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イベントの効果は絶大だった。そして次長の腕は鈍ってなかった
14 次長
ユミさん引退記念カウントダウンイベントはキング史上空前の売上をもたらせていた。
毎日が週末のような売上を記録し、待合室はキングの客で店内に劣らず満卓だった。

店内の空きスペースにはユミさん宛ての花がたくさん飾られていた。

ユミさんは自分の指名客にヘルプや同席した女の子を全て紹介していた。この行動には、
一同脱帽だった。去っていく人間が残る人間にここまで面倒をみるのかと思うのが普通だ。
そこはさすがユミさんだ。自分の指名客をキングの女の子を紹介してくれている。

「支配人、ユミさんすごいっすね。今月マジやばいくらいのペースの売上ですよ」
イシハラのボーイ長の歩合は他店の主任長以上の歩合が出ていた。驚くのは当たり前だ。
「来月売上が下がらない様にしなきゃいけないな。これもユミさんからの試練だ」

終礼が終わり、スタッフが掃除や明日の段取りをしている時、次長が店に入ってきた。
「彼女には俺もずいぶんと助けてもらってるからな。俺も一肌脱ぐか」
普段は3店舗を統轄してフロント業務をしており、店内にはほとんど居ない次長が話した。

週末、早い時間からユミさん効果で店内は満卓だった。突然スポットライトがユミさんを
照らした。
「当店フロアキャプテンのユミさんですが、みなさんもご存知の通り今月を持って退店と
 いうみなさんが喜ぶ展開となってしまいました」
「喜んでんのかい!」
いきなり始まった次長のマイクパフォーマンス。フロアが盛り上がる。ユミさんも思わず
ツッコミを入れる。
「私とユミは1号店からの付き合いでして、面接をしたのがつい数分前のように思えます。
 オッサンのユミヒストリーを喋らせてもらってもよろしいでしょうか?」
フロアは異様な盛り上がりを見せる。
「それでは…」
次長のマイクパフォーマンスが始まった。
「履歴書を見るとあの水商売訓練学校と名高い都立高校を大変優秀な成績で中退しており、
 ドラフト1位、契約金0で当店へやってまいりました」
さらに次長はまくし立てる。
「店ではいくつと自称しているか分かりませんが、もう20年も前のことで記憶も曖昧です」
「そんな経ってないわー」
ユミさんも乗っかってくる。
「あの頃から初々しさの欠片もなく、化粧の濃さは今以上でした」
「生まれたばかりの頃から母乳代わりに水割りを飲み、水商売養成ギプスをつけ、割り算
 が得意だったのか、水割りの濃さは絶妙な割合でした。」

「ここに居るユミのおかげで当グループは発展したと言ったら過言です。それは言い過ぎ
 でございました。全て私の努力でございます」
「しかしそんなユミさんも今月で退店してしまいます。美人薄命です。店ではもう会えなく
 なってしまいますが、残念ながら長生きはするでしょう」
「ユミさんもやがては、若くしてやり過ぎた酒やタバコで声はかすれ、おっぱいは下がり
 乳首は地面を見、お尻も垂れ、上るのは血圧と生理だけです。それでもクラブキングの
 ユミは永久に不滅です!」

「今まで騙され…失礼。応援して下さったお客様1人1人に感謝致します。と本人も思って
 いるかどうかはさて置き、今後もクラブキングをご愛好頂きます事をお願い致しまして
 私から最大の功労者であるユミさんへのお別れの言葉とさせて頂きます」
すごい歓声だった。ここでフロア中にこっそり渡してあったクラッカーがあちこちで大きな
音を出して、カラフルな紙を飛ばしていた。

「最後にもう一言。誠に残念ながらユミさんはあと二週間は辞めません。逢いたくなくても
 出勤してきます。残りわずかな日数ですが、当クラブキングでお楽しみ下さいます様、
 お願い申し上げます」

「ご清聴ありがとうございました」

ユミさんは少し引いたが、客、女の子やスタッフは大盛り上がりだった。イシハラだけは
パニック状態だった。30分以上、次長のマイクパフォーマンスで女の子の移動が一切出来
なかった訳だ。

「次長すごいですね。アドリブですか?」
「丸二日間、考えていたよ。盛り上がって良かったよ」
そういうと次長はフロントへと戻っていった。

閉店40分くらい前だろうか、イシハラが2名入るとの連絡がフロントから入ったと言う。
「近藤!1卓スタンバイ頼む」
俺が近藤に指示してすぐに2名が来店した。ボーイ達が大きな声を出す。
「いらっしゃいませ!」
何とユイが友達と思われる女の子と店に来た。
「おはよう。店はどしたの?」
「おはようございます。暇だったんで早退してユミさんに逢いに来たんですよ」
ユミさんとユイは知り合いだったみたいだ。ユイはもちろんユミさんを指名した。

「支配人、リストまで」
イシハラが俺をリストに呼ぶ時は何か困っている時だ。
「どした?」
「ユミさん回せないっすね。8卓掛け持ってて今が限界ですよ」
「ユミさん呼んで」
「ユミさんリストまでお願いします」
ユミさんに事情を説明した。
「お金要らないから飲んでてって感じでもいいかな?」
「いいよ。店終わったら飲みに行くから支配人が接客してて。今ユイに言ってくるから」

「じゃ支配人頼むね。私の後輩なんだから」
そう言うとユミさんは別のテーブルへ戻っていった。
「ユイちゃんすいませんね。ビールでも持ってきましょうか?俺が持ちますよ」
「ユミさん8卓ってすごいね。じゃせっかくだからもらいまーす」
「支配人、リストまで」
「今ビール持って来させるね」
この前話せなかったから、ユイと話そうと思ったのにイシハラに呼ばれてしまった。

「どしたー?」
「腹痛いんでトイレ行っていいですか?」
「行ってこーい!」

もちろんイシハラに悪気は無いだろうが彼のトイレは長かった…


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