警告
この作品は<R-18>です。
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イシハラの危険な状態は続いていた。懸命の治療も虚しく、心配停止状態となってしまう。俺は帰ってくると信じるしかなかった。
170 一蓮托生
ユイの墓前で俺の盾となったイシハラは、若に刺されてしまう。病院に運ばれたが心停止状態に
なってしまった。
ICUの中では、俺達には分からない蘇生処置が慌しく続けられていた。電気ショックを与えても
点滴に薬を入れても、イシハラの心臓は再び鼓動することはなかった。
「イシハラは戻ってくる…必ず」
俺はそう言い聞かせ続けた。
4年後。
俺は沖縄の離島に移り住んでいた。ここには世帯数も少なく、もちろん俺の知っている人間など
一切、居ない。静かな場所を選んで、住むことにしていたからだった。
島に来てから3ヶ月間を要して、自分達で家を建てた。その後、子供達の為にとツリーハウスを
敷地の中に作った。今では結とアイの勉強部屋となっている。
「結、早く支度して。パパが船で待ってるよ」
「はーい!」
今日は、結の始業式だった。学校がある本島へ行くには、船で行くしかない為、俺は免許を
取り、小さな船を安く譲ってもらった。
体よりも大きなランドセルを背負った結とシズカが走ってきた。
「結ちゃん、おはよう!」
「アイちゃん、おはよ!」
「アイ、学校に行ったら結を頼むな」
「うん、分かった」
結とアイを乗せた船は、本島へと向かった。
「結、ちゃんとアイちゃんの言うこと聞いてよ」
「パパ達は、時間には迎えに来るからな」
「行ってきます!」
結とアイを見送ると、俺達は市場へと買い物に出掛けた。
昼前には、2人を学校に迎えに行った。
「パパ!」
結は俺を見つけると、一目散に走って来て飛び付いた。
「おかえり。学校は楽しかった?」
「楽しかったよ。友達が出来たよ」
「そうかそうか」
港まで移動すると、再び島へと船を走らせた。
「ボス、ママが行ってたけど、今日も小松のおじちゃんが来るんだよね?」
「ああ。バーベキューやって、花火とキャンプファイアしような」
「小松のおじちゃん、また来るの?」
「あはは、まただな」
小松は1ヶ月に1回は、俺のところへ顔を出しに来ていた。
島に着くとマコが迎えに来ていた。
「おかえり」
「ママ、小松のおじちゃんは?」
「まだよ」
「マコ、荷物下ろすの手伝ってやってくれよ」
「はいよ」
自宅まで戻ると小松から、連絡があった。
「ボス、小松です」
「おう、どこだ?」
「空港から出て、港に向かってます」
「どんくらいよ?」
「小一時間くらいですかね」
「今、出るわ」
「お願いします」
「小松迎えに行ってくるわ」
「結も行く!」
「アイも!」
「シズカとマコで支度しておいて。買い忘れたものあるか?」
「とりあえず無いですね」
「分かった」
港に行くと小松がすでに待っていた。
「早かったな」
「道が空いてました」
「小松のおじちゃん、こんにちわ」
「おお、結ちゃんとアイちゃん。しばらく見ない間に大きくなったね」
「何言ってんだ。毎月来てるくせに」
「あはは。そうでしたね」
小松を乗せた船は、再び島へと戻った。
「あんちゃん!魚いるか?」
「みんなでバーベキューやるんだ。美味しいの1匹もらおうかな」
「これなんか、美味いよ」
港で顔見知りの漁師のオヤジが魚をくれた。このオヤジさんに船を紹介してもらったのだ。
「おっちゃんも来れば?」
「いつも悪いな。ごちそうになってばかりで」
「いいんだよ。じゃ後でね」
「泡盛持って行くか?」
「芋焼酎がいっぱいあるからいいよ」
「あいよ」
「ただいま」
「小松さん、いらっしゃい」
「またお世話になります。ボス、書類を渡しておきますね」
「そういえば、他の荷物は全部届いたよ」
「アンカーとか係留ロープ、ライフジャケットもですか?」
「ちょっと小松のセンスを疑ったけどな」
「センスじゃボスには勝てません」
「だろ?ちゃんと子供用のジャケットも届いたよ」
「それは良かったです」
「これで明日は遊べるな」
「天気は良いですか?」
「ばっちりだ」
バーベキューの下準備が出来た。
「遅いな…本当に今日、納船なんだよな?」
「のはずですけど、もう陽が落ちちゃいますね」
マリンジェットを購入していた。船とは違い、機動力がかなりあり、使い勝手が良かった。
照明等の装置が一切無い、マリンジェットは日没までに着岸しなくてはいけなかった。
「ボス、遅くなっちゃいました」
「遅いよ、イシハラ」
「イシハラさん、待ちましたよ」
イシハラは、俺と小松の3艇を曳航してきた。
「さっそく見ます?」
「当然!」
4年前、俺の身代わりとなって、若に刺されたイシハラは、奇跡の生還をしていた。体内の血を
ほとんど入れ替え、生死の境を綱渡りで歩いていた。イシハラが言うには、意識の無い状態で
どこからともなく俺が手を差し伸べてきたと言う。その手を握ると意識が戻ったらしい。
そのときのことを、今でもイシハラは飲むと自慢げに話す。
「俺がボスの盾になって生死を彷徨ったとき、ボスが俺をこっちに引っ張ってくれた」
「イシハラさん、もう何回も聞きましたよ…」
「さすがにもう感動も薄れたね」
何度も何度も聞かされていたマコは、呆れていた。
「本当の男の付き合ってのは、こうじゃなきゃね。そうっすよね、ボス?」
「お前と俺は一蓮托生だよ」
「一蓮托生っすね」
「イシハラさん、今晩は飲みましょうよ」
俺の家族とイシハラの家族は、離島でひっそりと暮らした。俺達はもう表舞台に出ることはない
だろう。6人とたまにくる小松だけで楽しく暮らそう。
俺は今まで様々な人と出逢い、いろんな人達に支えられて生きてきた。
その1人1人の笑顔が折れかけた俺の心を、いつも踏ん張り続けさせてくれた。
人の心はとても弱く、決して1人では生きていけない。
信頼している仲間が、道を逸れかけた俺を常に正常な道へと導いてくれた。
俺とイシハラは、一蓮托生。良いも悪いも結果に問わず、運命を共に生きていこう。
ずっと走り続けてた俺は、走ることを止めた。
これからは、ゆっくり歩いていこう。このまま、ずっと。
ずっと…
『ずっと』を最後までご愛読頂き、ありがとうございました。
初めての小説ということで、読みにくい文章となってしまったことは、言うまでもありません。
しかし想いや気持ちを込めて、ここまで書くことができました。
ドキュメントにほぼ近い状態で書きたかったので、特別に激しい描写以外は、実際にあった話を書きました。
本作内の表現で、好ましくない表現もありますが、全て
悪いことは悪いと否定しています。
作内の薬物や暴力団、脱法要素の表現もありますが、これらは全て読者側でちゃんとした判断して下されば幸いです。
長い間、『ずっと』をご愛読頂きまことにありがとうございました。
『ずっと』外伝シリーズもご愛読頂ければ幸いです。
『ずっと外伝イシハラ』
http://ncode.syosetu.com/n3164h/
『ずっと外伝ユイ』
http://ncode.syosetu.com/n3924h/
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