ここには二つの歴史が交錯します。時は紀元前480年。
ギリシャとペルシャの歴史上最大と言われる戦争と、中国の春秋戦国時代の勇、『燕』と遼東半島に居た朝鮮族(古朝鮮)の戦い。
前者にはヘロドトスが書いた歴史書があります。後者にははっきりした記録はありませんが、伝説を調べると、古朝鮮族が遼東半島を追われ、朝鮮半島に至り、一つは高句麗、百済などの国を作り、もう一つの流れは海を渡って日本の先住民族を征服して我々の祖先となっていく民族と征服・混合の歴史が浮かび上がります。
この物語はその壮大な民族の興亡の物語の端緒に過ぎません。
前半は美少年アスラを屈服させようとするレオニダスの、拷問のSMチックな同性愛の描写があります。ボーイズラブが嫌いな読者は読み飛ばして下さい。
後半は戦記物に挑戦して、トーマスなりに歴史を調べて再構成したテルモピレーの戦いの物語です。映画「300」を見た人は入りやすいかも知れません。映画でレオニダスはアテネ人を「少年の肉体を追い回す」連中と言っていますが、スパルタは少年とのプラトニックな愛を社会の規範としていて、肉欲を実行する者は罰せられたのです。しかし少年との恋愛は肯定されていたのです。
「王!」
レオニダスは捕虜を入れる牢獄に入っていった。居並ぶ衛兵達は姿勢を正した。
「あのペルシャの戦士は屈服したか?名を言ったか?」
「あれは『アスラ』と呼ばれておる様です」
「アスラ?」
「捕らえた兵にインド人が居て、そう呼んでおりました。すぐ逃がさないと悪災が来ると」
「ふん・・・異教の神か!我等の神と違う!」
「今、鞭打っております。従順になれば優しくしてやると諭しましたが、あまりにも強情な奴!それに・・・」
「それに?」
レオニダスは隊長のディオニケスを促した。
「あやつは・・・そのインド人の言うように魔性の者かも知れません。責める者が、すぐその一物を腫らすので交代させています。夜になるとあやつは穢れた欲望を持つ者の餌食になるでしょう・・・しかし所詮、敵の捕虜。奴隷以下ですから罰することも出来ないでしょうが」
「確かに美しかったな。ペルシャの小姓ではないのか?」
「小姓が長剣を操ってスパルタの強者、数人の剣を撃ち落とし得ましょうか?それに・・・あやつの身体の特徴はペルシャ人やインド人とも違います。装身具を見ても身分の高い者の様です」
「崖っぷちに追い込んだ時、あやつは降伏したが、後ろに居たペルシャ人数十人の命を助けろと言ったな」
「我等に命令口調でしたな・・・逃げられぬと考えて我等に死者を出さぬように戦うなど、あの年で知恵と胆力はあっぱれですが、どうしますか?」
レオニダスは髭の中で怒ったように言った。
「あやつに選ぶ道は無い!ペルシャ王は首都スーサを出てサルディスに着き、すでに遠征軍の後を追ったという。儂は王の位置を何としても吐かせる!」
「・・・ならば相当の責めを与えなければなりませんな。それに・・・お気に入ったのでは?」
レオニダスは、この古い友の微笑みながら言った言葉にぎくりとした。