警告
この作品は<R-18>です。
18歳未満の方は
移動してください。
なるべく早めという事で前もって書いておきますが劉姉妹編は同性愛表現がありますのでご注意を
ただ今回は(も)エロ無しです…
☆23☆ 亀裂
ふぅ……
今日も朝と昼の何時もの激しい戦場を終え…漸く人心地つける…
やっぱり副長の欄婪がいないと大変だ…
勿論、調理部の子達も一所懸命にやってくれているが、自分でも作りながら指示と確認を全て一手に引き受けなければならないのは、やはり骨が折れるものである…
そして今日も…ここ最近日常と化して来た…
私の1日の大切な時間が始まる…
「駁斗様!」
私は喜びを噛み殺し、あくまで冷静を装って彼に話しかける…
『ん?おぉ…鈴凛♪お疲れ様…』
彼は私に労いの言葉をかけると、その整った顔を破顔させ…私の鼓動を早める何時もの優しい笑顔をみせる…
「本当に今日は疲れたデスね…欄婪いないとやっぱり大変デスよ…」
『そっか…ふふ…二人は本当に仲が良いから余計に辛いんじゃない?』
「そ…そぅかもデスね」
私は最近、日を追う事に段々と彼を凝視出来なくなって来ている気がする
欄婪に対する物とも、他の人に対する物とも何かが少しづつ違う…
不思議な感情…
彼に見られる事も見る事もとても苦しいのに、彼に見られたい…彼を見ていたいと思ってしまう…
でも…私はその感情を嬉しくも意識しながら…
同時に恐れ…決して受け入れない…
私の中の何かがそれを絶対に許さないのだ…
『あら…鈴凛さん、本日も午前の奉公…お疲れ様でしたね…♪』
そこに恐らく駁斗様の分の珈琲を取りに行っていた水杞様が来た…
私の心がまた、今度は少し違う悲鳴を鳴らす…
「ぁ…はぃデス…」
『お待たせ致しました♪駁斗様…』
コトッ……
水杞様は、それすらも優雅なしょさで駁斗様に珈琲を差し出す…
『ありがとう…水杞♪
ズズッ……ゴクッ…
…うん…流石水杞だねぇ…完璧!』
『うふふ♪もぅ一ヶ月近く駁斗様に珈琲を入れさせて頂きましたからね♪
いくら至らぬ私でも、そろそろ駁斗様のお好きな珈琲のお好み加減位は熟知していますわ♪』
『ふふふ♪流石…管理部長…言う事が違うねぇ』
『『あはははは…』』
私は愛想笑いをその能面に張り付かせ、ただ2人を交互に見つめる事しか出来なかった…
私……私だってそれくらい出来るデス…
私だって駁斗様の好みくらい解っているデス…
私の中を益々黒い感情が埋め尽して行く…
それは露骨なまでの嫉妬…対抗心…寂しさ…
渦巻く数々の感情がぶつかり合い…私のひ弱な心はまるで引き裂かれる様に痛みを発する…
「は…駁斗様…昨日買った珈琲デスか?」
『ん?あぁ否、違うよ
これは此処の食堂にある奴…』
此処には紅茶から珈琲まで何種類ものリーフや豆が常備している…
当然パックやインスタントも置いてあるのである程度の好みは賄える様になっているのだ…
『昨日お買いになってらしたんですか?』
『うん♪此処に置いて無い種類を中心に色々とね
まぁ俺は其れ程好みが煩い訳では無いけど、色々飲んでみるのも楽しいかなって♪2人共、今度良かったら飲みに来てね♪』
「絶対行くデス!!!!」
……………
『ぇ…ぁ…うん…』
私はつい即座に大声で肯定してしまい…微妙な空気を作ってしまった…
(さ…最悪デス…ワタシ何言うデスね…//////)
『うふふ♪私も是非、ご馳走になりたいですわ』
『うん…2人共、何時でも暇な時は飲みに来てよ
何せ俺が自分で入れるより2人の方が入れるの巧いからねぇ〜♪』
『あら?駁斗様…実はそぅいう魂胆があったんですの…?うふふ♪』
『あはは♪まぁね♪』
(何か…モヤモヤするデスね…嫌デス…解らないけど……凄く嫌デス…)
私は2人が楽しげに笑い合う様を、ずっと…
ずっとその外で無様にあがきながら眺めていた…
‥…☆‥…☆‥…☆
私はあの後…愛想笑いを張り付かせたまま食事を終え…逃げる様に1人厨房へ戻り、既に火を消して静まり返る厨房の椅子に腰を下ろす…
(……嫌な子デスね……ワタシ……)
さっきはちゃんと笑えていただろうか…?
駁斗様に変だと思われたりしなかっただろうか?
愛想も無く、可愛い気の無い女だと思われはしなかっただろうか…?
私の心にはそんな身勝手な事ばかりが浮かんでは消えて逝く…
そして私は…ふと自分の左耳を触る…
(駁斗様と…同じ…)
そぅ思うとそれまでの陰欝とした感情が少し、晴れていく気がする…
「駁斗様も…付けていてくれたデスね……」
先程、何気無しにちゃんとチェックしていた…
確かに…彼の左耳にも私と同じ、その証が私の目には輝いていた…
本当は皆にふれて回りたい…私と彼の耳には同じ証が付いていると…
でもそんな事は出来ない
解っているのだ…
あれに意味を持たせてはいけないと…
その意味を彼に知られてはいけないと…
偶々…1つ余っていたから私が付けた…
それで良い…そぅでなければ、彼はきっと外してしまうから…
その時…この事が誰かを苦しめているなんて…
自分の一番大切な人…
唯一無二の大切であった人を傷付け追い込む行為だったなんて…
私はホンの少しも思ってあげられていなかった…
「ただいまデスぅ…」
そして私は、そんな宙ぶらりんの気持のまま…
当然の如くその後は最低の仕事ぶりで、重い体と心のまま今日の仕事を終え部屋へと戻った…
(やゃぁ…?欄婪いないデスかね…?
はぁ…まぁその方が良かったかもデスね…
今の情けない自分は誰にも見せたく無いデスね)
私は身勝手な自己完結で納得し…リビングのソファーに勢い良く雪崩込む
「はぁ……駁斗様…」
私は何気無く…心に浮かぶ名を呟いてみる…
『鈴凛……』
………!!?
その時、いきなり背後から私の名が、18年間聞き慣れた声で呼ばれる
「ら…欄婪?い…居たんデスか…びっくりさせないで欲しいデスよ…」
『……………』
しかし…彼女は黙ったまま私を見据えている…
「ら…欄婪?何かあったんデスか…?」
私は明らかにおかしい彼女の態度に戸惑いながら話を促す…
『ふふふ…何かあった?ふふふ…ふふふふふッ』
「ど…どぅしたデス…欄婪…何か変デスよ…」
私はおかしそうに笑いながら、何故か泣いてる様に見える妹に言い知れぬ不安を覚え話しかける
『ふふ…別に…私は変なんかじゃ無いアルよ…
変なのは鈴凛の方なんじゃないアルか?』
「え……?」
『ふふ…♪随分…最近楽しそうだったし…
それに昨日も私を放り出して、とても楽しそうだったアルね…?』
「…何言ってるデス…別にそんな事無いデスね」
『ふふ…別に隠さ無くても良いアルね…
鈴凛が私を裏切って幸せになろうとしてるとしても、別に気にする事なんて無いアルね…』
「そ!そんな!!」
『ふふ…そんな事無いとでも言うアルか…?
私を除け者にして…
お揃いのピアスなんて付けて…私に隠れて…私を騙して…さぞ楽しかったアルねぇ…?』
「………!!?」
『ふん…馬鹿みたいアル…どうせ鈴凛は駁斗様に、良い様に遊ばれてるだけアルね…』
「欄婪!!…そりゃ…確かにピアスの事は…ワタシも悪かったデスね…
でもこれはそんな大した意味なんて無いデスね!!
それに駁斗様の事を悪く言うのは例え欄婪でも絶対に許さないデスね!!」
『ふん!!良く言うアル!!
大した意味は無い!?
はっ!!何年付き合ってると思っているアルね!!
鈴凛がそんな事を意味も無く興味も無い相手にする訳が無いアルね!!』
「………!!」ドキッ!!
その時…正に図星を刺され…自分の中で今まで必死に誤魔化して来た何かが…激しい痛みを伴い露骨に…そして明確に浮かび上がるのを感じた…
『ふん…裏切り者…
精々…駁斗様にもてあそばれて痛い目を見れば良いアル…』
……………
「許さないデス…」
『ふん…許さないのはこっちの方アルね!!』
「ワタシの事なら兎も角…1度ならず2度までも…駁斗様を愚弄する様な事を言ったデスね…
絶対に…ワタシは欄婪を絶対に許さないデスね!!
もぅ姉妹でも何でも無いデスね!!大嫌いデス!!」
『私だって上等アル!!姉妹なんてこっちから願い下げアルね!!』
バンッ……
私はお揃いで買った、安物のハート型のネックレスを机に叩き付け…
部屋を飛び出した…
(もぅ…欄婪とは絶好デスね!!姉妹でも何でも無いなデスね!!)
私は心で何度も妹であった少女に悪態を吐き…
まるでその言葉に呼応するかの様に止めど無く流れ落ちる涙の滴を、認めたくないと言わんばかりに、必死に手の甲でかき消し続けていた…
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