警告
この作品は<R-18>です。
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11・涙
こんなとき、一緒に住んでいるときつい。
顔をあわせたくなくても、同じ場所に帰らなくてはいけないのだ。
だが、真理谷は、はつの待つマンションへ帰らずにバーテンダーの香津美のところへ無理矢理押しかけたのだった。
帰りなさい。と、香津美に言われそうになると、その唇を唇で塞いで押したおし、香津美の声にならない声を出させようと執拗に愛撫した。
転がり込んで四日目の夕方、香津美が出勤するときに真理谷はとうとう追い出されてしまった。
「もう、限界よ。はつのところへ帰りなさい」
「ごめん、疲れているのに求めすぎた?」
「馬鹿。私が言いたいのは、ほかの娘のことを考えているひとと一緒に居たくないってこと」
肩に回した真理谷の腕を振り払った香津美の声は、冷ややかだった。
「逃げていても解決にならないのよ。はつちゃんときちんと向き合ってごらんなさい」
「……向き合おうとした。でも、できなかった。だから、今私はここにいる」
「本当に向き合えたの? はつちゃんの話を聞いた? あなた、自分だけ言いたいことを言って逃げてきたんじゃないの?」
「……」
あのとき、はつは話そうとしていた。香津美が言うように、真理谷ははつから逃げたのだ。
真理谷は黙った。
「辛くても聞かなきゃ駄目。あなたが辛いように、はつちゃんも辛いのよ。いいえ、もっと辛かったかもしれないわ。それなのに、あなたを支えてきたのよ」
「支えるって、私がはつを養ってきたんだよ」
「馬鹿ね。ほのかさんが亡くなったあと、酒に溺れてずたずただったあなたが、仕事に復帰できるようになったのは誰のおかげなの。はつちゃんが辛抱強くあなたを見守ってくれていたからじゃない。あなた、はつがいるから、こんなことはしていられないって言っていたじゃない」
そんなこと、忘れていた。
当時、どんなに飲んだくれて帰っても、はつは黙ってベッドまで連れて行ってくれた。午前様でも怒らなかった。外泊して翌日になったときは、眼を赤く腫らして悲しそうにしていた。そんな顔は見たくないと思って、それ以来、真理谷は外泊をしなくなったのだ。今回のことがあるまでは。
支えられていたのは、自分のほうだったのだ。
「さあ、行きなさい」
呆然と立っていた真理谷の背を、香津美がぽんと押した。
「……いつも有り難う。香津美って、母親のようだね」
真理谷は振り向いて香津美の頬にキスをした。
エレベーターに消えた真理谷を見届けて、香津美はため息をついた。
「馬鹿ね。母親にキスなんてしない……」
香津美の瞳に涙がにじんでいた。
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