警告
この作品は<R-18>です。
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上着のポケットにユイからもらった最初で最後のラブレターがあることに気がつく。ユイが書いている姿を想像すると涙が止まらなかった
129 ラブレター
俺はユイを看取った。警察で諸手続きをした後、マンションに帰ってきた。
「ボス、本日の13時、墓地を契約したところのお坊さんが来られます」
「悪いな。何から何まで」
小松が、俺の意向通り、横浜で墓地と坊さんまで用意してくれた。
小松が店に集計へ、イシハラとマコはシズカの部屋でルミとヨウコは自分の部屋に仮眠しに
行った。シズカはまだ1度も仮眠を取らずに線香の火を見守っていた。
「シズカも休めよ」
「はい。でももう少し居させてください」
「分かったよ」
ソファに腰掛けたとき、上着の内ポケットに観覧車でもらったユイからの手紙を見付けた。
「愛するマナブくんへ」
「これを読んでいるときは、ユイはもうダメだと思うの」
「自分の体は自分が1番分かってるから」
「いつもずっと一緒に居てくれてありがとう」
「でもユイのことはお願いだから忘れて」
「あなたはまだ20歳でずっとユイを想っていてくれるのには、残りの人生長過ぎるから」
「本当にあなたのお嫁さんで幸せでした」
「また今度も夫婦になろうね」
「さようなら」
手紙のところどころが波打っており字が滲んでいるところがあった。きっとユイの涙だろう。
最後の『さようなら』の文字は、いつものユイの文字ではなかった。悲しみで体が震えたのか
病気がユイを震わせたのか。
「忘れろか…ユイ、辛かっただろうな」
手紙を書いているユイの姿を想像すると号泣してしまった。
「ボス?」
前のめりになってうずくまる俺を、同じように号泣しているシズカが抱擁した。
「人生にはこんな悲しい想いをするときもあります。でもあなたの喜びや悲しみは、全て私も
同じように感じるんです。私がずっと一緒に…そばに居るから…だからもう泣かないで」
「え…?」
過去にユイが俺に言ったセリフと、シズカ言ったセリフが類似していた。思わず顔を上げ、
シズカの顔を見た。
「シズカ…今のセリフは?」
泣き止んだ俺は、体を起こしてシズカの両肩を持って問う。
「私…今の気持ちを言っただけです…」
「そうか。お前には悪いけど、今シズカがユイの声に聞こえたよ」
「ううん、悪くないです。ボスが泣き崩れているところ、見たくなかったから」
俺は、ユイの前で初めてシズカを抱きしめた。
「シズカ、本当にありがとうな」
「ボス、私をユイちゃんの替わりなんて思えないのは分かります。ユイちゃんを忘れてとも
言えません。でも私をそばに置いといてくれませんか?」
「気持ちだけもらっとくよ」
「ユイちゃんの遺言だから、こう話してる訳じゃないです。添い遂げたいだけです」
「シズカ、お前の気持ちは嬉しい。でもね、まだ今の俺は、ユイじゃなきゃダメなんだ」
「ボスが私を見てくれる日まで、待ってますから」
「ありがとう。俺もシズカが居るから、狂わずに平静を保ってられるんだよ」
リビングのドアの方で物音がした。
「入って来いよ」
「すいません。聞くつもり無かったんですけど…」
「いいよ、お疲れさん。最終いくつだった?」
「157万です」
「分かった。あいつらだけでよく頑張った方だよな」
「そうですね。私も叱りはしませんでした」
「悪かったな。今日はバタバタさせちゃって」
「いいんですよ。ボスに比べたら俺なんか大したことしてませんから」
イシハラが起きてきた。
「小松さん、休んでよ。俺、少し寝れたから」
「分かりました。仮眠しに帰宅しますね。ボスをお願いします」
「お前らありがとうな。俺は大丈夫だよ。風呂入ってくるよ」
「30分以上入ってたら、確認しに行きますからね」
「分かったよ。シャワーだけだからすぐに出るよ。線香頼むな」
「分かりました」
「昨日はユイと風呂に入ってたんだな…」
シャワーを浴びながらそんなことを思い出していた。出逢ったときのこと、初めて手を繋いだ
ときのこと。初めてのキスやプロポーズ、1つ1つ思い出していた。
「思い出って尽きちゃうのかな…」
ユイとの思い出の中で、観覧車までを思い出した。もうこれで思い出が尽きてしまうと思うと
涙が止まらなかった。
あまり長い時間、シャワーを浴びているとイシハラが様子を見に来てしまう為、風呂を出た。
「もう!ボス遅いっすよ。今見に行こうかと思ったとこです」
「ああ、すまない」
「ボス、お坊さんが間もなく見えられるそうなので、喪服に着替えてください」
「寝室に用意しておきました」
「ありがとう」
仮眠していた、マコ、ルミやヨウコ達が起き、小松が戻ってきた。
「ボス、お客さんが見えました」
「客?断ってくれないか」
「今のボスには必要な方達です」
強引にイシハラに促され、玄関へと向かった。
「大変だったな」
「社長!みんなまで…」
そこには社長が立っていた。キムラやコダマ、ユミさんまで来てくれていた。
「密葬って聞いてる。イシハラが連絡をくれてな」
「すいません。俺が連絡出来る状態にありませんでした」
「何て声掛けていいか、わかんねえよ」
「みんな、ありがとう。最後にユイに逢ってくれよ」
みんなをリビングへと招き入れた。
ユミさんはユイの棺にしがみつき、号泣していた。社長、キムラやコダマも涙を流していた。
「白血病だったんだ。ユイは最後の最後まで俺に言おうとしてなかった」
「白血病…治療の余地はなかったのか?」
「ああ。ユイの低血圧と低体重が手術や抗がん剤に耐えられないって言われたらしい。ユイも
そのときダメだって悟ったみたいだ」
「そうなのか…」
「お前に死のカウントダウンをさせたくないってことなんだろうな」
「ユイもそう言ってました」
「ボス、お坊さんがお着きです」
坊主とのやり取りも今後の段取りも、イシハラと小松が全て仕切ってくれた。
通夜は静かに執り行われ、明日の葬儀に備えた。引き続き、社長達が残ってくれた。
「シズカ、店の方は大丈夫か?」
「明日の閉店時まで行けない旨、説明して指示は出してあります」
「じゃボス、俺は店に顔出してきますね」
「おう、頼むよ。イシハラと早番と遅番で交代してやってくれ」
「分かりました」
ユイは灰となり、土に返った。
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