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久々の更新ですが、今回はエロなしです。
第七話「風の悪夢」
 風が吹いていた。
 穏やかに
 優しく
 何かを包み込むように
「……」
 誰かが泣いている。
 顔はよく見えないが女性のようだ。
「なぜ……なぜ何時もこうなる……私はただ……」
「フィーネ?」
 女性の正体が何故かわかり俺は名前を呼んでみる。
 だが、彼女から返事はない。
「私はただーー強くあり、あのお方を御守りしたいと……!」
 フィーネは地面に何度も拳を叩きつける。
「何故だ……何故私にこんな血が流れている……」
 綺麗だった手は擦り切れ血に滲み見る影もない。
「フレイを……カズキ殿を……傷つける血なんて……いらないのに……!」
 そうか。
 これはフィーネの夢なのだ。
 この夢での俺は傍観者に過ぎず、彼女に触れる事も声を聞かせる事もできない。
 慰める事も目を背ける事も出来ず彼女をただ見守りつづける事しかできないのだ。
 夢だとしても無力な自分にだんだんと腹が立って来た。
 ムカムカする。
「私は許され……ない……」
 他人の涙を見つづけるという事はとても胸くそが悪い。
 だから、こういう奴は放っておけない。
 助けるとかそんな立派な話ではなく。
 ただ見ているだけとか見なかった事にするとか胸くそ悪いからだ。
 俺は弱いからーー胸くそ悪い事とかには耐えられない。
 だから
「おい」
「!」
 フィーネが俺を見て驚く。
 傍観者でしかない筈の俺が声をかけた事か
 それとも俺が無遠慮にフィーネの夢へずかずかと踏み込んで来た事か
 ま、どうでもいいさ
「カズキ……殿」
「おう」
 面食らったかのように俺を呆然と見つめてくるフィーネ。
 どうする?
 どう声をかけるか、何も考えていなかった。
 考えも無しに行動するとこうなる。
「その何だ……」
 考えも無いのに口が回る訳がない。
「カズキ殿ーーどうやって此方に……?」
「普通に寝てただけだがーー」
「そんな……そんなの有り得ない……」「あり得たんだから仕方ないだろう」
 随分とリアルな夢だな。
「此処は闇騎士殿が管理する夢の中ーー闇騎士殿の許可無しでは出入りする事はできない……そうか」
 フィーネは弱々しく溜め息をつく。
「あなたは闇騎士殿がお作りになられた幻影ーー何とも趣味が悪い」
「こら。誰が幻影だ」
「ふふーー当然か。私は罪深い」
 勝手に話を進めてやがる。
 だんだんと腹が立って来た。
「好きにするが良いーー」
「いい加減にしろ!」
 ドカッ!
 フィーネの頭に拳骨をお見舞いする。
「!」
 頭を抑えながらきょとんとするフィーネ。
「まさかーー本物の……?」
「ああ。偽物じゃない」
「あの……」
「ん?」
「お怪我はーー?」
 自分の姿を見る。
 本当にリアルな夢だ。
 包帯の巻かれている位置も完璧だ。
「ああ。大したことは無いそうだ」
「そうーーですか……」
 少し安心したのか一息をつくフィーネ。
「闇騎士ってのは何だ?」
「闇騎士殿の役割は六護騎士を裁く者ーー私はカズキ殿とフレイを傷つけた罪でこの夢に」
「……って事はただの夢じゃないという事か」
 はいっと頷くフィーネ。
 その闇騎士ってのはどんな奴なんだ?
 漆黒の鎧を着ているのだろう。
 巨大な鎌を方に担いでいるのだろう。
 馬に跨ってるのだろう。
 目はギランと怪しい光を放っているのだろう。
 語尾に也とかつけるのだろう。
 ……誰だよ
「風騎士フィーネ」
「!」
 少女の声が何処からともなく響く。
「刃を向けただけではなく、救世主様に傷まで負わせた罪ーーどれだけ重いかわかっていますか?」
「闇騎士殿ーー私は」
「待てよ」
「!」
 先手必勝。
「俺は怪我こそしたけど大したことないぞ?」
「救世主様ーー何故此方に……?」
 話がかみ合っていない気もするが、話を続ける。
「そっちにも事情とか立場ってものがあるんだろうがーーフィーネも反省してるしだな」
「なるほどーー」
 本当にかみ合ってねえな。
「許してやっても」
「私の夢に干渉するとはーー流石は救世主様」
「人の話聞いているか?」
 人の事をお構いなしに話すのが流行ってでもいるのだろうか。
「フィーネさんの件ですねーー」
「ああ」
 漸く話がかみ合う。
「救世主様の頼みと言えーー出来かねます」
「どうしてだ?」
「私は闇騎士ーー他の六護騎士を裁く立場に居ます。どんな形であれ、罪を犯した者には罰を与えなくてはなりません」
 俺は間を空けてからどんな罰か尋ねてみる。
「……どんな罰だ?」
「普通なら風騎士の名をお返しして頂きたいところですが、フィーネさんに代わる人材はありません」
 なら尚更ーー
「だからこうして、夢の中に身柄を拘束させて頂いているのですーー本人はお辛いでしょうが」
「なんかヤバそうだがーー」
「そうでなければ罰になりませんーーフィーネさんが見るのは悪夢」
「悪夢?」
「人は無意識に自分自身の性格、行動を嫌うものーー特にフィーネさんは自己嫌悪が強かったので」
「自己嫌悪ーーか」
 他人事とは思えないな。
「ですから、フィーネさんにはその自分自身を見つめて貰っています」
「……」
 えげつない事をする。
 要するに嫌いな自分を延々と見せられるということだろ?
「罰ですから」
「……」
 可愛い声をしているが、容赦のない性格らしい。
 出来ればお近づきになりたくない。
「ですが、困りましたね」
「何がだ?」
「救世主様がフィーネさんに接触したのが原因で台無しになりました」
「……」
 言葉とは裏腹にトゲが感じられない。
「という訳でわたくしとお話しませんか?」
「どういう訳だ?」
「フィーネさんにはお気の毒ですが、このままという訳にはいかないので」
「つまり、その罰とやらに干渉した責任を取れと?」
「ええーー私の居場所は隣で眠っているフレイさんにでも聞いてください」
「!」
 何故それを……
 うろたえている俺にその声はくすっと笑い
「救世主様は嘘がつけない性格みたいですね」
「正直者と言ってくれ」
 俺の視界が歪んでいく。
 恐らく、目覚めの時が来ているのだろう。
「では……後ほど」
 優しい光が俺を包み込む。
「……フィーネ」
「……」
 光で何も見えていないが俺はフィーネに声をかける。
「待ってろよ」
 俺の意識はそこで途絶えた。
 窓から差し込む太陽の日差しが無遠慮に顔を照らす。
 どれだけの時間が経ったのか
 俺は目を開け天井を見つめていた。
 二度寝をする気にはなれない。
 隣で幸せそうに寝息をたてているフレイを見る。
 騎士ってのは早朝に訓練とかするもんじゃないのか?
「ん……」
 どうやら起こしてしまったらしい。
 フレイの閉じていた瞼が開かれる。
「おはよう……」
「ああ」
「……何でボクが……カズキの部屋にいるの……?」
 どうやら寝ぼけているようだ。
「ボク……裸?」
 自分が何も着ていない事に気づき、寝ぼけていたフレイも昨日の事を思い出したようだ。
「……!」
 恥ずかしそうに胸と股間を手で隠すフレイ。
「そうか……ボクたちしちゃったんだね」
「ああーー後悔しているのか?」
「ううんーー」
 本当に後悔の欠片も感じられない笑顔でフレイが抱きついてくる。
 吐息がかかるぐらいにフレイは体を密着させて来た。
 悲しい男の性というやつだ。
「……あ」
 フレイもそれに気がつき顔を赤くする。
「……ば、バカ」
 フレイはそう言いながらも俺のある一部分から視線を外そうとしない。
「朝から……元気だね」
 何処と話をしているんだこの娘は
 っと、フレイに聞いておく事があるんだったな。
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「ん?」
 フレイは小首を傾げる。
「闇騎士って奴の居場所を知らないか?」
「!」
 お、フレイが明らかに動揺している。
「アイツに何の用なのさ」
 フレイは不機嫌さを隠そうともせず俺を睨んでくる。
「いや。フィーネの件でーー」
 って、これを話していいのか?
「なんでキミがフィーネにアイツが絡んでるのを知ってるの?」
 不機嫌そうだったフレイが今度は不思議そうにし、訊いてくる。
「……夢を見てな」
「……!」
 フレイの表情が今度は驚きに
 コロコロと表情が変わるる奴だな
「アイツの夢に干渉するなんてーー流石というか、滅茶苦茶というか」
「……」
 そこまで言われる事をした覚えはないが
「教えて欲しい?」
 そう言いながらフレイは唇に人差し指を当て小首を傾げた。
「いや。ルカに訊くから良い……」
「!」
 フレイの表情が明らかに変わった。
 ルカと対抗しているような節がある。
 もしかしたらこれでーーなんてな
「ぼ、ボクが教えてあげるからそんな必要ない!」
 単純な奴である。
「ルカなんかに相談したら何を要求されるかわかったもんじゃないからね」
「……」
 何かそう言われるとあの素直な笑顔の内にどす黒い何かを秘めているような気が……
「くしゅんっ! ……風邪でしょうか?」
 ってな感じでくしゃみでもしてそうだな。
(ルカ……すまん)
 気のせいだろうが寒気がしたので謝っておく。
 あの素直な笑顔が偽物ではない事を祈ろう。
「闇騎士の居場所は何処だ?」
「アイツはーー」
 この時、俺は何とかなるだろうと軽い覚悟だった。
 いや。
 願望なのかも知れない。
 俺はこれ以上苦労をしたくないだけなのかも
 我ながら大変に愚かだと思う。
 簡単に行く話や苦労しなくても良い出来事など
「……」 他の奴には回って来たとしても、俺に回って来る事など無いのだ。
ルカ「……私の影が薄いような」



次回はとうとう闇騎士と接触!