警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
あいつに見放され、俺は薫に手を出した!だが、薫も去っていった。類い希な美少年達が「俺」のやうな男の餌食になった・・・俺は哀れな天から降りてきた者達の狩人・・・もういい。十分幸せだった・・・Bye Bye Love, Hello Loneliness...かなりのエロティックシーンあり。
後編
プラスティックらぶ・エピソード 後編
あいつと薫が去った後、俺はがらんとした部屋に戻った。
世の中には「マーフィーズ・ロー(マーフィーの法則)」と呼ばれるものが有る。「考えられる悪いこととは全て起こる」というのが俺の解釈だが、それはよく当たった。人間、最悪の事に常に備えなければならない。衝動で買ったパンツが見つかり、喧嘩の発端になった薫が俺の下宿に来た。
俺は慎重にこれから起こる可能性があることで起こってはまずいことを並べてみた。
薫がまた来ること。
俺が薫に「何時でも来い」と言ったことがあいつにばれること。
あいつがやけになって誰かに鞍替えすること。・・・
最後の事態は一番可能性が低いと思った。あいつが一番肌に合うのは俺だ、という自信があったからだ。俺はあいつの体の全てを知っている。黒子の位置から幼いころについた傷もだ。
夜中になった。あいつは帰ってこない。携帯に電話したが電源を切っている。俺は酒を飲みながらあいつを待っていた。心配だったが、薫は帰した訳だし、話せば分かると信じていた。真夜中を回って俺は睡魔に襲われた。
明け方俺は物音に目が醒めた。まだ薄暗かった。寝室を出ると、あいつが居間の隅に置いてあったスポーツバッグに屈み込んでチャックを閉めている。バッグのショルダー・ベルトを肩に掛けて振り向いて俺を見た。冷たい目だ。立ちすくむ俺に、
「俺・・・明日から合宿に行くから、当分会えない!」
「えっ?・・・ま、待ってくれ!ど、どこに行くんだ!いつまで?」
俺は必死だ。
「・・・薩摩大と合同で鹿児島ストラングラーの施設を借りるんだ。帰るのは2週間後さ」
2週間!俺にとっては悠久といっていい時間だ!
あいつは俺の表情を見ていたが、ぷいと横を向くと俺の脇をすり抜けて戸口に向かった。ジーパンの足にバイクスーツ用のブーツをつっかけた。俺は裸足であいつを遮って戸の前に立った。
「・・・ま、待てよ・・・」
あいつは首を傾げて俺を上目で見る。薩摩大といえば、大学リーグ中、最大の強豪の一つだ!それに薩摩といえば、明治まで男色が盛んだったと聞いたことがある!それが大学に連綿と伝わっていたら!相手がその気が無くともあいつの可愛さに魅了されたら!
「か、薫とは何も無いから!」
あいつの顔に怒りの影がよぎった!だが、俺は伝えたかった。
「あれから彼は帰ったんだ!」
「・・・可愛そうに。あんた(、、、)に教えにもらいに来たんだろ!それなのに帰したのか!」
言葉に詰まった!言い訳をしようとすればこう言われる!あいつが怒ると、状況の全てがあいつの攻撃材料になるのだ。
「・・・また戻ってくれるんだろ?」
俺は聞きたいことを口に出した。俺には駆け引きは出来ない。
あいつは目を逸らして、
「さあね。考えるよ」
「あんなに愛し合ったのに!俺が好きなんだろ!」
あいつはかすかに笑って、
「俺たちは男同士だろ。いくらお前が好きだって言ってくれても、子供を産める分けじゃないし、今にお互いに邪魔になるよ。もうここらへんが限度じゃないか?俺にあんな格好をさせれば、あれ以上はセックスで興奮出来ないだろ」
あいつは俺と初めて会ったとき俺の小説の「契り」の話を聞いて涙を流した。だが、現実に置き換えたとき、あいつにとってはやはり絵空事なのだろうか!俺はかっとなった。
「いいか!戻ってこい!」
あいつはびくっとして俺を見たが、聞こえなかったやうに出て行った。あいつの頬に髪がかかった怒った妖艶な横顔を俺は見送った。
俺は大学で「レーモン・ラディゲ」の作品の評論に関する輪講を主催していた。そこに薫がいた。薫は俺を見ると、不機嫌そうに顔を逸らした。
輪講が終わると俺は調べものをするため、大学付属の図書館に行った。あいつがいない2週間をどう過ごすか、あいつが俺のところに戻ってくれるか、俺は不安になった。暗澹たる気分だ。
個室が空いていたのでそこに入った。小説はあいつに会ってから筆が進んでいない。あいつとの愛の生活の方が今は重要だった。だが、卒論もそろそろ用意しておかねばならない。給料が良い会社に就職して、あいつと暮らして一緒に海外旅行ぐらいは出来る様にしたかった。
あいつはサッカー選手としては背が低い。高々、165センチの上背のあいつが平均身長190センチといった内外の選手相手に歯が立つとは思えない。あいつは行き詰まるだろう。だが、俺はあいつに好きなことをやらせてやりたい。経済的にサポートしてやりたい。俺は現実に負けて、作家になる夢を後回しにしていた。
個室のドアを叩く音。開けると本やノートをいっぱい両手に持って薫が立っていた!
びっくりする俺を見て、
「・・・教えてくれるんだろ?ここなら良いよね?」
俺に断る理由がなかった。
薫は資料を4人掛けの小テーブルに置き、俺の前に座った。俺は気まずかった。
だが、薫はおずおずと質問を投げかけて来た。この間、起こったことは気にしてない様だ。俺が答え、資料を示唆する。薫がそれを読んで次の質問を考える間、俺は自分の作業をする。
予想とは違って、なにか自然に時間が流れて行く。薫の存在が気にならなくなった。薫の醸し出す雰囲気が、どこか女性的で気分を落ち着かせてくれるのだ。
ふと薫を眺めると、あいつに劣らぬ美形であることが分かる。艶やかな黒い長髪は肩に流れ、気の強そうな細面の眉と高い鼻、端が笑う様に切れ上がった口。形の良い手と指。大学で見る薫はいつも数人の女の子に囲まれていた。
あいつといい薫といい、神様は公平じゃないと恨み言を言いたくなる。恵まれた容姿に才能。薫はバイオリンで日本のなんとか賞というのを取ったことがあるそうだ。
日が暮れる頃、俺たちはうち解けていた。別に俺に気があるとか、そういうことでは無いようだ。俺の下宿であいつと鉢合わせしたとき、俺のことを恋する乙女のように見ていたと思ったが、所在なさげな薫の表情を俺は勘違いしたのだらう。
一緒に図書館を出る時、俺の孤独感は一時癒されていた。だが・・・また一人で下宿に戻れば・・・
「林太郎さんは合宿なんでしょ?」
薫は俺を見上げた。
俺の心臓が疼いた!
薫の流し目、濡れた唇!やはり俺は男色家だったのだろうか!
俺の賤しい下心が打算を始めた!あいつがもし、戻らなければ・・・薫はその穴埋めに十分すぎる・・・ああ、俺は本気で考えていた!
俺は笑いながら言った。下卑た心を隠して。
「俺の下宿に来るかい?」
「今度は追い返されない?」
俺は破廉恥男に成り下がっていた。
「・・・ああ」
下宿に着くと、薫はあいつと同じやうに流しを片づけ始めた。あいつが合宿にいってから3日経っていて、料理を作れない俺は総菜屋から買ってきては飯だけ焚いて、使った食器は流しに放り込んでいたのだ。
3日の間、俺は不安で自慰をするでもなく酒を喰らって眠気を誘っていた。
薫の女性のやうな妖艶な後ろ姿に、溜まった性欲がじりじりと俺の下腹部を焦がしていた。
俺は薫の後ろに身を寄せると肩を抱いた。薫の体がびくっとする。俺は薫のうなじに髪の上から口を付ける。薫の息がせわしくなりじっと耐えているやうだ!
薫をくるりと回して、後ろの髪を掴み上を向かせる。俺の顔が接近する。
「・・・承知で来たんだろ?」
薫は浅く息を突き答えない。恐れているのか?
俺は遂に薫の口に俺の口を合わせた。
俺の打算はこう叫んでいる!
もうあいつは戻らないんだ!あいつは俺に飽きたんだ!あいつは俺を狂わせて、飽きたら他の男を捜すやうな『淫売』だ!薫をものにしろ!あいつに見せつけてやれ!せせら嗤ってやれ!だうせ終わりなのだ!せめてあいつより薫の方がいい、とあいつに見せつけてやれ!
俺は薫を俺の虜にすべく計画を立てた。まず、薫の性感帯を探した。裸にしてベッドに連れて行って口から、首、乳首を嬲る。やはり乳首は敏感だった。
「オナニーするのか?」
薫は恥ずかしさうに頷いた。
林太郎は俺に会う十八までオナニーをしたことがなかった。女に淡泊だった、ということは男として性的に奥手であり、やはり俺があいつのゲイとしての性向を開いたのだ。
薫は女と寝たことがあるという。だが、その容姿を保ち、俺なぞが見てもそそられるということは、中性的な魅力を持っていることを自ら受け入れているということだ。その証拠に俺とこうして肌を合わせている!
薫の臍、下腹に口を沿わせる。薫の息が荒くなりペニスが勃起する。ペニスの裏を舌でなぞる。毛が全くない腿が締まる。汗と微かな尿臭と淫靡な下着の中の匂い。尿道口を開いてに粘膜に舌をなぞらす。薫が声を上げて仰け反る!
俺はあいつの体から学んだをとこの体の秘密を全て薫に試そうとしていた!
腿を揃えさせて持ち上げ、薫の肛門を臀部の肉を広げながら舐める。薫の口から泣き声が漏れる。きれいに洗ってあるのか糞臭はない。
金子光晴の小説に、舟で出会った中国人の女の肛門を嬲り、手の臭いを嗅いで糞臭があった、という話があったのを思い出した。なぜ金子がそんなことを書いたのか、未だ謎だが、自分の心をさらけ出しながら『歴史から退場していった詩人』にとっても、肛門性交に対する興味は古今東西、常にさかりのついた人間としての業だったのだらう。
そして読者が信じるか分からないが、俺は決して男色家ではないのだ!俺はあいつと会うまでは女性と何度もつき合っていた。
ただ、心臓を鷲掴みにされたのはあいつが初めてだったが。遠い昔からあいつの魂を追い続けていた『業』のやうなものを感じたのだ。
俺は薫を四つん這いにして、ジェルを薫の肛門と俺のものに塗って、後ろから慎重に挿入していった。
痛みを出来るだけ与えないようにゆっくりと。
薫は息を殺して耐えている。
そして根本まで入ったら薫の背中から体全体を密着させ、優しく体を起こしてやる。髪の匂いを嗅ぎ、うなじを吸い、顔をこちらに向けさせ目、鼻、口にキスをする。最後に深く口を吸い舌を吸う。薫はうっとりと顔を上気させている。すでに男同士のセックスの快楽を味わい始めているのだ。
「はじめてか・・・?」
薫は気怠そうにこっくり頷く。俺はゆっくりと腰を動かして行く。
・・・・・
薫は俺の胸に頭を付けて寝息を立てている。完全に俺のものにしてしまった。
朝起きると薫はすでにシャワーを浴び、台所に立っている。寝ぼけた顔で寝室から覗く俺を、笑って見る薫に「あいつ」の姿がダブった。
俺はなにを夢見ているのだ。彼らのやうな『神に愛された』連中が何故、俺のやうな“ダサイ男”の前に現れるのか?
これはもてない神様が書き下ろすあり得ない小説の世界なのではないだろうか?
薫が作ったブランチのスクランブル・エッグとパンケーキをたっぷりとした蜂蜜で食べる。昨日、夕飯を一緒に食べてその後、買い物をしたのだ。スーパーマーケットで薫の後についてカートを押していると、確かにあいつの『不在』は充たされていた。
コーヒーの匂いが食欲をそそる。薫が真剣な目で俺を見た。俺はフォークを口に運ぼうとしてそこで止まった。
「・・・僕、来週にウイーンへ行くんだ」
「えっ?・・・オーストリアの?」
「バイオリンの学校に入るのさ」
俺は絶句した!
「そこでプロを目指す。だからもう日本には帰らないかも知れない」
俺はまた失うのか!
「だから、その前に好きな人に告白したかったんだ!日本での最後の思い出に・・・」
俺は力無くフォークを皿に戻した。
「林太郎さんには悪いことをしたと思うけど、これは二人だけのひみつにしよう!」
俺は呆けたやうに頷くしかなかった。
次の週に俺は薫を空港に送りに行った。大勢の人達が出発ロビーに集まって彼を祝福していた。一人一人に挨拶をしていた薫は最後に俺の所に来た。手を差し出した。
「大介さん。お互い夢を果たしたらまた会ってくれる?」
俺の夢は小説家として身を立てることだ。もう無理かも知れない。
俺は無理に笑って頷いた。
あいつが合宿に行ってから2週間経った。俺はあいつがこちらに帰って来たのかも分からなかった。携帯に何度も電話したが、あいつは自分が掛けるとき以外は電源を切っている様だった。
何回、俺が掛けたかは記録に残っているはずだ。それでもあいつは返事をくれないのだ。あの日の薫のことが、よほど頭に来ているのか?
これ以上、あいつを掴まえておける自信はもうなかった。
あいつや薫は自由に羽ばたける鳥なのだ。俺のやうな満たされない陰湿な猟師には、元来、捕まえることが出来ない気高い鳥だった。
俺は彼らを使ってさんざん薄汚れた性欲を満たした。もう良いのかも知れない。常人には考えられないくらいの幸運だっただらう。
俺は、悟ったやうな気がした。あいつも薫も本当の夢に向かって飛んでいるのだ。それを助けはしても、もう邪魔はするまい。彼らをリリースするのだ。俺の心は諦観に充ち、軽くなった。俺は俺の夢を目指そう。それに全力を尽くすのだ。
翌日、俺とH達悪友が『サッド・カフェ』で久しぶりに集まっていると、あいつがやってきた。ジーンズに揃いのジャケットをラフに着ている。もう肌寒いのに下は黒い丸首の半袖シャツだ。H達は大喜びで迎える。あいつは俺をちらと見たが、すぐ目を逸らしH達と歓談に入った。
それでも俺はあいつが間近で見られることに満足した。だが、もう心を乱されることはなかった。あいつを暖かく見守ってやる。これが俺の結論なのだ。
俺も歓談に加わり、あいつに冗談を言った。
「お前が居ない間、俺たちゃ死んでたよ。HがK子さんといちゃいちゃしすぎでね!」
あいつは俺の態度に少し驚いたやうだ。
Nがさらに言った。
「俺、来年結婚するぞ!」
そこから俺たちは大騒ぎに陥った。Y子さんという恋人が出来たという。Nは1浪なので俺たちより先に就職する。
そこから俺たちは祝杯を上げに街に繰り出した。
居酒屋のテーブルで、あいつは隅の俺の前に座った。俺たちは互いに向き合わず、横を向いて連中と大口を叩いて笑ったが、中盤でHとNがそれぞれの恋人に携帯電話を掛け、俺たちは代わる代わる彼女らと話し、祝福を贈った。その後二人は事態を収拾するため、水入らずで恋人と話すべく席を立った。Sは便所に行った。
残された俺とあいつは黙ってグラスを傾けていた。あいつが口を開いた。なじるような口調だ。
「・・・薫ちゃんとはうまく行ってるの?」
「彼はバイオリンの勉強でウイーンに旅立ったよ・・・」
「見送りに行ったんだ?」
「・・・あ・・ああ」
あいつはグラスを見て黙った。
俺とあいつは終電に乗っていた。お互いに一言も交わさない。だが、俺はあいつを時々見ていた。あいつがそれに気づきこちらを見ると、俺は目を逸らした。もう一度見るとあいつが睨んでいる。俺は微笑んでウインクした。
列車の外は雨が降り出していた。
長沢に着くとあいつは、
「さいなら!」
と振り返らず降りた。俺は閉まったドアの硝子越しにあいつが見ていないのに手をゆっくり小さく振った。
階段を下りようとするあいつが立ち止まってそれに気付いた。あいつの姿が遠ざかった。俺はサイモンとガーファンクルの歌を口ずさんでいた。
”バイバイ・ラブ!
バイバイ・ハピネス・・・ ”
びしょ濡れになって下宿に帰ると、俺は鼻歌を歌いながらシャワーに入った。ビートルズの『For No One』だ。
”あいつの目にはもう俺が映らない
涙の中には愛のかけらも無いんだ・・・
もうあいつは俺を必要としてないから”
シャワーから出て、さらに自分を酔わそうとビールを冷蔵庫から出し缶を開けた。振り返ると薄明かりの居間に誰か居る!
あいつだった!
稲光がした。
あいつは興福寺の阿修羅像の様に突っ立ち、怒りを眉に俺を睨んでいる。稲妻の瞬間、その背後に蠢く六臂の腕が見えたやうに思えた!俺は畏れた。
「ど・・・どうしたんだ!」
あいつは濡れた上着を脱いで、黒い半袖シャツにいつものぴったりしたジーパン姿だ。前髪が濡れ、頬に張り付いている。走って来たのだらうか、後ろ毛が盛り上がり、阿修羅の様な宝髻に見える。
(作者注−意味が分からない人は興福寺の阿修羅像の写真をご覧下さい)
あいつが雷の音とともに俺に叫んだ!
「薫を抱いたのか!」
俺はあいつともう争いたくなかった。もうあいつを追うのは止めたのだ。
「もう関係ないだろ・・・」
俺は卑屈に笑うと、さらに言った。
「ここにいるといつかみたいにまた乱暴するかも知れないぜ。俺は・・・変態のホモだからな。帰れよ」
あいつはびっくりしたように目を見開いて俺を見た!
しばらく黙っていたが、
「・・・どうすればいいんだ!」
「な、なにを?」
「・・・どうすればまた俺を抱いてくれる?」
今度は俺が驚いた。
「薫を抱いてもう俺が嫌になったんだろ?」
俺は黙っていた。あいつが自棄になった様に言った。
「分かったよ・・・俺はもう大介無しじゃ駄目なんだ。お前にこういう風にされたんだ。だから何でもするからよりを戻しておくれよ」
屈辱と卑屈の色が阿修羅の目に宿っていた。
「よりを戻す・・・?」
俺は余裕が出来てきた!また、あいつが戻ってきた!そうだらう!俺だけがあいつの喜ばし方を知っているのだ!
馬鹿な俺が、調子に乗って、後から思い出せば『わあ』と叫びたくなるやうな言葉を吐いた!
「俺が欲しかったら・・・いつでも抱いてやるぜ」
あいつは情けなそうな顔をして俺を見た!
ああ!だが、俺は思い出していた。
抱いても抱いても常に失うことに戦いていたことを。俺はだから諦めようと思ったのだ!
「いやだ!俺だけしか抱いちゃ!・・・だから・・・なんでもする」
あいつは唇を艶めかしく舐めた。あの性衝動だ!
だが、今激しく俺を求めてもそれが去ればまた離れようとする!今衝動を抑えられなくなっているあいつを、意のままにしようという圧制者の欲望が、むらむらと俺の中に湧き上がってきた!いくら抱いても俺の愛を疑るあいつに仕置きをしようとする陰湿な俺!
「どうすればいいか・・・お前がよく知っているだろう!」
あいつは目を瞬いて俺を見た!そして濡れた服を脱いでいった。俺を淫靡な目で、時々ちらと見ながら。阿修羅が天から戻って俺にその肢体をさらけやうとしている!
寝室に駆け込んで洋タンスをひっくり返していたが、あのプラスティックパンツを見つけて居間に戻った。パンツを俺に恥ずかしさうに見せて、震える声で、
「・・・こ、これ良いですか・・・?」
あいつは自分からあの淫靡なパンツを履き、足を内股にして右の腰下でベルトを締めた!大きな腰と発達した腿が色っぽい。半透明なゴムの下にまだ勃起していないペニスと陰毛が見える。
あいつは俺の前に跪き、俺のブリーフからもう怒張しきった一物を掴みだし口に銜えた。あいつは口を動かしながら自分の乳首を摘み、嬲りだした。なんと禁じられた妖艶さ!
俺はあいつの口に濃密なものを夥しく出した。諦観した俺はこの1週間ほど自慰をしていなかった。苔がむしたやうな自分の太い根があいつの喉に入っている。あまりの射精感に、俺は声を出してあいつの髪を掴み、喉の奥まで突っ込んでいた。あいつは息を詰めて全てを受けた。だが、すぐにむせて、手で俺の糸を引く精液を受けたがまた舐めた。
息が整うとあいつは膝を突いたまま、俺を下から見上げる。犬のやうに俺の次の命令を待っているのだ。
俺は意地悪く言った。
「俺が他の誰かを抱いても、もう怒らないんだな?」
あいつは泣きさうな顔をした。ゆっくり下を向いて頷いた。
(ああ・・そんなことはもうしないのに!)
俺の中の悪魔が言った。
「あのコンドームを持って来て俺に被せろ」
俺は携帯用のプラスティックの太いストラップを、自分の陰嚢の周りに巻いて睾丸を絞り上げた。勃起をさらに長引かせるためだ。あいつに『ドライ・オーガニズム』をあいつが気を失うまで味あわせてやるのだ!
あいつが俺に、厚いスキンの突起があるゴム臭の強い甲冑を着せる。あいつの目は、獣のやうにさかりがついてギラギラとしている。
あいつの腕を掴み立たせた。あいつは下を向いて激しく息をしている。垂れた前髪の下の美しい長い睫が震えている。もう興奮する自分にどうにもならないやうだ。勃起して盛り上がったプラスティックパンツの尿道口の部分が、カウパー氏腺液が出て透明になっていく。
「後ろを向けよ」
これから俺の長いあいつへの責めの夜が始まる。抱いても抱いても『一つ』に成れないのならば、永遠に俺はあいつを抱き、喜びの声を上げさせ続けるのだ。
俺はもうあいつを逃がさない。
俺のものだ。
「プラスティックらぶ後編」了
これは小説「あいつ」の番外編です。本編もお楽しみ下さい。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。