警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
何もかもがうまくいっていた。だが少し若さが出てしまう。
8 油断
主任となりクラブキングは益々忙しくなっていた。
自店舗の女の子では足りなくなり、ヘルプを要請する時もあるくらいだった。
「キング店マイカワです。お疲れです。ヘルプ3名程いいですか?」
電話でクィーンへ連絡をとる。
「マジ?分かりました。とりあえず2人回しますよ」
電話で渋々応対したのは児玉だった。児玉は俺に敬語だった。他店とはいえ俺が上役に
なるからだ。
今週は特に調子が良い。鷹司支配人をリストに据え、店長がフロント業務、フロアは俺と
近藤。女の子のシフトは俺が仕切るようになってから出勤率が向上した。
ユミさんやユカさん、カズミやマナミ、アキコ達も積極的に助けてくれる。
これによって「あの店は女の子がたくさんいる」ということが客に植え付けられていると
いう訳だ。
ただバニーガールを売りにしている店でいくらヘルプとは言え、違うコスチュームを着て
いる女の子をつけるのはどうかと思うが…。
忙しいと弊害も出てくる。まずチャームやフードオーダーが足りなくなる。買出しに行けば
事足りてしまうが、氷までは足りなくなると買う訳にはいかない。経費が掛かり過ぎる。
「近藤ー!」
「主任、近藤さんは買出しに行ってもらってます」
カウンター担当が答えた。俺が取りに行くしかない。これは意外と恥ずかしい。道路を
挟んで向かいにジャックがあるが、スーツを着た男が夜の街中をゴミ袋にテンコ盛りの
氷を担いで歩いている。
ジャックからキングまで人混みが途切れる事のない、忙しない通りであるが人とぶつかった
事がない。人が俺を避けて歩くからだ。
「お疲れ様です!」
「あー主任、お疲れ様です。」
木村がリストに座っていた。ボーイ長では唯一、営業を回す司令塔役を任されている。
「氷ですか?」
「うん。お願い」
「佐藤〜氷お願い!」
俺を引っ掛けてくれた佐藤だ。最近まで俺達より上役だった。今では木村と児玉に追い
つかれ、俺には追い越されていた。
「主任、おはようございます。今持ってきますので…」
元気が無いのはしょうがないか。落ち込んでいる暇はないのに…彼はもう終わりか。
「主任、おはようございます!」
ジャック店の女の子達だ。ここはキングのようなバニーガールにはなりたくない、横に
座って接客したくない女の子達が在籍する、ジャックはカウンターバーのようなところだ。
俺も最近、3店舗のカラーが分かってきた。キングはキレイなお姉系、クィーンは可愛い系、
ジャックはヤンキー系だと思う。
「主任ってうちの子達から評判いいですよ」
佐藤が袋一杯に氷を詰めてきた。
「そんなこと眼中ないよ。仕事上は都合が良いけどな。佐藤は気になるか?」
佐藤は俺の言葉に黙った。俺達3人と目指しているところが違うのだろう。
その日の営業が終わって3人はいつものショットバーで集まった。集まるのは久しぶりだった。
それぞれ環境が変わったり、仕事内容が変わったことによって多忙を極めていたからだ。
「いやーキング調子いいっすね」
「プライベートの時に敬語はやめろっての」
「でも3店舗ではダントツだろう?」
「近藤も頑張ってるし、何より支配人のリストが効率が良いね」
木村のジャック移動が成功し、売上は上っている。児玉も奮起してクィーンも売上が上って
いる。もちろんキングは絶好調だ。
吹き抜けの上の方からガチャンとガラスが割れる音がした。
「すいませーん!」
階段から割れたグラスを持って、酔っ払いの女の子が降りてきた。
「あー!ボーイ長達だ。お疲れ様でーす」
ジャックの女の子達だった。俺達に気が付くとみんな降りてきた。木村の話では3人とも
19歳でマリ、アサミ、マコ。地元の仲間だという。
「主任、私達も合流していいですか?」
「明日は店休日だからいっかー」
俺への問い掛けに木村が答える。何だこの木村のテンションの高さは…。俺と児玉が首を
傾げた。もちろん一緒に飲んでて見付かると宜しくないのは周知のルールだ。
「おい、バレると面倒だぞ」
「俺達ここで何回飲んでるよ?ユミさんとユカさん達に1回逢っただけだろ?」
「じゃ私達の寮で飲み直しません?」
半ば木村のテンションに根負けした形で女子寮へ向かった。
「ここのマンション、俺らの寮なんだよ」
さらに勢いづく木村がマンションに向かって指差した。
「え?私達、隣のマンションなんですけど?」
知る訳も無かった。マンションを出る時間と戻る時間が彼女達と違うのだ。
部屋に入るとさすがは男所帯と違う。間取りこそ俺達と同じ3LDKだが雰囲気が女の子の
部屋というオーラが出ていた。
みんなでアサミの部屋で飲み直すことにした。木村はやはり酔っ払っていたようで横に
なるなり寝てしまった。
「アサミまだアレある?」
「クロゼットの奥に隠してあるよ。マコ取って」
隠してある?何をだろう?
「あったー!主任達も遊ぼ!」
シンナーだった。俺もこの類は嫌いじゃない。
「児玉どうするよ?中1日あれば匂い取れるか?」
「取れるだろ。たまには息抜きでもするか」
結局、俺達5人は数時間、シンナーを吸っていた。久しぶりに吸ったという事もあり、
何度か注ぎ足していて、相当な量を吸いまくったようだ。
目が覚めるとしっかり部屋へ戻っていた。罪悪感でいっぱいで後悔していた。俺が冷蔵庫に
飲み物を取りに行った時、木村と児玉も起きてきた。
「よお、お前ら昨日何してた?」
木村は知っている様子だった。児玉がそれに反応する。
「悪い。ついつい勢いに流されて調子に乗っちまったよ…」
「いやこっちこそ悪かったよ。やけに酒が効いちゃって酔っ払っちゃってさ」
俺と児玉は火遊びをしてしまった事を分かっていた。
今回で止めておけば火遊びで終わるはずだった。
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