警告
この作品は<R-18>です。
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9 別れ
学生気分でヤンチャをしてしまった俺と児玉。木村は気が付いているのか意味深な
リアクションだった。
俺達にとってはそれぞれ売上は順調に伸びており、立ち止まるには早過ぎる。頭では
分かっているのだ。若さゆえとは思われたくないし、思いたくもなかった。
俺達3人は徐々に目指しているところから逸れているような気がした…。
キングは相変わらず忙しい。クィーンやジャックにヘルプを要請する毎日だ。もちろん
コアタイムになれば、ヘルプは戻される。キングは客の出足が早かった。
これは俺の企画でもある「同伴キャンペーン」を実施していたからだった。女の子に
同伴を促す。通常の同伴歩合の倍額をバックするキャンペーンを打ち出していた。
早い時間は客足が遅い事に目を付け、0よりは店として利益が出る、女の子も歩合が
余分に付く。
延々とやらない、期間限定と銘打ったことが客の社交性を煽る形となり、双方にメリットが
あるこの企画は大成功する結果となる。
出勤が出揃わない早い時間に満卓になったりするとヘルプを要請する。連日ジャックから
数名のヘルプが来ていた。
「主任、おはようございます」
シンナーを一緒に吸った3人もよくヘルプに来ていた。
「ありがとね。お願いします」
営業が終わってからこの3人と俺達はよく集まるようになっていた。歳の近い男女が仕事と
プライベートで過ごす時間が長くなる程、恋愛関係に発展するものはない。
やがて6人は3組のカップルのように2人で行動する事が多くなった。俺と児玉とマコとアサミ
の4人は相変わらずシンナーを吸うことがあった。
俺は特に感情があった訳ではないマコと体の関係まで発展していた。ただよく一緒に居た
からという理由だった。
マコの方が必ず先に営業が終わる。店から少し離れたところでマコが車で待っている。
そこに俺が歩いて周りに知っている目が無い事を確認して車に乗り込む。2人は毎晩のように
ご飯を食べたり、ドライブをしていた。もちろん逢う度に最後はセックスをしていた。
この2週間ほど児玉と木村とはゆっくり話せていなかった。俺と同じ様に過ごしているのかも
しれない。寮でも戻る時間は様々で帰ってこない日もそれぞれあった。
このままでいいんだろうか。俺から2人に集まろうと連絡を取った。
「悪い、今日はマリと約束してんだ。パスさせて」
「今日もアサミと一緒なんだよ、一緒に来ねえ?」
あいつ等は恋愛として女の子として付き合っているのだろうか。色々な事で考えていた時に
ジャック店の店長から連絡があった。
「おつかれさん。今日、時間取れるか?」
「大丈夫です」
店長は俺と2人で話がしたいと言い、指定されたへ向かった。街の雑踏から少し離れた場所に
あった店は隠れ家のような洒落た店だった。
ドキドキしていた。マコのことやシンナーがバレたんじゃないかと思っていた。
店内に入ると予約席に通された。席に案内されると薄暗い個室だった。店長が来るまですごく
長い時間に感じられた。後ろめたいことがあるからだ。
「おー悪い。お疲れさん」
「お疲れ様です」
とりあえず飲み物を注文したところで店長が問い掛けてきた。
「マコと何かあったか?」
店長はタバコに火を付け、いきなり確信に触れてきた。
「何かってどういう意味ですか?」
動揺を隠してそう答えることが精一杯だった。もちろん質問の答えにはなっていない。
「いやキングのヘルプとか急に行きたがるようになったり、俺達にもよくマイカワの話を
するようになったり、出勤も毎日出るようになったりさ」
「ヘルプに関しては俺は助かってます。出勤が増えてるのは木村の功績ですよ」
店長は確信を避けている俺に業を煮やしたのか直球勝負にきた。
「マコと付き合ってやれねえか?今あの子すごく活き活きしてる。もしこれがマイカワが
そばにいることで良くなっているなら尚、頑張るじゃないかなって思う」
店長は少し黙った俺に続けた。
「マコのやる気が出てるのは確かでさ、地元の友達でもあるアサミやマリも相乗効果って
いうのかな?感化されてるんだよ。いくつかのルールは守ってもらうようになるけどさ、
マイカワさえ良ければどうだ?」
相変わらず俺は黙っていた。
「今すぐじゃなくても返事はいいから考えといてくれないか?」
「いえ、今返答します…」
俺は今の気持ちを素直に言う事にし、静かに口を開いた。
「店長。実は俺もうマコと男女の関係になっています。ただ付き合っていません。今後も
付き合うことは無いと思います。逢いたいと言われ、毎日逢っています。」
大きく息を吸って俺は真情を吐露した。
「俺どうしていいか分かりません。流されてしまっていて…。このままダラダラしてると
マコも傷付くし、俺も仕事に支障が出たらそれこそ本末転倒です。今のままじゃダメだと
分かっているのにどうしていいか分かりません…」
店長は俺の言葉に驚かなかった。
「そうか。お前の気持ちはよく分かった。予想通りマコはお前に惚れてたんだな。いいよ。
マコにとってお前に振られるちゃうことも社会勉強だよ。誰もが通る道だよ」
「今後マイカワにマコのことで動いてもらう事が出てくると思う。それには協力してくれ。
お前はホープなんだ。お前にとっても勉強になったろ?」
「はい…」
店長に聞いてもらってすっきりしたのか、この件がハッキリ出来たのか。俺は涙が止まら
なかった。
「マイカワさ、今しか出来ない経験だよ。その涙の意味は忘れない方がいい」
「はい。店長、俺今からマコに話してきます」
「そうだな。もしこれでマコが辞めちゃうような事があってもお前のせいじゃないから。
お前の本心を伝えてやれ」
「わかりました」
店長と別れ、マコの部屋へ向かった。インターホンを押すとマコが出てきた。玄関には男
モノの靴が2つあった。
「木村と児玉が来てんのかい?」
「うん、みんな待ってたよ」
「2人で話がしたいんだ」
「いいよ。車のエンジン掛けといて」
マコからキーを渡されると地下の駐車場に向かった。俺はエンジンも掛けずに立っていた。
「どしたの?何か今日違うね」
「マコ…俺達こうやって逢うのって良くないと思うんだ。だから2人で逢うのはやめよう」
「え?なんで?店長とかにバレたの?」
「うん。ジャックの店長に言われた。さっきまで一緒に居たんだよ」
「これで別れちゃっていいの?私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないよ。嫌いじゃないから傷付けたくないと思ってる」
「私のことで悩んでるの?」
「勝手に始めたことで勝手に終わらせようとして…俺はズルいか?」
「私のせいで悩んでたんだね。今は仕事が第一だよね。ここはあなたの言うことを聞くよ」
「俺って女々しいよな。マコを傷付けたくないなんてキレイごと言ってマコに励まされてる」
「勇気を出してちゃんと言ってくれてありがとう。みんな待ってるから部屋戻るね」
「ああ…分かった」
マコはこの場から走って行った。俺はその姿を確認する事はなかった。
俺は一人でその場に座り込み、タバコを吸っていた。俺とマコは1ヶ月で終わった。
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