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第十一話「地の騎士」
フィーネの謹慎処分が終わりやっと一息つく事ができたーーんな訳がない。
神様とやらは俺を休ませたくないようだ。
何やら緊急会議という事で俺は会議室へと連れて来られていた。
円形の席に座っているのはーー
水騎士ルカ。
風騎士フィーネ
炎騎士フレイ
光騎士ホリィ
闇騎士アヤメ
そして、女王様。
何とも豪華なメンバーだ。
「地騎士の姿が見えませんが」
「会議には少し遅れるーーだそうです」
「相変わらずですわね……」
そう言えばまだ地の騎士には会った事がないな。
「これより会議を開きますーー先ずは風騎士フィーネ。状況の報告を」
女王の言葉にフィーネが席から立ち上がる。
「部下からの報告によりますとーー魔王軍に動き有り。進軍の可能性があります」
「長い間防戦に徹していた魔王軍が……進軍?」
ルカは疑問を感じたらしい。。
「カズキ殿はどう思われますか?」
何故俺に話を振る?
「今まで何かを準備していて、その準備が終わったからか?」
「ええ。私も同じ意見です」
「それとーー指示を変えたか、指示してる奴が変わったからか」
「魔王が変わった……?」
フレイが首を傾げる。
適当に言っただけなのだがーー
「魔王軍って好戦的な奴らなのか?」
「はい。物凄く」
「その好戦的な奴らが防戦を決め込んでいたんだーー」
適当に言ったことでも最後まで責任持たないとな。
「攻められない理由、状況にあったんじゃないか?」
「……例えば?」
「魔王って奴が死んでて、次の魔王を決定するまでの時間稼ぎだったとか」
「!」
ほぼ全員が俺の言葉にピクリと反応する。
いい加減に言い過ぎたか?
「有り得ない話ではーー」
「ないね」
あれ?
「今の魔王はアモンでしょうか?」
「さあな……サブナックかも知れない」
「マルコシアス……ベリアルはないか」
それぞれ該当する相手が居るようだ。
「いかがなさいましょうーー女王様」
ホリィの問いに女王はしばらく間を空け
「わたくしは三国会議を提案します」
三国っというのはユミール、クロズリア、レイゼン……だったか?
「あの二国ならば利害一致……必ず力を貸して貰えるでしょう」
フィーネはなる程と頷く。
だが、女王は静かに首を横へ振る。
「いいえ。三国では力が足りませんーー」
「?」
「わたくしはジェネシス帝国の方々にも会議の参加を願いたいと思っています」
ショックが大きかったのか、全員が言葉を失う。
ジェネシス帝国ーー聞いたことがあるような無いような。
「領土、文化、民の数、戦力ーー全てにおいて最強の国……それがジェネシス帝国です」
俺を気にしてか女王がわざわざ説明してくれる。
「冗談じゃない! あんな奴らに頼るもんか!」
フレイがテーブルを叩き立ち上がる。
「同感です」
静かに頷くフィーネ。
「つけ込まれる機会をわざわざ与える必要なんてーー無いものね」
ホリィも乗り気ではないようだ。
「それでも、魔王軍に立ち向かえる事が出来るならーー」
「ルカは彼奴等が何をしてきたか知ってるよね!」
ルカの言葉をフレイが怒声でかき消す。
「彼奴等は戦争ばっかし……人の命を何とも思って無いんだ!」
「……」
否定する者は誰もいない。
重苦しい雰囲気だけが流れる。
「ですが、それ以外に方法がありますか?」
女王の物とは思えないぐらいに冷たい言葉。
「……」
「あるのなら申してみなさい。わたくしの力で叶う限り実行して見せます」
誰もが女王の言葉に黙り込む。
「そんな国が会議に来るとは思えないけど……」
俺は思った事を口にする。
「ええーーでしょうね」
すると、女王は直ぐにそれを認めた。
「自分より下である相手の言葉に耳を貸す道理はジェネシス帝国には無いでしょう」
女王の考えている事がだんだんとわかって来た。
「ですがーー」
「このユミールには有り、他の国には決して無いものがあるーーだろ?」
「はいーーそれは」
「俺ーー救世主だ」
「なっ!」
黙り込んでいた全員が声を上げる。
「救世主様のお言葉ならジェネシス帝国とは言え無視できる物ではありません」
むしろ俺を欲しがる筈だ。
「カズキを利用するって言うの!?」
「問題発言です!」
「女王様! お考え直しを!」
騒がしくなる。
騒いでいる中心がルカ達でその部下達が呆然としているというのはどうよ?
部下の騎士たちは呆然としているぞ
「まあ、悪くない手だと思うぞ?」
「カズキ様!?」
「カズキ殿!?」
「カズキ!?」
「カズキさん!?」
「あらあら……カズキ様?」
ほぼ同時に五人から怒鳴り声(約一名は落ち着いているが)に近い声を浴びる。
……怖くなんかないからな。
「悪いようにはされないだろ」
「わからないよ! カズキが傷物にされちゃったら……ボク……ボク……!」
傷物って……オイ。
「救世主様が決定なされた事は女王であるわたくしも覆す事は出来ませんーー皆様。わかりますね?」
女王の冷たい言葉に全員が黙り込む。
そんな権限を手に入れた覚えは無いがーー今は使わせて貰う。
「此方から出向く必要があるでしょう」
「しかし……」
「協力を願うのです。此方から出向くのが礼儀ではありませんか?」
最もな意見だ。
それよりこの女王ーー見た目は幼いが、言葉に説得力がある。
「付き人はシェリルと、六護騎士から一人にするべきでしょう」
「……!」
騎士たちの間に何かが走ったーー気がした。
「か、カズキ殿。私が……」
「いえいえ。フィーネさんはお忙しいでしょうから私がーー」
「ルカは水騎士の仕事があるでしょーーしょ、しょうがないなぁ……このボクが」
そんなにジェネシス帝国へ行きたいのか?
「私はこんな体なので……」
こう言っては何だが、目が見えないアヤメは付き人には不向きだろう。
「アヤメちゃん。たまには我が儘言っても良いのに……」
「え……?」
「本当はカズキ様と他の方が一緒になるのが嫌なんでしょ?」
「ほ、ホリィさん!?」
「私だって嫌だから……アヤメちゃんもそうかな、て」
ふむ。
みんな行きたがっているようだな。
そんな時。
バタン!
ドアが大きな音を立てて開く。
力の加減など明らかにされていない。
「間に合ったか?」
背の高い女性がズカズカと会議室の中に入って来た。
かなりの美女だが、今までにない雰囲気が漂っている。
「アズリア……少し遅刻するでは無かったのか?」
「少しじゃなかったか? まぁ、気にすんな。アッハハハハ!」
アズリアは笑いながら俺に目を留める。
「アンタが救世主サマか?」
「あ……ああ」
「アタシはアズリアだ。よろしくな」
見た目とは裏腹に男らしい雰囲気を持つ女性だ。
「埒が明かないのでアズリア様に救世主様の付き人をお願いします」
めんどくさくなったのか投げやりに見えなくもない言い方で女王様が決定する。
「……どうも話が見えないんだが?」
アズリアは首を傾げ怪訝な顔をする。
「どうしてアズリアなのさ!」
気に入らないのか、食ってかかるフレイ。
「フレイさん……落ち着いて下さい」
ルカになだめられるフレイを横目で見ながら、フィーネは納得したように頷く。
「守るという事に関してアズリアより優れる者はいないーー今回の件については彼女が適任だろう」
「だけど……」
まだ状況を把握できていないアズリアが耳打ちしてくる。
「おい。アタシにもわかるよう説明しろよーーなるべく簡単にな」
注文の多い奴だ。
「魔王軍の事は聞いてるか?」
「……勿論だ」
本当か?
「その件でジェネシス帝国へ出掛ける事になった」
「ジェネシス帝国? 誰が?」
「俺」
「何のために?」
「魔王軍討伐」
簡単にし過ぎたか?
アズリアは笑いが堪えきれなくなったらしい。
「アッハハハハ! 良いねぇ! 最高に面白そうだ!」
「そうか?」
「ああ! あのジェネシス帝国を引き込んで魔王と戦争だろ?」
そう言えばそうだ。
俺は戦争の話をしていたのだ。
「気に入ったよーーよろしくな。カズキ!」
「……」
また妙なフラグを立ててしまったようだ。
「では付き人はシェリルと」
「はい」
俺の側に控えていた(今まで気づかなかった)シェリルがにこやかに返事をする。
「地の騎士アズリア様」
「おうーーじゃなかった……はっ」
「あなた方に救世主様の付き人を命じます」
「御意に」
さてどうなるかーーそんなの俺にもわからないさ。
「なるようにしか……ならないか」
何か言いたげな五人の視線を受けながら俺は会議の終わりを待つのだった。
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