警告
この作品は<R-18>です。
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第二話「三人の騎士」
どれぐらい眠っていたのか。
夜なのか窓の外は暗い。
目の前にはルカの寝顔。
「ーー」
柔らかそうな唇から零れる甘い吐息。
OK
自分が何をやらかしたかもちゃんと覚えている。
どうして俺は勇気を持って断れなかったのかーー情けなさ過ぎる。
「……」
向こうが誘って来たとかは関係ない。
その誘いに乗ってしまったのは俺なんだ。
待て。
彼女は何か言ってなかったか?
彼女の言葉を思い出し、俺なりにまとめてみる。
俺は体内に魔力を無限に溜めていく能力がある。
だが、その魔力を受け止める器は別だ。
器自身は溢れて来る魔力を無限に受け止め続ける事はできない。
どんな大きいコップでも水を与え続けていれば、いつかは溢れてしまう。
先ほど俺に起こった現象の原因はそれらだろう。
結論。
なんだそりゃ?
魔力?
そんなファンタジー紛いの能力が俺にあるとは思えないね。
それより俺には知らないといけない事がある。
ここが何処で
どうして、俺がここに居るのか
悪いが、凡人の俺には見当もつかない。
「ん……」
ルカが寝返りを打ち俺に背を向ける。
ここにいるべきか
立ち去るべきか
ルカの事が信頼できない訳ではない。
最も、信頼もしていないが
少なくとも
彼女の言葉には嘘がないーーと、思う。
「……」
迷惑だよな。
普通に考えてみれば
そうと決まれば、俺はベットから抜け出しーー
ーーぎゅっ
「おいおい」
裸のルカに抱きつかれており身動きが取れない。
俺を抱き枕か何かと勘違いしていないか?
更に彼女の甘い吐息が俺の鼻をくすぐってくる。
「どうするよ?」
下手に離れようとすればルカを起こしてしまう。
そうなれば出ていくことなど出来そうに無い。
それより問題なのは俺の理性だ。
全裸の美少女に抱きつかれ、甘い息を吹きかけられている。
健康な体を持つ男には酷な状態だ。
「ーー仕方ない」
寝よう。
どうにもならないなら夢の中に逃げてしまえ。
そのままぐっすりと。
(眠れるかぁっ!)
これは何の拷問だ?
眠れる奴が居たら、俺は尊敬してやる。
(……)
駄目だ。
馬鹿な事を考えても紛らわす事ができない。
負けるな俺。
理性を奮い立たせてでも耐えるんだ。
ーーこうして長い夜は明け。
俺は自分自身との戦いに勝利したのだった。
「よく眠れましたか?」
何処かに出かけるのか、ルカは家の中をあっちこっちと移動しながら訊ねてくる。
(お前のせいで眠れなかったとは……)
なんとなくだが、口が裂けても言えない。
「いいや。少し、考えることがあったんだ」
「そうですか……カズキ様」
「何だ?」
「恐らくですが、カズキ様は自身の事が理解出来ていないと思われます」
当たり前だ。
俺の頭でもわかるように説明を願いたいところだ。
「ですから、その説明をさせて頂こうと思いまして」
それは願っても無いことだ。分自身の事がわかるなら、それに越した事はないからな
「ああ。是非、頼む」
「では、出掛けましょう」
「出掛けるのか?」
ルカは頷き
「私の口からお教えできるのは限られますから」
「……?」
「この国をお治めになられている女王陛下とお会いになられて下さい」
「女王陛下って……なんか凄い事になって来たなーーもう。会うしかないだろう」
「ご理解頂きありがとうございます」
その時。
ーーコンコン
ドアが控えめにノックされる。
「どうぞ」
ルカが応えるとドアが開かれ、鎧を着た女性が家に入って来た。
女性はルカに向かって右拳を胸に当てる。
敬礼のようなものだろうか。
「ルカ様。馬車の準備完了しました」
「ご苦労様。このお方が救世主様です」
よくわからないが入って来た女性よりルカの方が立場は上らしい。
「救世主様。お迎えに上がりました」
女性は床に膝をつき、胸に右拳をあてる。
「あ、どうも……お疲れ様」
「……!」
目を見開くように驚く女性。
怒らせたか?
「勿体無きお言葉ーー!」
何だってんだ一体。
「参りましょう。救世主様」
「あ、ああ」
俺はルカに連れられ、家から出る。
すると、大きな木の箱が目に飛び込んで来た。
よく見ると車輪がついており、数頭の馬がその箱につながられている。
馬車という奴か。
「水の騎士ルカ。任務ご苦労」
長身で長い黄緑色の髪を持つ女性が馬車の陰から現れと胸に左拳を当てる。
「いいえ」
ルカもその女性に向かって胸に右拳を当てる。
(任務?)
どういうことだ?
「ルカ。こちらのお方が?」
「はいーーお名前はカズキ様と」
黄緑色の長い髪をした女性は俺に向かって、深くお辞儀をし胸に左拳を当てる。
「風の騎士フィーネと申します。フィーネっとお呼び下さい」
フィーネと名乗った女性はそのまま優しく微笑する。
ルカもフィーネの隣に立ち同じようにお辞儀をし胸に右拳を当て
「改めてーー水の騎士ルカです」
ーー意味がわからん。
要するにこの二人が騎士という位なのはわかったが。
「クスッーー」
「?」
「まだ我々のこともご存じではないようですねーールカからは訊いていないのですか?」
フィーネは横目でルカをチラリと見る。
「すみませんーーカズ……救世主様」
「いやーー話す暇がなかったからだろ?」
そんなに申し訳のない顔されては責める事もできん。
「馬車の中で簡単な説明を兼ねて、お話しをしましょう」
今気づいたが、俺たちの周りには何人もの兵士らしき人物が居た。
全てが女性のようだったが……
まあ、後でそれとなく聞くか。
俺はルカやフィーネ。
女兵士たちに見守られる中。
馬車へと乗り込むのだった。
それから数分後。
ルカとフィーネが乗り込むと馬車は走り出した。
「救世主殿は何処からお聞きしたいのですか?」
フィーネは何処か楽しげに質問を求めて来た。
「……アンタたちは何もんだ?」
「我々はユミール王国に仕える者です」
フィーネは顔に優しげな微笑を浮かべたまま答える。
「水の騎士とか風の騎士というのは?」
「一騎当千の強者に与えられる二つ名です。他にも四人いらっしゃります」
何故かルカはフィーネに対抗し、説明をしてくる。
「我々は六護騎士と呼ばれておりますーー先ほど申した通りにわたしは風を、ルカは水を司っています」
フィーネは顔に優しげな微笑を浮かべたまま答える。
よくわからないが、彼女たちは特別らしい。
「何処に向かってるんだ?」
「ユミール城です。素敵な建物ですので、救世主殿もお気に入りになられるかと」
そこまで聞いちゃいない。
「何で俺が救世主なんだ?」
「到着しましたのでーーどうぞ」
えらく早いじゃないかおい。
俺が一番気になってる質問したら到着って、如何にも狙いを定めたって感じのタイミングだな。
「最速クラスの馬達を使っていますので」
(最速ーーね)
俺が呆れていると馬車の入り口が開いた。
そこから外の光が差し込んで来る。
「足下にお気をつけて下さいね」
「ーーああ」
俺は言われるがままに馬車の外へ出た。
「ーーあ?」
俺の頭に先ず浮かんだのはRPGとかに良く出てくるお城という奴だ。
先ずは赤い絨毯。
兵士たちが何人も警備していて、よくわからん部屋が沢山あるーー
まあ、人によって城のイメージは異なるだろう。
詳しく説明できないのは口惜しいが勘弁してくれ。
とにかく、俺の目の前にあるその城はゲームとかに出てくるそのままの建物だった。
中を探検すれば1分で迷いそうだ。
「参りましょう。女王陛下がお待ちです」
圧倒されている俺を知ってか知らずかルカは微笑し、俺に道を譲る。
先に行けと?
「救世主殿。ご安心をーー我々がついておりますので」
フィーネもルカと同じように微笑する。
わかった。
行けばいいんだろ?
(やれやれ……)
「ふ〜〜ん。キミが救世主なんだ」
俺が進もうとした道の向こうから現れたのは
またしても美少女。
炎のように赤い鎧を身につけ、腰には斧。 その少女は炎のように赤い髪を揺らしながら、俺の前に止まると下から覗き込んでくる。
背は俺より低い。
俺の胸ぐらいか?
炎のように赤い髪は確かに綺麗だ。
だが、肩ぐらいまでしかない為。
それが少女の幼さをより目立たさせているようだ。
「キミって、なんかーー」
「何だ?」
少女は赤い瞳に俺の顔を映しながら肩を竦める。
「地味だね」
失礼な事をぬかしやがった。
まあ、否定はしないが。 初対面の相手にいきなりそれは無いだろう。
「無礼だぞ。フレイ」
この少女はフレイというらしい。
「だって、地味なのは地味だからしょうがなーー」
フィーネの叱咤にフレイは再び肩を竦めた。
その瞬間。
ーーシャキ
フレイの喉元に尖った何かが突きつけられる。
「カズキ様を侮辱する者は許しませんーー例え、炎騎士の貴女でも」
「へぇ……水騎士殿も剣使えるの?」
「試してみましょうか?」
「上等じゃん」
次の瞬間。
ルカは後ろに跳び、フレイは腰にぶら下げていた斧を構える。
「止めんか!」
フィーネの怒鳴り声にも二人は耳を貸さない。
「おい。ヤバくないか?」
俺はすかさずフィーネに耳打ちする。
「はい。わたしでもあの二人を止める事は出来ません。あの馬鹿はともかく、ルカがあのような行動に出るとはーー」
フィーネはチラリと俺を見る。
「何だ?」
「何でもありません」 俺たちは再び二人に視線を戻す。
そして、俺はまた悩む事になる。
(あれは何ですか……?)
ルカの剣に水が巻きついていた。
それは蛇のように長くルカの頭上まで伸びている。
フレイの周りには炎の壁。
灼熱を物語っているが、不思議と燃え広がる事はない。
「サラマンダーー」
フレイの頭上に火の玉が浮かぶ。
どうやら、それをルカにぶつけるつもりらしい。
ーーよし、決めた。
「先に行こう」
「救世主殿!?」
止めるな。
俺は普通の人間なんだ。
二人を避けて通り過ぎようとしたその時。
俺は何かを踏んだ。
自分の靴ひもらしい。
躓いた俺はそのまま前にーー
「って、来るなぁ〜〜!」
どうやら、フレイの方に突進しているらしい。
俺はフレイを押し倒すような形で倒れ込んでしまった。
「ーー!」
炎の玉が放たれ、天井にぶつかる。
背中に熱を感じたが、天井が高い位置にある為、それほど熱くはなかった。
「ボクから離れろ!」
顔を赤くし俺に怒鳴るフレイ。
「すまん」
俺は身を起こし彼女から離れた。
「たく……もう」
フレイはため息をつきながら辺りを見渡す。
「ーーッ!」
何かを見つけたのか凍りつく。
(ボクの立っていた床に穴がーーまさか、ルカの攻撃……?)
何を考えているんだこいつは?
(こいつが偶然に躓かなかったらボクは死んでたーーいや。偶然じゃないとしたらーー?)
勘違いしてそうな雰囲気だ。
次にルカ。
ルカは天井を見上げていた。
(対魔特殊素材の天井にあれだけのダメージをーー)
声をかけても反応がない。
(あの攻撃は避けられなかった。まさかーーカズキ様はそれを見越してたとしたら)
此方も全力で勘違いしていそうだ。
(ボクの為にーー)
(私の為にーー)
何も言うまい。
「貴様等。後で処罰だ」
フィーネは二人を睨みつけるも俺には微笑し
「二人を同時に助けるとはーー敬服します」
何だろうな。
俺に対しての勘違いはノーブレーキか?
「クスッーー女王陛下がお待ちです。此方に」
「あ、ああ」
フィーネに案内され先を行こうとしたその時。
服の袖が引っ張られる。
見ると、フレイが服の袖を掴み、此方を睨んでいた。
「別にキミが居なくてもあれぐらい避けられたんだから」
「え? ーーああ」
意味不明だが頷いておく。
「でもーー」
フレイは頬を赤くしそっぽを向く
「少しーーカッコ良かった……かな」
「……は?」
フレイはそれだけ言うと走り去ってしまった。
意味がわからん。
「カズキ様」
次はルカが話しかけてくる。
「先ほどはありがとうございました」
「あ、いや……気にするな」
「カズキ様……」
此方は俯き顔を合わせようともしない。
「クスッーー罪なお方だ」
意味不明だ。
待てよ。
六護騎士っていうことは後三人もこんなのが居るのか?
(これ以上は勘弁してくれ……)
「救世主殿?」
「今、行く」
俺は溜め息をつきつつ、フィーネの後へ続くのだった。
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