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なぜか周りの人間が余所余所しい。それはイシハラが企画したサプライズだった。
59 サプライズ
スタッフの底上げも出来、イシハラ、小松を中心にキャストへの最終確認等が業務の中心と
なっていた。幸い、心変わりするキャストは皆無で在籍数は保てることとなった。

「イシハラ!」
「小松!」
返事が無い。
「おーい!ユイ、誰か居るか?」
ユイやマコ達、原田達も居ないようだ。事務所に篭っていた為、外出に気が付かなかった。
事務所の電話はガンガン鳴っていた。事務所の電話は2回線しか無い為、鳴りっ放しだ。一段落
した途端、みんながぞろぞろ店に戻ってきた。
「どこ行ってた?」
「俺達はスカウトです」
スタッフとマコ、リナ達はスカウトに出ていたと言う。
「ユイは?」
「俺達も分かりません。昼前には出掛けてたと思います」
「もうレセプションが近いんだから段取りが大変だよ」
「じゃ明日、俺達が挨拶がてら、配りに行ってきますよ」
「頼んだぞ。今日はもう終わりにしていいや」
「酒乃蔵でも行きますか?」
「俺達、仕事終わらせてから行きますんで、ボス達は先に行っててください」
「マコ達、ユイ知らねえか?」
「ユイちゃん?知らない」
みんなそうだが、何か素っ気無い。
「ボス、小松さんも後から来ますんで、先行きましょ」

「社長、いらっしゃい。何名様?」
「全部で9人くらいかな」
「奥の座敷にどうぞ」
「とりあえず、生ビール9つね」
俺とイシハラは座敷に座り、ビールを待った。
「なあ、お前ら何か隠してないか?」
「ボスに隠し事ですか?そんな恐れ多いことしませんよ」
イシハラを問い詰めようとしたが、電話が鳴った。
「ユイ!もう店閉めちゃった?」
「おお。どこ居る?まだ何人か残ってるけどもう閉めるぞ。蔵に居るよ」
「分かった!」
30分ほどして、小松達が来た。
「すいません、遅くなっちゃって」
「こんな時間までやらなきゃいけない仕事があんの?忙しいのか?」
「原田くんとかに仕事の説明をしてました」
「マコやリナも?」
「そうですよ?」
「ふーん」
今日は何かと腑に落ちないことが多い。ちょうどユイが店に入ってきた。
「おつかれさま」
「どこ行ってた?」
「仕事に決まってるでしょ」
その夜は俺以外で何かを企んでいるようだった。帰宅してもユイに惚けられ、バカバカしく
なった俺は、真相を追究するのはやめることにした。

翌日、昼から店に集合した。イシハラやボーイ達はレセプションの招待状を渡しに、店を
出て行った。ユイやマコ、リナの3人はドレスの修正箇所を確認しに、ぶてぃっくんの系列店へ
行くと言い、出掛けて行った。小松は許可関係の証書を受け取りに出掛けると言う。
「ボス、ぶてぃっくんが店に来て欲しいと連絡がありました」
「ユイ達と一緒じゃないの?」
「はい。修正は原宿の店の方みたいです」
「分かった。1階でいいんだな」

「こんにちわ。マイカワですけど、オーナーいらっしゃいます?」
「お伺いしています。こちらへどうぞ」
応接室へと通された。
「ボス、まいどです。打合せしたいんですが、その前にランチはいかがですか?」
「いいですよ」
「ドレス発注のお礼もしなきゃって思ってまして。赤坂に旨い寿司屋があるんですよ」
店を出て、ぶてぃっくんのポルシェで店へ向かった。
「いよいよ明後日レセプションですね」
「うん。いろいろ助けてもらってすいませんね」
「招待状はイシハラくんから頂きました。いいんですか私がお伺いしても?」
しばらくスタッフの制服やドレスの話をしていた。確かにこの店の寿司は旨かった。
「じゃそろそろ戻りますか。会計は私が」
「すいません。ごちそうになります」
「戻る前にうちの店にちょっと寄ってもらえますか?渡したいものがあるので」
「はい?いいですけど…」

ぶてぃっくんの店に戻ると、白いタキシードのようなものを着させられた。
「何ですかこれ?」
「さすがボス!似合ってますよ」
その時、イシハラから携帯が鳴った。
「ボス!大変です!急いでお店に戻ってください!」
「どした?」
電話は切れていた。
「何か只事では無さそうですね。俺も付き合います。急ぎましょう!」

俺とぶてぃっくんはエレベーターで店まで急いだ。エントランスは真っ暗だった。
「イシハラ!」
そう叫んだ瞬間、エントランスのダウンライトが俺を照らす。
「新郎のご入場です。みなさん盛大な拍手でお迎えください」
イシハラがマイクでそんなことを言っていた。拍手の中、フロアのライトが少しずつ明るく
なる。俺はまだ事態を把握出来ずに促されるままフロアを歩いて行った。社長や木村、児玉
ユミさん、ユカさんやカズミ達の姿まで見えた。
「ボス、そこで止まってください」
再び、イシハラのマイクで俺は言われるがまま、止まった。
「それでは新婦のお披露目です。みなさまVIPルームをご覧ください」
VIPルームの照明がゆっくりと明るくなると、ウェディングドレス姿のユイが立っていた。
「それでは新郎は新婦の隣へお座りください」
VIPルームへと続く階段を登り、ユイの隣へ座った。

「最近、みんながソワソワしてたのはこれだったのか」
「驚かせたくてね。イシハラくんがサプライズしたいって企画してくれたの」
フロアが満卓になっている。90名近い人が集まってくれていた。この店の工事に携わって
くれたキングの常連で業者の人達、キングを始め、グループの仲間や女の子達がたくさん来て
くれていた。その他、ユイの友達も大勢、来てくれていた。
「主役が揃いましたので、乾杯の音頭をキング店児玉店長にお願いしたいと思います」
児玉がリスト前のテーブルへ行くと、イシハラからマイクを受け取った。
「ただいまご紹介に預かりましたキング店々長の児玉でございます。僭越ながら乾杯の音頭
 を取らさせて頂きます。お手元のグラスをお持ちの上、ご起立の程、お願いします」

「新郎、新婦の末長いお幸せと、ならびにご臨席のみなさまのご多幸とご繁栄、ご発展を
 お祈り致しまして、乾杯!」
「乾杯!」
乾杯の唱和の後、盛大な拍手に包まれた。
「ユイ、俺のところももちろん来てないけど、こういうのって両親呼ばなくていいのか?」
「イシハラくん曰く、今日はそういう堅苦しいのは無しで、仲間内のパーティなんだって」

「それではしばらくご歓談ください」
さすがイシハラが司会だ。乾杯の後、いきなり歓談の時間を取るとわ…



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