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川村郁子の薔薇十字―――そこに込められた意味。そして、二人の愛……
第40話 君は川村先生を愛していたんだ
「いい先生でしたよ、川村先生は」
少年はポツリポツリと語り出した。
「男勝りなところのある女でした。英文学を専攻していた川村先生はイェイツにも詳しかった。それが僕と彼女の接点だったのかも知れない」
少年の表情に感傷の翳がよぎった。
「文学、美術、音楽―――それに心理学や隠秘学……いろいろなことを先生と話しました」
少年は向坂から目をそらし、視線を伏せて身をよじった。
「だけど、同時に葛藤もあった。先生に甘え、依存しながらも、どうしても心を許せない自分がいました」
「君は転移を起こしていたんだ」
向坂は少年に告げた。
「君は無意識的な母親像や何らかのファンタジーを川村先生に投影し、愛情の葛藤を再現していたんだ―――それが君と先生の無意識的生活に影響を与えた」
「川村先生……」
少年は恩師の死を悼んでいた。
今までには見られなかった弱気な表情―――苦い初恋の終わりを思わせる、それ。
「君は川村先生を愛していた。私の目にも彼女は魅力的に映った。君のお母さんと同じように―――」
向坂は少年の目を覗き込んだ。
「……母」
少年の唇がかすかに動いた。
「そうだ。お母さんだよ」
向坂はすかさず少年の背後に回りこんで囁いた。
「そろそろ本当のことを話してもいいんじゃないのかね? お母さんも川村先生ももういないんだ。誰にも迷惑はかからない」
向坂は猫なで声で言った。
「感じていたんだろう? 性的な魅惑を―――あの二人に」
「川村先生とはそういう話もしました」
少年は抗わずに答えた。
「恋とか性とか―――夢の中の出来事とか」
「ほう、夢分析?」
「はい」
少年は頷いた。
「僕が夢の中で犯したサディスティックな行為、性的な倒錯―――聞けばどん引きするような猟奇的なエピソードの数々を」
「性的なディスカッションは性欲を代理的に満足させようとするものだ」
向坂の瞳がその色を深めた。
「君たちはそうやって互いの性欲を充足していたんだよ」
羽田野圭吾と川村郁子―――教え子と教師、そして転移された母親像……
その無意識の愛―――
第40話 終
私も高校時代に担任教諭と夢とかユングとかを語っていました……。
あまりに素行に問題があって、先生に英研に呼び出されちゃったんです。
そんなこともブログの記事に書いておきましたので、よければどうぞ<(_ _)>
記事はこちら→ http://risako-novels.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-e798.html
知的な議論という装いの元に隠されていた無意識の性愛。少年の「夢」に秘められた真実とは……
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クリヤマアイコさんある意味、一部JCの間で囁かれた都市伝説です……