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  HAREM☆HOUSE 作者:品薄
今話以降に出て来る新キャラは、全て本小説には直接関係はありません。
(^-^;)笑
ので、小説後の何時ものキャラ紹介はしませんので、御理解ください。
m(__)m
☆136☆ 逃避
 
 ガタン……ガタン……

 ガタン……ゴトン……

 俺は今あの長い一日が終りを告げ、その日を跨ぐと同時に……。凡そ半年に渡って過ごしてきたとは、到底思えない程に少ない、手提げ鞄1つと言う手荷物を抱えて、あの家を1人出た……。

 ………………

 そぅ……結局俺は、誰にも会わず誰にも伝えず出て来てしまった……。
 しかし勿論、極々最低限の礼儀として綾禰の屋敷と、麗羽さんの所には端的な手紙と辞表を残しては来たものの……。
 俺は敢えて1度も振り返る事も無く。まるで走り、そして逃げ去る様に屋敷を出て来た……。

 ………………

 そして駁斗は、その飛び乗った不明な電車の窓を見つめ、心底嫌そうに表情を歪め、自嘲と自責を込めて呟く……。


「くそっ……本当に……。俺って人間は、何時もこぅだ……」

 例えば、俺が何処かの初めて行くレストランに入った時……。俺が頼む物と言えば、カレーライスかハンバーグ……。
 例えば、俺が旅行に行こうとした時に、真っ先に行くのは本屋の旅行雑誌のコーナー……。
 例えば、俺が大金を手に入れたとして、その使い道の殆んどは貯金をし活用を先伸ばす……。

 そして、俺が到底叶わない恋をしたとして。そんな時に、俺に出来る行動と言えば……。
 自分を誤魔化し目を背け続けるか、ただ踏み込まずその場から逃げる様に去る事だけ……。

 
 俺は、何時も……本当に何時も何時も、平穏と言う漠然とした。其処に大した意味さえも無い、俺には甘い言葉に左右され。
 そして都合良く、逃げ口上に利用する……。


 俺は昔から、人から嫌われ、理不尽に攻撃される様な事には、その環境もせいもあり悲しいかな馴れきっている……。

 それは別に、俺がMだとか、ただの意地や強がりだとか、そんな事では決して無い……。
 俺は単純に、嫌われていると言う事に対しては、その現状以上には下がらないと言う事と捉え。
 それはつまり、無理に好かれ様とさえしなければ、少なくとも俺にとっての現状の心の平穏を保てると言う事……。

 所詮は、どんなに出来た人間であれ。100人全てに好かれる事など有り得ないのだ……。
 つまりは俺にとって、敵は結局味方でも有り。味方は同時に最も厄介な敵でもある……。
 だから嫌われる事に対し、然程恐れたり落ち込む様な事も無い……。


 しかし……人を好きになり。そして好きになられると言う事は、言わばその真逆の事……。
 その日常を壊し、自分の感情や生活にも多かれ少なかれ起伏が出来る。
 そして常に、何らかの相手との関わりへの不安に気を張り続けながら、あらゆる刺激を経験し、それを乗り越え暮らしていくと言う事……。

 ………………

 人はきっと……。
 俺の様な人間の事を、ヘタレと、臆病な小心者と呼ぶのだろう……。
 しかし……この世の中に、本当に恐れるモノが何1つ無い人間なんて果しているのだろうか……。
 もし、そんな人間が居たとしたならば……。
 それこそ動物としても、そして当然、人としても考えも感性も至らない、愚かな愚鈍な生物なのでは無いだろうか……。

 そぅ……これが俺の何時もの詭弁。何時もの稚拙な自己弁護である。
 俺は今まで何時でもこぅして、自分でも理解している筈の愚かな自己弁護を繰り返し……。
 そして同じ道、同じ結論を繰り返す……。


 キキィーーッ……

 するとその時、その何処へ向かうとも知らず。珍しく俺が勢いのままに飛び乗ってしまったその夜行列車が、何処かの駅へと停車する……。


「……桜紅葉さくらもみじ? 何か聞いた事の無い駅だな……」

 そして俺は、その妙な名前の駅名に惹かれ。別に何処に行く充てもある訳でも無いので、その小さめの何処か情緒深い雰囲気のする駅へと誘われる様に降り立った……。


「えっ? 此処は……」

 俺がその、明け方間近の薄明かりの中の無人の駅へと降り立つと……。
 其処には今はもぅ、秋から冬へと移行しようと云う季節にも関わらず、何故かまるで桜の様な美しい様相の、しかし薄い橙色をした花々が木々を飾り咲き乱れており……。
 それは何処か、妖艶で目を見張る程に美しい光景を作り出し、その俺の目の前一面に広がり見せていた……。


「さ……桜……? 否、しかし色が違う……。それに何より何でこんな時季に、こんな花が一面に咲いてるんだ……?」

 俺はそのあまりに現実離れした光景に、暫くの間その場に立ちすくみ。
 ただ間抜けに口を半開きにしたまま、呆気にとられていた……。


「何と言うか……これは、凄いな……」

 …………?

『何だよ……? アンタそんな事も知らないで、こんな所に来たのか?』

 するとその時、何時の間にか自分の隣に居た。共に背の低い凡そ10代後半程の年齢の2人の女の子が、呆然とする俺に声を掛けてきた……。


「……えっ……?」

『はははっ♪ 何だよそのマヌケ顔ぉ〜〜?』

『ちょ! 駄目だよ翠ちゃん!! 初対面の人とは敬語で話さないといけないんだよ……?』

(否……。それ以前に、マヌケ顔って無礼な言葉を注意しろよ……)

 その2人の女は、その年齢には若干不自然にも感じる。桃色と橙色に綺麗に染められた和服姿をしており……。
そしてその、みどりと呼ばれた女の方は、少し赤みがかったショートの癖っ毛をしており。見るからに態度のデカイ、実にふてぶてしい印象を受けた……。


(ふっ……まるで刃月のチビッコ仕様だな……)

 俺がそんな、女々しく綾禰の事を引きずる様な思考に囚われていると、もぅ1人の黒く綺麗なロングヘアーを頭の上でお団子にした、見るからに気の弱そうな女の方が、俺に対し恐る恐る声を掛けてくる……。


(うーーん……こっちは流那の容姿と未来の弱さの合体仕様かな……?)

『ぁ……あの? そこのとても背の大きい、男性の方……?』

「な……何だそれ?」

『ぁ……あの、どぅ呼べば良いのか解りませんでしたので……』

(うーーん……。微妙にこの子も変だ……)

 駁斗は若干の脱力感を覚えながらも、その少女達へと返答する。


「あぁ俺は、神楽だ。神楽 駁斗……。此処へは今さっき、偶々降り立った所なんだ……」

『あら、そぅなのですか。でも、どぅしましょう……。此処へは、1日に数本しか電車は止まりませんよ? 神楽様……』

「……へっ……?」

『あぁ……。今日は確かあと夕方近くに1本と、夜中にもぅ1本の電車があるだけだ……』

「はぁっ!? 何で今時、そんなに少ないんだよ? これだけ綺麗な花が咲いてんだ……それだけでも、観光客くらい少しは来そうなもんだが……」

『あぁ、もぅ……男の癖に、一々煩い奴だ……。ウチの客じゃ無いのなら、アタシらが答えてやる義理は無いね……。行くぞ! 早雪……』

 するとそのチッコイ癖に態度のデカイ癖っ毛の少女は、その橙色の桜並木に囲まれた道を、俺を置いてさっさと歩いて行こうとする……。


「ぉ、おい!? ちょっと待ってくれよ! 少し質問に答えるくらい構わないだろぅが……!?」

 ………………

『じゃぁ……ウチの客になる……? それなら私達だって、何なりと答えてあげるわ……♪』

「きゃ……客……?」

『ぁ、はい……。私達は、この近くの旅館で接客係……。つまり仲居をやっている者なんですよ』

 すると早雪さゆきと呼ばれた方の大人しげな少女の方が、彼に優しげに微笑み、そぅ答えてくれる……。


(成程……。それで和服姿と云うワケか……)

 そして駁斗は、即座にその頭の中で打算計算のオンパレードにその考えを巡らせるが、結局は他に良案も妙案も思い付かず、ヤレヤレと彼女達に肯定の返答を返す……。


「分かった、分かった……。どぅせ電車も待たなくちゃいけないし、今日は其処に泊めて貰うとするよ……。だから……」

『よっしゃーーっ!!』

「……はっ……?」

 すると突然、さっさと前へと歩いていた翠と言う名の女が、何とも現金に初めて満面の笑顔を晒し、その掌を180度返し捲りで、こちらに走り戻ってくる……。


『さぁさぁ、客人♪ 寄って行って下さいなぁ〜〜♪ ウチには可愛い娘もわんさか揃ってるよぉ〜〜? よっ!! このスケベ野郎っ♪』

「な……何だコイツ」

『あはは……すみません。何分、交通の便も悪いのでウチの旅館は年中、赤字経営なもので……』

 そしてその癖っ毛女に背中を無理矢理押されながら、俺達はその駅前の情緒深くも不自然な橙桜の木の中を、その雰囲気をぶち壊しながら騒がしく歩いて行った……。


 ………………


 そして俺達は、その一面橙色の桜だらけの道を旅館に向けて歩きながら。その彼女達から、この街の事や彼女達の旅館の事など、色々な話を聞くとも無しに聞き歩いていた……。


 それによると、この町の季節外れの桜達は。やはり品種改良中の、今現在は此処だけでしか咲く事が出来ない、年に春と秋の2度その花を開く特殊な桜であり……。
 春は桃色、秋は橙色と何とも器用に、そしてサービス精神旺盛な花なのであった……。
 そしてその花は、此処の駅名にもなっていた。
 《桜紅葉》と呼ばれているらしい……。

 そしてこの町唯一の旅館である桜月館おうげつかんこそ、彼女達が住み込みで働く。今俺達が向かっている場所の名前であった……。


 ………………

「……此処か……」

 そして彼等は、その季節外れの桜道を通り過ぎ。そしてその先に、まるで桜道の終着点かの様に建ち塞がる、所々に不明な彫刻が施された古びた木製の門扉が、その大きな口を開け建つ場所へとやって来ていた……。


 そしてその足元には石だたみが導く様に敷かれ、外より更に多くの桜に囲まれた何とも立派な木造建築の旅館がその先に建っているのが見えた。


『えぇ。此処が桜月館。一応数百年は続く、老舗旅館なのよ……?』

 すると翠は、その和装の袖を捲り。何故か彼女が偉そうに、実に自慢気に鼻を鳴らす……。


「はぁ……。確かにこれは、この秋先の桜を差し引いても素晴らしいな……」

『ふふふっ♪ 気に入って頂けて何よりです。御庭には、喫茶もありますから……。是非後で行ってみて下さいな……♪』

 早雪はそぅ、駁斗の隣で背の高い彼を見上げる様に微笑み掛ける。


「……えぇ……。一息ついたら、直ぐにでも行ってみますよ……」

『……はい♪ 是非♪』

 ………………

『あれ? これはまた、珍しい……。桜月館のお客さんですか……?』

 するとその時、彼等の背後から。黒いフレームの眼鏡を掛けた、一見ゆったりとした印象を受ける。サラサラの黒髪で下手をすれば女性にすら見える程に美しい顔立ちをした、1人の男が歩いて来て。
 その門扉の前で騒がしく話していた駁斗達に、そのゆったりとした落ち着いた声を掛ける……。


「……んっ……?」

『あら、梳鑼様……? 今、御帰りですか?』

『おぅ、梳鑼っち♪ ってか、珍しいとか言うな! 失礼だぞぉ〜〜!?』

『あぁ……これは失敬。今日は一応、休日だからね……。そぅ何時までもサービス残業なんてしてられないさ……』

 するとその梳鑼と呼ばれた、凡そ20代半程の年齢に見える美しい男は、その彼等に向けて緩やかに1度笑い掛け、そして何故か駁斗に僅かに会釈をすると……。
 その石だたみと橙色の桜に囲まれた美しい庭園の中を、まるで流れる様な無駄の無い動きで去って行った……。


「ねぇ? あの人も、此処の従業員の人……?」

『あぁ、いえ……。あの方は、この近くの学校で教鞭をとってらっしゃる柊 梳鑼様ですわ♪』

「ひ……柊っ……!?」

『ぇ……えぇ……』

(否……。この広い世界で……まさかな……)

 すると駁斗は、その何とも聞き馴れた名前に、ホンの少し嫌な予感を感じながらも、そんな自分の女々しさを振り払う様に首を振り。そして彼女達に案内され、その古びた旅館の中へと入っていった。




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