警告
この作品は<R-18>です。
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7・閉ざされた心
夜の歓楽街を走りぬけるはつを、真理谷は追いかけた。
その小さな背中を見失わないように、必死に後を追いながらも、このまま追いつかないでいたいとも思っていた。
はつの腕を掴まえたとして、そのあと何を話したらいいのか、真理谷にはわからなかったのだ。
つかず離れず追いかけているうちに、繁華街のはずれではつはとうとう息が上がって立ち止まった。
両膝に手をついて、肩を上下させた荒い呼吸のはつに、真理谷は追いついてしまった。
「マリア、しつこいんだから!」
「ごめん……」
「何がごめんなのよ!」
そう怒鳴られて、真理谷は何も言えなかった。自分でも何を謝ったのかわからなかったのだ。
ただ、すまないという気持ちが先にたち、謝らずにはいられなかった。
地面に顔を向けたはつはその場にしゃがみこんで両腕で膝を抱えて丸くなった。
「何で女の人にだらしないのよ。どうしていつも私を避けるの? ……あのひとのこと、好きなの?」
はつは地面に向かって呟いた。
「はつ……」
「ねえ、答えてよ!」
はつは、睨むように真理谷を見上げた。その瞳は痛々しいほど充血していた。
声が出なかった。真理谷はうろたえ、僅かな風にも吹き飛ばされそうなくらい、やっと立っていた。
そうなのだ。逃げていたのは、はつじゃない。自分のほうだ。はつがぶつかってこないように、適度な距離を保とうとしていた。
「答えてくれないの? 私は、マリアのなに?」
立ち上がったはつは、真理谷の両腕をつかんで真理谷の顔を覗き込んだ。
行き交う人が、不思議そうな顔をしてこちらを遠巻きに見ては通り過ぎていく。
傍から見たら、どんな風に見られているのだろう。姉妹喧嘩? それとも友達同士の言い争いだろうか。
変に冷静な分析が、真理谷の頭の中で行われていた。
はつはまだ知らない。アウトローとして生きるということは、世間の冷たい風に立ち向かい続けることだということを。
理解してくれる者もいるが、たいていは冷たい視線、好奇な視線にさらされることになるのだ。
こんな自分の元にいたから、はつに同じ道を歩ませてしまったのだろうか。
はつは黙って真理谷が口を開くのを待っている。
はつの姉、夏川ほのかと同じ、大きめの輝く瞳を少し曇らせて、真理谷を見つめ続けている。
『真理谷、好きよ』
夏川ほのかはそう言って、真理谷に微笑んだのだ。
そして、翌日に自殺したのだ。
あのときのほのかの顔とダブって見えた。
「はつ……」
真理谷はそっとはつの肩を引き寄せて抱き締めた。
柔らかくてほんのりと甘い香りがして温かい。
きつく抱き締めると潰れてしまいそうな綿菓子のようで、一緒にいるとほっとできる。
――でも……。
真理谷は、はつの両肩に手を置いてゆっくりと引き離した。
「はつ、帰ろう」
答えは出なかった。
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