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ポイントを稼ぐ為にスカウトに出る。それは出世の近道だった。
6 スカウト
翌日、俺は完全に吹っ切れていた。
店の女の子達も頑張っていれば見方になってくれる事、木村と児玉が心配してくれた事、
鷹司主任が守ってくれる事、社長が俺達を気に掛けてくれている事。

この一週間で客や女の子達にも冗談が言えるくらいに周りもよく見えてきた。売上も
順調に上っていた。そして週末の営業が終わった。
「ほい!お疲れさん。大入りでてるぞ」
店長から封筒を受け取ると21000円と書いてあった。これが1週間毎に出る歩合給だ。
「今日くらい早く上っていいぞ」
鷹司主任が俺と木村の背中を押した。
「お疲れ様でした!お先失礼します」
俺と木村は児玉の店に入るとまだ男子ミーティングが行われていた。別に入っていても
問題はない。入り口にあるリストのところで聞き耳を立ててみた。
「今週はキングに負けたけど来週はクィーンが勝つぞ」
「はい!」
今週の売上はキングが勝っていた。
「おつかれ。今週は調子良かったらしいな?」
児玉が来た。
「たまたまだって。どうするどっか行くか?」
俺達は寮の近所にあるショットバーへ向かった。

「よお?大入りいくらよ?」
「21000円」
「あ?俺15000円しかもらってねえぞ」
売上が上れば俺達の歩合も増える。児玉が続けた。
「バニーガールだから女の子集まり難いかと思ったけど時給が良いんだよな」
日常ではあり得ないカッコをするのだ。児玉の店の女の子達より時給が高い。割り切れれば
もちろん時給が高いに越した事はない。
「スカウト行ってる?俺来週から出るかな」
ここでも歩合が発生する。体験入店させて1ヶ月経過すると1万の歩合が出る。これも大きい。
「とりあえず今週は俺達の勝ちってことで今日は児玉のおごりな」
「でも鷹司主任とか店長はいくら位貰えんのかな?」
「出世するしかねえべ?」
「頑張れ!」
俺達3人は振り返った。ユミさんとユカさんが居た。キングの人気No1と2の2人だ。この
2人はいつも俺達3人の事を可愛がってくれ、また心配もしてくれている。俺達にとっては
姉貴みたいな存在だ。2人もこのショットバーへよく来るらしい。
「仕事終わっても仕事の話してんだ?関心だね」
ユミさんとユカさんは百戦錬磨で頼り甲斐のある姉貴。俺達は仕事以外だと「ねーさん」
と呼んでいる。
「ねーさん。今俺達に足りないものって何ですか?」
「やっぱり経験かな。まだオーラが無いよ。困った時に何とかしてくれるっていう感じ
 がね。でもまだ3人は今のままでいいのよ」
「まだ直接、売上に携わるようなことしてない気がするんですよ」
「焦る必要はないよ。リストに入って営業するようになったら分かってくるから」
その日は朝まで2人にいろいろな事を教わった。俺達はまだこれからだ。

翌日、少し早めに起きて駅の方へスカウトに出た。横断歩道が眩しくてしょうがない。
これはもう立派な水商売の男の証だ。30人くらい声を掛けただろうか。やっと一人と
話が出来た。
「すいません。宗教に興味はありますか?」
「え?ありませんけど…」
「あー良かった。俺と一緒ですね」
その子はクスっと笑った。掴みはOKかな。
「ちょっとだけ時間ちょうだい!お姉さんは学生さん?」
「学生ですよ」
「何かアルバイトしてる?」
「一応やろうとはしてるけど…お兄さんは何屋さん?」
「キャバクラのボーイやってますよ。興味ない?」
「うん…。夜はちょっとね」
「うちの店って学生さんも多いですよ。ちょっと店見に来ない?」
「えー見るだけならいいけどやるって言ってないからね」
「いいのいいの。嫌だったら断ってくれてもいいから」
こんなやりとりで店へ連れて行くことを了承させた。
「おはよ」
偶然通りかかったうちの店のカズミだ。
「おーおはよう。スカウトだよ」
「頑張ってるね…この子、私の友達なんですけど?」
これには驚いたが好都合だった。

このマナミという子はカズミと高校が同じクラスだったらしい。店のシステムや給料形態
等はカズミが説明してくれた。
「まず絶対安全だからさ、出れる日をシフト組んでやってみればいいよ」
「カズミが言うんだから安心かな」
俺はカズミにウインクをした。今回はカズミの力を借りた形だった。カズミは週に3回前後
シフトを入れている。マナミも最初の1週間はカズミと同じ曜日にシフトを入れた。
「じゃ簡単に履歴書書いてもらえる?あと免許証とかあればコピー撮りたいんだ」
年齢確認は重要な事だ。男子スタッフがまず調べられる事はないが、女の子は特に世間体も
悪く営業停止になるどころか店長や社長が逮捕されるからだ。

ともかくマナミを入店させる事が出来た。状況からみてしばらくは続くだろう。
店長と主任が出勤した時にカズミを紹介した。
「最初は慣れるまでカズミと一緒のテーブルにまわす様にしてもらうから」
これでマナミも安心して働けるだろう。その日の営業はすべてカズミとマナミがセットで
接客できた。この入店を知ったユミさんとユカさんはすごく喜んでくれた。

マナミが入店して1週間が過ぎた頃、マナミが話があると言う。
「マイカワさん、友達を紹介したいんですけどいいですか?」
「構わないよ。連れてきて」
この業界は女の子が全てだ。ユミさんやユカさんみたいな容姿も良くて仕事の出来る人
ばかりではない。週に3日程度出勤してくれるような新人を多く持つ事も店の鮮度を保つ
意味でも非常に大事だ。

前回カズミがマナミを安心させたように今回はマナミがアキコという友達を入店させる事が
出来た。これは俺の成績となると共にマナミにもバックが発生する。
アキコはマナミ同様、週に3回シフトを入れてくれた。
カズミをはじめ、マナミ、アキコは俺の事を信頼し、多方面で助けてくれる事となった。



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