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新宿一家のアサクラと名乗る男に拉致された。例の契約書を見せられ金を払えという。ヤクザに取立てされる側の立場となってしまった。
149 金バッチ
債権ではなく何を勘違いしたのか、10億の土地の契約書に8億もの値段を付けて買い取った男が
居た。俺は白昼堂々、契約書を買ったイナムラ会のアサクラと名乗る男達に拉致される。

拉致された現場から、辛くも逃げ出した俺の目の前に、白銀さんが現れた。親分がヤクザには
ヤクザをという考えの下、俺は親分の若い衆となり、アサクラの取立てを逃れることとした。

「ボス、ヤクザになっちゃったってことですか?」
「そうとも言うね…」
「それは正社員ですか?社会保険とか厚生年金とかあります?」
「シズカちゃん…とりあえず帰ったらパパちゃんの傷の手当してくれる?」
「あ、はい」

帰宅するとマコが結と自分の娘のアイを面倒見ていた。
「おかえり。ボスどうしたの?」
「いろいろあって、階段から述べ200段くらい落ちた」
「スタントマンになるの?」
「あんでもねーよ。結たん、おいで」
ちょこまかと結が俺のところに来た。抱き上げてキスをする。

「マコちゃん、ボスがヤクザになったんですって」
「はあ?」
インターホンがなる。
「アイちゃんのパパが来たよ」
「イシハラ?」

「ボス、おはようございます。アイと結たんにアイス買って来たよ」
「おはよう」
「あれ、ボスどうしました?」
「スタントマンになるんだって」
「やかましい」
「ボス、まさか…」
「今日、店か?」
「はい、でも大丈夫です」
「テラス行くか」
「はい」
リビングでビールを2本持って、2階へ上った。ルミとヨウコの部屋を通り過ぎるとテラスに出る
階段がある。ビーチチェアーとテーブルが置いてあるテラスでイシハラと話した。
「拉致されて、親分のところの組員になって白銀さんの舎弟になったってことですか?」
「かなり解釈が短縮されてるが、間違ってはないな」
「俺もボスと兄弟分に!」
「そんなの昔っからだろうが。お前はカタギでいないと絶縁するぞ」
「そんな…言ったはずですよ。俺はボスに煙たがられても、そばを離れないって」
「イシハラ…素直に言うとさ、いつでもどんなときも、俺をことを信じているお前がそばに
 居るってのは、嬉しいよ。支えにもなり励みにもなる。でもお前をヤクザにしてしまったら
 俺は一生後悔すると思う」
「ボス…」
「お前は俺が託した店を見てもらう。俺が困ったら必ず、1番にお前に連絡するから」
「必ずですよ?」
「俺とお前は、一蓮托生だって言ったろ」
「俺もそう思ってるっす」
「俺がもしものときは、シズカと結を頼む」
「そんな!」
「バカ、今すぐじゃないよ。もしもだ」
「ボスにもしもは無いっすから」
イシハラは涙を拭って、缶ビールを飲み干した。

「小松とは連絡取ってるのか?」
「毎日、連絡来ますよ。ボスはどうしてるって」
「何だあいつ。直接、連絡して来ればいいのにな」
「裏方から支えるって、ボスから何も声が掛からないから、焦ってるんじゃないっすか?」
「ハイエナジーのみんなは元気か?」
「スタッフ達もボスが居なくなって、しゃかりきにやってますよ」
「そうか。頼んだぞ」

翌日の昼頃、白銀さんから事務所に来るよう連絡があった。
「ご苦労様です」
「おう、組長室に来いよ」
組長室に入ると親分と若頭の白銀さん、組長代行のアンドウさん、本部長のサクライさんという
カマタ組の最高幹部の面々が揃っていた。
「マイカワマナブです。よろしくお願いします」
「マナブ、杯事はしないから、とりあえずこれ持ってな」
親分から、イナムラ会の代紋の金バッチを渡された。
「基本的には義理事って言って、組織の冠婚葬祭と会合にしかバッチはしない」
「はい」
本部長のサクライさんが口を開いた。
「幹部会で話し合ったんだが、今までの組への貢献度は、かなり高い。現在でもマナブからと
 いうことで5店舗から15万のシノギと、若い衆へ月に150万のシノギを入れてもらってる。
 親分にも給料を払っていてくれたとか」
代貸のアンドウさんが続いた。
「マナブの毎月の義理掛けは無しとし、組事務所の事務局長の役職を与えることとした」
「今まで親分に仕えてきた方から、クレームになりませんかね?」
「組員でマナブのことを知らない者はいない。みんなどこかでお前に助けてもらってるからな」
「今、金貸しで10人の組員と300万を折半しております。150万私の取り分があります。それを
 事務所に入れさせてもらいます」
「お前1人で毎月そんな入れるのは、大変だろう」
「でもみんなシノギが大変だと思います」
「分かった。とりあえずお前も生活があるだろう。100万入れてもらうようにするよ」
「はい。あと親分?」
「どうした?」
「俺の車なんですが…」
「気にするな。そのままマナブが乗ってろよ」
「いいんですか?」
「金庫番も任せるよ。お前は、俺や白銀をはじめ、組員から信用がある」
「ありがとうございます」

「とりあえず、新宿一家のアサクラに連絡を入れてくれ」
親分がそういうと本部長が連絡を取った。
「親分、出ました」
「世田谷一家で執行委員長をやってるカマタという。うちの若い衆でマイカワマナブってのを
 可愛がってくれたってのは、テメエか?」
「あ?契約書?何で契約書なんかでキリトリ出来んだ?テメエも渡世人だったら、相手見て
 から筋通せよ」
親分は一喝すると電話を切った。
「もう大丈夫だろう。マナブ、お前はもう俺の子だ。何があっても俺が守ってやる」
「ありがとうございます」
白銀さんがにっこりして、頷いた。

「ユウイチ」
「はい!」
「事務局長のマナブだ。名刺発注してやれ。あと事務所の鍵と金庫の鍵を作って来いよ」
「局長っすか。いきなりすごい出世ですね」
「何言ってんのよ。俺は出世なんかどうでもいいんだから。組の為に頑張るよ」
ユウイチに事務所内を案内してもらった。
「ここが局長の椅子です」
立派な革張りの椅子が俺の机らしい。その前に2人の若い衆が座っていた。
「局長、よろしくお願いします」
「ああ、みんな元気してた?久しぶりだね」
「局長、名刺発注して合鍵作って来ます」
「あ、俺も行くよ」

俺とユウイチは、商店街へ名刺の発注と合鍵を作りに向かった。

立場がかなり変わったが、自由が丘の街で今後も暮らしていけることに、少し幸せを感じた。


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