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1 入店
16の頃
俺は生まれ育った街を飛び出した。
夢や目標があった訳もなく、伝手がある訳でもなく
ただ街を出て東京に向かった。

何のアテもなく新宿の街を歩いていた。

何気も無く目があった男が俺に近づいてきた
「よう田舎者!仕事探してんだろ?うちの店に来ねえか?」
こいつは一体何者だろう。
しかし田舎者である事と仕事を探している事は当たっている。
「そうなんだろ?そんなオーラ出してるぜ?」
「仕事はなんだ?」
「キャバクラの店員だよ。歳も学歴も関係ねえよ。やった者が出世すんだよ」
年功序列じゃないところはこちらにとっても好都合だ。

駅からしばらく歩いたところに店舗がいくつも入っている雑居ビルがあった。
暗い階段を下りていくと男はドアを開けた。
「おはようございます」
事務員が2人、男に向かって挨拶をした。
男は応接室に俺を通すと名刺を差し出してきた。
ボーイ長?佐藤…。
「じゃ面接するからこの履歴書に記入してくれよ」
中卒だが高卒と書いて歳を18とごまかして記入した。
「マイカワマナブ?まなぶでいいか」
佐藤は履歴書に目を通しただけで仕事の説明をし出した。

朝の出勤は18時から、営業は20時から26時まで。その後、掃除や売上計算等を
すると言う。
仕事内容は出勤してから店内のスタンバイと買出し。アルバイトや新人は通称
「ステカン」という電柱などに括り付けてある看板を取り付けに行く。
20時までに食事も摂るとの事だった。
営業中はフロアでボーイ業をしたり、カウンターで洗い物をしたりと居酒屋の
店員と変わりない仕事のようだ。
「まあこんなとこだな。次は給料面だな」
続いて佐藤が説明をした。

アルバイトやカウンター専門の人間は時給制。ボーイが18万、ボーイ長が20万、
主任が23万、主任長が26万、支配人が30万で店長が35万との事だった。
水商売って華やかだけど稼いでいるのはやっぱり女だけか。
「この歩合ってのがやる気出るんだよ」
佐藤が続けた。
日々の売上に歩合があるとの事だった。30万の売上で主任、主任長が1000円、
支配人が2000円、店長が3000円。
40万でボーイ長が1000円で主任、主任長が2000円、支配人が4000円、店長が
6000円。
50万の売上で社員は全員、歩合が出る。ボーイが1000円、ボーイ長が2000円、
主任、主任長が3000円、支配人が6000円で店長は9000円。
これが一週間で締め切られ、週末に支払われるというシステムだった。
仮に店長が店休日を除く6日間で、日々50万の売上があった場合、54000円もの
ボーナスが支払われることになる。これが4週あったとして歩合給が21万超と
基本給の35万で56万ということになる。
佐藤の話だと1日の最高売上は87万だったらしい。
この他にスカウトや月間売上に対する達成賞も出るらしい。

確かにやる気の出るシステムだ。

「まだ時間早いから寮でも見に行くか」
寮完備とは助かる。俺と佐藤は早速、寮を見に事務所を出た。

繁華街から少し離れたところにマンションがあった。3LDKですでに2人入居して
いるとの事だ。
「ここに入ってた奴はキレイ好きだったから汚くないだろ?」
確かに小キレイにしてあった。トイレと風呂を見せてもらったが男所帯にしては
キレイにしてあった。
佐藤は木村と児玉を紹介してきた。2人ともここ1〜2ヶ月前に入店してきたとの事
だった。
「同期なんだから仲良くしてやってくれな」

そして初めての仕事が始まった。




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