシーマスの右手が、そこから離れたと思うと、エミリーの乳房を包むように触れた。
「シーマス……いや」
 非難するように言い、彼を引き剥がそうとしたが、相変わらず力が入らない。不埒な真似をしているのはシーマスの方なのに、何故かエミリーは彼を睨むこともできなかった。
「嫌だったら、早く脱出方法考えろよ」
 頭上から、シーマスの意地の悪い、小さな笑い声が降ってくる。彼の右手に力が込められ、エミリーの豊かな胸が柔らかく握られた。
「でも……」
 こんなことをされていたら、とても物事なんか考えられない。
 恥ずかしくて、その先の言葉が続けられない。男に乳房を緩やかに揉まれながら、エミリーがただ紅潮して俯いていると、屈んだシーマスに不意に顔を覗きこまれた。至近距離で視線が絡み、心臓がどくんと跳ねる。
 無表情に彼女を見つめていたシーマスは、僅かに微笑んだ。
「エミリー、オレのこと好き?」

 表情が硬直して、何も考えられなかった。
 はっきりしているのは、頷く理由は何もないということだ。だがだからといって、首を振ることはためらわれた。
「そんなわけないよなあ」さらに笑みを深くして、エミリーの答えよりも先にシーマスが続けた。「あんだけきついこと言われてて、オレのことが好きなわけない。だろ?」
 彼の言うとおり、エミリーにも非があるかもしれないが、仕事に出かけるたびに罵倒されていて、シーマスを好きになれという方が無理だ。だが、問われても、やはりすぐには頷けなかった。同じパーティの仲間であるし、嫌っているわけではない。
 しかしシーマスはエミリーの沈黙を勝手に肯定と理解したらしい。
「だったら、オレに触られたって、何も感じないはずだよね」
 胸がさらに強くつかまれ、シーマスの手の中で形を変える。絞られるように突き出された乳房の頂を、彼の中指が器用に撫でた。服の上から、もどかしいような疼きが伝わってくる。
「あ……」
 眉を寄せ、両脚を閉じたエミリーは、思わずかすれた声を上げた。それを耳にしたらしいシーマスが、小さく笑い声を吐く。
「じゃあ、エロい声出してないで、とっとといい手を考えな」
 乳房の重みを確かめるように、彼は右手で柔らかい肉をふるふると弾ませた。羞恥のために真っ赤になったエミリーの額に、唇が触れた。右手の下卑た動きとは正反対の、丁寧な仕草だった。

 自分は頭の回転が早い方ではない。それはエミリーも自覚していた。
 特にこうして予想外の出来事に遭うと、途端に軽い恐慌状態に襲われる。今もどうしていいか分からない。シーマスに抗議するにしても、何と言おうか考えているうちに、彼の動作は増長してくるばかりだ。以前に抱かれた時もそうだった。
 右手で乳房を撫で、揉みしだいて玩んでいたシーマスは、それに飽きたらしく、服の上から乳首を軽くつまんだ。再び強烈な感覚に襲われて、エミリーは歯を食いしばって声をこらえた。鼻の奥から、微かに熱い息が漏れる。
 尻を撫でていたシーマスの左手は、その肉をつかむように何度か握った後、双丘の間にゆっくりと動いていく。
「やめて」
 勇気を振り絞って出した声は、消え入りそうなほど細かった。とても傍若無人な男の手を止める力はない。
 エミリーの乳房と尻を堪能したらしい彼の手は、一度彼女の体から離れると、華奢な少女の体を覆う、くすんだローブの胸元にかかった。そこを留めている紐を手早くほどいていく。このままでは肌まで晒されてしまう。羞恥──それは恐怖ではなかった──にかられたエミリーは、ありったけの度胸を込めて、もう一度声を上げた。
「シーマス、やめて」
 顔を上げて、目の前の男を見上げる。視線がぶつかった。怯みそうになるのを我慢して、エミリーは懸命に瞳に力を込めた。
 シーマスが目をすがめる。怯えが僅かに走り、エミリーの体は硬くなった。
「なんか、いい方法浮かんだ?」
 酷薄にも見える無表情で、淡々とシーマスは訊いた。その手は動きを止めず、エミリーの服の紐をほどき続けている。
「ないけど……」
「じゃ、ダメ。やめねーよ」
 言葉は乱暴だったが、相好を崩して彼は微笑んだ。服の襟元を一気に広げられて、エミリーの白い胸元、そして乳房がむきだしになる。 

 素肌に男の手が触れる。最初に、温かいとエミリーは思った。恥じらいが湧いてきたのはその後だ。
「うわー、吸いつくみたい。お前、体は細いのに、ホントおっぱいだけは大きいね」
 乳房を握るシーマスの言葉が、エミリーの羞恥をさらに燃え上がらせる。顔から火が出そうだと思ったが、内気な彼女は言われるままで、立ち尽くしていた。
 シーマスは体を落として膝立ちになる。その姿勢で彼は首を伸ばして、エミリーの体に実る、形のいい乳房に舌で触れた。彼女は体を引いて逃れようとしたが、シーマスはしっかりと両腕でエミリーを抱え込んでしまった。
 まるで傅くように膝をついたシーマスが、エミリーの乳房に舌を這わせている。エミリーがそれを見下ろしていると、シーマスも軽く顔を上げ、彼女を見た。彼はエミリーの瞳をしっかりと捕えたまま、固くなって尖った、淡い薔薇色の蕾へと舌を滑らせる。
「あっ……やだっ……」
 男の腕から身を引こうとしながらも、エミリーの手はシーマスの肩を掴み、服の布地を握り締めた。
 舌で乳首をなぶられる。唾液にまみれたそこは、愛撫されてますます尖っていく。さっきまで威圧的に見下ろされていたシーマスを、今度は逆に見下ろしているというのに、二人の立場は全く変わっていなかった。
「エミリー、こっち見て」
 むしろシーマスは、さらに居丈高になった気がする。
「オレのこと好きでもないなら、乳首舐められたって、何も感じないはずだろ? ちゃんと自分のカラダ見てろよ」
 低い声で言い放つと、シーマスはさらに淫靡に、舌をちろちろと動かして、エミリーの乳首の先をつついた。唾液が艶かしい音を立てる。
 それを目にして、体の芯が熱くなった。シーマスにいいようにされている。屈辱であるはずなのに、ただ意識がぼうっと蒸発するような気がして、怒りなど沸いてこない。
 思わず目を閉じると、ちゅっと音を立てて、シーマスの唇が乳首に吸いついた。
「ああっ……」
 唇から甘やかな声が漏れてしまう。閉じた脚に力がこもり、その奥がさらに熱くなった。
 乳首に唇がまとわりつき、先端を吸いだされる。時折舌先がそこを撫でた。エミリーの肉体は敏感になり、体を走る快楽は、熱さと勢いを増した。

 左の乳房に吸いついていたシーマスが、右の胸に顔を移す。
 同時に彼の右手はエミリーの背中から離れ、彼女の膝に触れた。裾の長いローブをそっと捲くり、その中へと入り込む。
「シーマス……」
 咎める声は揺れていて頼りない。まるで哀願だった。右側の乳房に舌を這わせていたシーマスが、顔を上げてこちらを見る。
「何? なんかいい方法、浮かんだ?」
 眼差しは驚くほど優しい。彼は稀に──それはほとんど、エミリーとシーマスが絡み合っている時であったが──、普段の顔とはかけ離れた、慈愛に満ちた表情を見せる。それはエミリーの胸の奥を小さく突いた。
 唇を震わせたまま、言葉も出せずにいると、シーマスの右手は、服の下で膝から腿へと彼女の肌を撫で上げる。脚の産毛を逆なでされて、エミリーは全身をおののかせた。背骨の奥がぞくぞくとする。
「ほらほら、早く考えないと、大変なことになるぞ。オレは別にいーけど」
 一転して底意地の悪い表情に戻ると、シーマスは再び舌でもって、エミリーの乳房とその中心をいたぶり始める。
「はっ……あ……」
 ざらざらした舌で舐め上げられて、右の乳首もあっという間に固くなる。その感覚は狂おしいほどで、エミリーは突き放さなければならない男の肩を、もう一度握り締めた。
 太ももを撫で上げたシーマスの手は、すべすべとした肌を滑り、内腿へと入り込もうとする。エミリーは立ったまま脚を閉じて、彼の手を拒んだ。
「エミリー、ちょっと脚開きな」
「いやっ」
 乳房を晒していたとしても、そこだけは駄目だ。エミリーは激しく首を振り、シーマスの言葉を拒絶した。涙目になるエミリーを見上げて、シーマスは笑った。
「お前、ちょっと脚に汗かいてるんじゃないの? 脚開いて風通しよくしないと蒸れるぞ」
 顔を赤らめたまま、答えることもできずに、ただエミリーはもう一度かぶりを振った。
「確かめてやろうか」
 言うが早いか、シーマスの手は、エミリーの両膝の間に強引に滑り込むと、少女の柔らかく肉づきのいい内ももの間を無理やり這い上がった。
「いや……やっ」
 彼の手を避けようとして、エミリーは腰をくねらせる。
「やらしい動きすんな」
 シーマスに冷たく笑われ、彼女はうろたえて動くこともできなくなってしまった。その間に男の手は、エミリーの脚の間に到達する。
 下着の上から、秘部にシーマスの指先が触れた。
「やめて」
 もう彼の顔を見ていられない。目を閉じ、精一杯脚を閉じようとしながら、エミリーは囁いた。
「んん~。なんか湿ってるみたいだな」
 無論、シーマスがそれに構うはずもない。荒ぶる男の吐息がエミリーの乳房を撫で、彼はますます指先を脚の間の奥へと押しつけてくる。裂け目にそって下着の上からそこを何度か撫でられた。エミリー自身、その部分がぬるぬるとぬめり、下着を滑らせているのが分かる。
「いや……」
 拒絶の声を上げながらも、少女の吐息も徐々に荒くなってきた。またもシーマスは頓着せず、指先で器用にエミリーの下着を押しのけ、隙間からさらに奥へと指を侵入させてくる。ぬかるんだ場所が、男の中指を出迎えた。
「やっぱり体の中もびっしょりだな。いやんなるのはこっちだぜ。こんな時に」
 蔑むように吐き捨てられ、エミリーの体の芯は燃え上がるような熱を持った。潤んだ瞳から、羞恥のあまりに涙が薄く流れた。
 シーマスの指先は、エミリーの体の入り口を、なぶるように何度か撫で回す。絡んだ愛液が淫らな音を立てた。
「ほら、ちゃんと脱出方法考えろ。指入れちゃうぞ」
「待って。やっ……」
 エミリーが甲高い声を上げる間もなく、長い指がエミリーの体の中へと忍び込んでくる。
「あうぅ、あ……」
 柔らかく濡れた肉の襞を押し広げて入ってきたのは、強烈な刺激、生々しい快楽だった。エミリーはたまらずに深い呻きを漏らす。
 眉を寄せて快楽に顔を歪める少女を見上げ、シーマスは指を上下に動かし始めた。
「ああっ……! はっ……いやっ」
 体の芯に熱い塊が突き刺さる。エミリーは斜め下にあるシーマスの肩を両手で抱き、首を振って切ない声を上げた。
「いやってことないだろ。こんなにスゲー音たてて」
 シーマスが指を出し入れするたびに、エミリーの秘所からはくちゃくちゃという湿った音が撒き散らされる。恥ずかしくてたまらなかった。 
「いや……違うの」
「違わねって。お前、ちょっと淫乱だよ。こんなとこでこんなに濡らすなんて、そんなに男が欲しい?」
「違う……」
 シーマスに意地の悪いことを言われ、ぎゅっと目を閉じると、再び涙が一筋、瞼の端から流れた。
「この前、薬にやられた時も、すごいスケベっぷりだったよね。意外とあれが本性なんじゃねーの?」
 ふた月近く前、別の古代遺跡から持ち帰った媚薬に、誤ってエミリーが冒されてしまった時のことだ。自分で自分を慰めていたエミリーの元に、何の因果かシーマスが現れた。普段なら考えられないことだが、彼女はシーマスの手、そして肉体を懇願し、結局二人は抱き合ってしまった。
 無論今は、正常だ。そのはずだ。
 だが体中が、正体不明の疼きに苛まれ、高揚して、何かを欲して求めている。

 それが何なのか、エミリーが認められないでいるうちに、シーマスはエミリーの膣から指を引き抜き、立ち上がった。
「座って」
 エミリーの肩の両手をかけ、部屋の隅に追い詰められて、ずっと立ったまま快楽に耐えていた少女を座らせる。抗う気力もなく、エミリーは素直に床に尻を落とした。
 続いて同じように床に屈んだシーマスは、彼女の両脚に手をかけると、大きく膝を開かせようとする。
「やめて」
 弱々しい声は、全く無視された。あまり力が入らないエミリーの脚は、男に容易に広げられてしまう。
「すげー。びしょ濡れで、下着が透けてる……」
 エミリーの秘部を覗き込んだ彼は、無邪気に響く声を上げながら、その部分に手を伸ばした。湿って疼きを帯びる部分全体を、シーマスの掌が包むように触れる。
「これ、脱いだ方がいいかな。べちょべちょになるぞ」
「だめ。やめて……」
 独り言のように呟くと、エミリーの声には耳も貸さず、シーマスは紐をほどいて、エミリーの下着を手早く取り払った。彼女の最も大切な部分が、シーマスの目の前にさらされる。
 彼は遠慮なく、しげしげとそこを見つめた。恥ずかしさにエミリーは喘ぎ、内腿が微かに震える。
「きれいで可愛いよ」
 やがてシーマスは、微笑みながらそう呟くと、彼女の裂け目の端にある、陰毛の中に隠された小さな肉の塊へと指を伸ばした。
 立ち上がることもできないエミリーは、床に両手をついて逃げようとしたが、背中が固い壁にぶつかる。
「おとなしくしてな」
 もがくエミリーを嘲笑うように言うと、男の指先は陰裂へと忍び込み、その奥にある蕾に触れた。痺れのような強い刺激が、エミリーの体の奥を突いた。
 シーマスは反対の手で陰裂を押し広げると、肉芽に優しく触れる。何度かつつかれた後、突然ぐいっと指先が押し込まれた。再び強烈な快感が流れる。
「やっ……あ!」
 喉を反らせて、エミリーは鋭く小さな叫びを上げた。
「この前、ここ触ってて、お前いっちゃったんだよね」
 言いながらシーマスは、陰核に押し当てた指を小刻みに震わせる。規則的に、快楽が押しあがり、エミリーの体の芯を責め立てた。
「ちがっ……あっ……! ああああっ!」
 彼女の声は高くなり、悲鳴じみた響きを帯びてきた。
「気持ちいい?」
 快楽の蕾を責めながら、シーマスが囁く。是とも否とも答えられず、エミリーは切ない喘ぎを上げ続けた。
「ああんっ……! うっ……はああっ……」
「なんだよ、あんまりよくない?」
 エミリーの声は愉楽に満ちていたが、はっきりと返事をしなかったためか、シーマスは冷たく呟いて、そこから指を離した。
 まって。
 そう叫んで彼の手を押し留めたいという衝動を、エミリーはどうにかこらえた。あまりにもはしたない。
「意外にワガママだな、お前。ちょっとお仕置きしてやらないとね」
 エミリーの前で膝立ちになったシーマスは、ベルトを外すと、ズボンの留め具も外し始めた。彼の脚の間は、服の下から何かに押し上げられて膨らんでいる。
 さらに顔を紅潮させるエミリーの前で、シーマスはズボンと下着をずり下げ、躊躇もなく屹立したものを晒した。赤く充血した、醜悪な肉の楔が、エミリーの目に飛び込んでくる。

 シーマスはそのまま、エミリーに覆いかぶさるようにして、華奢な彼女の体を床へと横たえた。脚の間には既に男の膝が割り込み、もう脚を閉じることもできない。
 本当に彼と異なる性の部分を繋げるのが嫌なのか。エミリーにははっきりと分からなかった。成熟した女の場所は、濡れそぼって何かを求めている。それはシーマスではないかもしれないが、だからといって彼が決して受け入れがたいということでもなかった。
「エミリー」
 彼女の名前を囁くと、シーマスは微笑んで、軽やかな口づけを落とした。その優しい一連の動作は、エミリーの最後の疑問と慎みを拭い去る。
 シーマスの体が近づく。彼の恥毛が内ももを撫で、脚の間に触れた。
(また痛いかもしれない……)
 性交を繰り返すうち、やがて痛みはなくなると、プリシラが話していたことがあった。だがエミリーが男を受け入れるのは、生まれてからまだ三度目だ。初めての破瓜の痛みを思い出し、彼女の胸に微かな躊躇が生まれた。
 しかしそれは、ごく淡く控えめなもので、劣情に紅潮するシーマスを説き伏せるような理性を、エミリーの頭に呼び起こす力などなかった。自分の体に興奮するシーマスを見て、エミリーもまた鼓動が高鳴る思いだったのだ。
「エミリー、大丈夫。痛くないよ」
 まるで胸中を読んだように、シーマスがエミリーを見つめて囁く。最も共感を覚えない、心のすれ違いの多い彼からそんなことを言われるのは、非常に不思議な気分だった。
 愛液にまみれた彼女の脚の間を探っていたシーマスの性器は、やがてゆっくりと、濡れた音と共にエミリーの体の中へと入り込んできた。

 熱い。膣にねじこまれた彼自身は、炎のように熱かった。
「んうううっ……!」
 しかしエミリーの喉からほとばしる呻きは、苦痛ではなく快楽に彩られている。視界が色を失うような、そんな恐ろしいほどの悦楽だった。こんな気持ちいい思いをしたのは初めてだ。
「ねー。気持ちいいだろ?」
 閉じた瞼の向こうから、シーマスの低い声が聞こえる。慎みも忘れて、エミリーは何度も頷いてしまった。
「ほらな。やっぱりお前、淫乱なんだよ」
「ち……ちが……」
 体の奥から燃え盛るように広がる快楽のために、エミリーは満足に喋ることもできない。苦しげに喘いでいると、シーマスの手が汗ばんだ額を撫でた。
「でも、可愛いけどね」
 エミリーはうっすらと目を開けた。彼女を貫いている男が、穏やかに微笑んでいる。愛しい生き物でも愛でるような、温かい視線だった。
 次の瞬間、シーマスは僅かに眉を寄せ、体を動かし始めた。
「あっ……はっ……ああっ」
 一体となって、エミリーの肢体も揺さぶられる。重たげな乳房が、ゆらゆらと揺れた。
「あ……きもちいー。エミリーの中」
 シーマスの顔が快楽に歪んだ。彼の吐いた息が、エミリーの髪を僅かになびかせる。なんて淫らなことを言われているのだろうと思ったが、彼女の体の芯は尚も熱を帯びた。
「シーマス」
 エミリーも、自分が喜ばせている男が愛しく思えて、甘い声を上げて彼の背中を抱き締める。体の奥深くに、シーマスの男性の部分が何度も激しくぶつかる。それはエミリーの存在そのものを責めたてて、揺さぶっているようだった。
 二人はしばらく、喘ぎながらひとつになって、体を揺すり、共に愉悦の階段を上りつめていった。汗が吹き出し、肌が湿る。少女の下肢に、男の腰が打ちつけられ、皮膚が弾ける音、愛液が擦れる音が、狭い小部屋に満ちた。
 どのくらい快楽を貪っていただろう。やがてシーマスの動きは早く、激しくなる。
「く……あ……」
 彼は苦しげにも聞こえる息を吐くと、乱暴なほどの動きで、エミリーの内部を突いた。それは少しも痛くはなく、ただ恍惚とした悦びだけを、体の芯に響かせる。
「あああっ……! シーマス」
 耐え切れず、理性もぐにゃぐにゃになったエミリーが、嬌声と共に男の名を呼ぶと、彼も切なげに答えた。
「エミリー……ごめん。いつも、こんなことして」
 彼女は首を振った。望んでいる行為ではないが、しかし彼にここでやめて欲しいとも思っていない。
「エミリー」
 聞いたこともない、情熱的な響きがエミリーの耳を打ち、少女の小柄な体は、シーマスに力いっぱい抱き締められた。
「ごめん……でも、好きなんだ」
 彼女は耳を疑った。その瞬間、彼が大きく息を吐き、エミリーの体の中に、熱いものが放たれる。何ごとか分からないことを叫ぶエミリーの意識も、快楽によじれて、白んでいった。   



 どのくらい意識を失っていたのだろう。瞼の裏が明るくなった。光が満ちているのが分かる。
「エミリー」
 名前を呼ばれる。目を開けるのすら億劫だった。
「エミリー、起きて」
 甲高い女の声。
(──えっ!?)
 エミリーはぎょっとして目を開き、上体を起こした。
 そこは薄暗い、石壁に囲まれた小部屋などではない。朝の日差しが燦々と降り注ぐ、疎らな林の中だった。木々の土が放つ、緑の香りがたちまち鼻腔に入り込んでくる。
 そしてエミリーの目の前で微笑んでいるのは、シーマスではない。魔術師ギルドの友人である、シャムリーナだ。
 目が合うと、シャムリーナはもう一度温かく笑って、口を開いた。
「すごくよく寝てたね。急ぐ旅じゃないけど、そろそろ出発しないとね」
 彼女は立ち上がり、向こう側へと歩いていく。その先には、昨夜の焚き火の跡があり、側にプリシラが座り込んで、パンを切り分けているのが見えた。
 そうだ。昨夜、この街道沿いの野営地で眠ったのだ。勿論、彼女は寝る前と同じく、きちんと服を着ていた。
 夢だった。
 そう気づいた途端、エミリーは恥ずかしさから足を小さくばたつかせた。できれば木の幹に顔を打ちつけたい。さぞかし目が覚めるだろう。なんていう夢を見たのだ。
 よりにもよって、シーマスとどこかの小部屋に閉じ込められ、そこで脱出するどころか、彼と肌を重ねてしまうなんて。
(そんな関係じゃないのに)
 そう。エミリーは盗賊のシーマスと、二度、実際に肌を合わせている。だが、様々な事情が重なった結果のことである。他のパーティーの仲間たちは知らない。二人は距離を置きながら、そのことには触れないようにしていたし、無論のこと、その後は肌を触れ合わせていない。           
 なのに、あんな夢を見るなんて、囁きや吐息、汗の匂いまで感じたかのような、生々しい夢だった。
 自己嫌悪に陥ると共に、シーマスに申し訳ない気持ちが湧いてくる。勝手に彼をあんな夢に出してしまうとは、いくらなんでも失礼だ。
 歩き去るシャムリーナの後ろ姿を見ながら、エミリーは彼女たちに背を向けて、こっそりローブの下に手を差し入れて、脚の間に触れてみた。下着が愛液でしっとりと湿っている。
 夢の中でシーマスに言われた、いくつもの台詞を思い出し、エミリーは顔を赤らめた。


 やや気分を落ち着けたエミリーが、焚き火の跡へと歩いてくると、プリシラが笑顔で迎えた。
「おはよ、エミリー。よく眠れた?」
「うん。寝坊しちゃって、ごめんなさい」
 太陽はかなり高い位置まで上っている。朝の爽やかさは洗われ始めて、空気は初夏の昼間の暑さを含んでいた。
 しかしプリシラは上機嫌で首を振る。
「いーの、いーの。あたしもシャミーも今起きたとこだし、急いでるわけじゃないからね。のんびり出たって、今日の夕方には着くでしょ。気候もいいし、たまには朝寝を楽しむのもいいわねえ」
 夏用の薄手の外套の上に、プリシラが切り分けたチーズとパンを並べ、シャムリーナが拾ってきたという、小さな木の実をいくつか置く。それで三人の娘の朝食だった。
「あー、それに何よりさー」
 水筒に入れてきた果実酒を含んだプリシラは、大きく腕を広げて体を反らせた。
「汗臭くて、こうるさい男どもがいないと、のびのびできるなあ~」
 エミリーからしてみれば、男性陣が一緒の時でも、プリシラはのびのびしているように見えるが、やはりどこかで気を使っているのだろう。彼女がこれほど寛いで上機嫌な様子は、久しぶりに見たかもしれない。
 エミリーも同感であった。ルークたちは大切な仲間であり、信頼できる男たちであるが、やはり異性には違いない。着替えやその他を始めとして、色々と気は使う。
 通常であれば、男女混合のパーティーでは、女性の方が神経質になりがちだ。しかしエミリーたちの場合は、男性陣の方が物事に細かい。例えばこんな朝寝坊をすれば、リーダーのルークは渋い顔をするだろうし、エミリーはまたシーマスに嫌味のひとつも言われることだろう。
 もっとも、気楽である一番の理由は、今回の旅が仕事ではないからだ。
「シャミーもさ、普段男ばっかの中に女一人で大変じゃない?」
 もう一口、酒を啜りながらプリシラが訊くと、エミリーの友人であり、同業の冒険者でもあるシャムリーナは、笑顔で頷いた。
「うん、そう。生理の時とか、めちゃくちゃ気を使うよ。エミリーたちは女二人でいいなー」
 可憐な見た目によらず、王都の下町育ちのシャムリーナは、大らかな性格だ。同じく大ざっぱなプリシラと、割合早くに打ち解け始めている。
「ああ、やっぱそーだよね。あたしもエミリーが入るまでは、女一人だったからさ。お腹痛い時とか、しんどいよね。男たちに生理だってばれたくないんだけど、オマエらもっと気ぃ使えよとか思う時もあってー」
「そうそう」
 二人の女同士の会話を、無口なエミリーはぼんやり聞いていた。だがともすると、思考は今朝方の夢へと戻っていきそうになる。彼女は努めて、プリシラたちの話に耳を傾けようとした。
 木の葉の隙間から降り注ぐ初夏の日差しの中、女たちの甲高い話し声と、生命を謳歌する鳥の囀りが響き渡っていた。

毎週更新を目指して頑張ります。地下都市篇ぐらいの長さの予定です。
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