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BREAK THROUGH【side story】〜 静 〜
私の命より大事な『村雨』を、アイツが『超必殺技』とかいうセンスの欠片も見られない名前の技で、壊れてしまうとわかっているくせに貸せと言ったアイツが許せないというより、ただ悲しかった……


アイツにとっての私の存在が、ただの一族内の幼馴染みの一人にすぎないんだと考えていると、自然に涙が溢れ出し、人前だとわかっていても涙を堪えることが出来なくて、私は村雨を抱き締めながら泣き出してしまった。


そう、あれはまだ私がアイツのことを『まぁ君』と呼んでいた、2年ぐらい前に起こった出来事だった。


これはまぁ君がお父様が理事長を務めている、中高一貫教育の草薙学園をを卒業したばかりで、私が二年生になった頃のお話し……



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



まぁ君は成績優秀で、私には勉強をする姿を見せたこともないくせに、いつも同じ学年の九条家のはるかさんと常にトップ争いをして、2年連続T大の理系と文系を主席で卒業した綾波家の椿さん、楓さんに続く優秀な人材として将来を嘱望されていた。


武系の筆頭である如月家の次期当主ということもあってかスポーツ万能で、同級生はもちろんの、下級生や女性教師までもがまぁ君のハートを射止めようとしていた。


あれだけモテモテのまぁ君だったけど、学校では私や遥さん以外の女生徒とはほとんど口を利かないで、立場を利用して彼に色目を使って近づいてくる女教師に、はしばらく学校を休まないといけないほどやり込めていたのを私や遥さんはとっても嬉しく思っていた。


そんなまぁ君がT大に行くと誰もが思っていたのに……彼は大学へ行く時間が勿体ないからと言い張って、進学を希望する御前の反対を押し切って、武系四家の当主に義務づけられていた仕事をするために、卒業と同時にフロリダへと旅立ってしまった。


まぁ君がT大へ行くと思い込んでいた私は、あと4年の間は彼のすぐ側にいられると喜んでいたのに……


私は予想を裏切られたショックがあまりにも大き過ぎてしまい、悲しみに明け暮れ、ただ生きているだけのような荒んだ毎日を送っていた。


そんな時、まぁ君がフロリダへと旅立つのを待っていたかのように、アイツ……鷹司家の長男だった忠親ただちかが私に近づくようになっていた。


アイツはまぁ君や遥さんとは同じ年で同じ草薙学園にいたけど、T大受験に失敗したくせにろくに勉強もしないで、家格というものを振りかざしては私に言い寄ってきたり、まぁ君の悪口をいつも言っている私が大っ嫌いなヤツ。


ちょうどあの日はまぁ君がいなくなった寂しさから、お父様と些細なことで口喧嘩をしてしまって、泣きながら屋敷を飛び出していた。


私は気がついたら小さい頃にまぁ君とよく遊んだ思い出のある運動公園に辿り着いた時、アイツに出会ってしまった。


「チッ!」


「いきなり舌打ちとはご挨拶だな静。ケッ、また政影アイツのことを思い出して泣いてんのか?アイツは神薙家ジジイのところの孫と同じ、気味の悪い化け物なのによぉっ!草薙家おまえのような家格の低い家が鷲津一族で生き残るためには、鷹司家うちに嫁に来るのが一番だぜっ!クックックッ……」


「アンタって人は、まぁ君がいなくなった途端に元気になるんだ……本人の目の前では何も言えない小心者のクセにさっ!それに雅を化け物扱いするアンタなんて最低よっ!草薙家うちはアンタのとこより確かに家格は低いけど、鷲津家と如月家以外には先祖代々、『物申して良い』という立場を戴いているのをアンタ知らないの?如月家の下にいる鷹司家あんたのとこの人間が、そんな口をきいてもいいわけ?お父様を通じて御前に報告してあげるから覚悟しておきなさいよっ!!!」


私はアイツを怒鳴りつけると、ここでこんなヤツの相手をしていたくないと思って早く屋敷に帰ろうとしていたのに……


忠親アイツは茂みの方に向ってなにやら合図をすると、そこからはお金でやとったような柄の悪い連中が、ぞろぞろと集まって来て私を取り囲んでいる。

「あっ、あんた……私になにする気よっ!?」


「やれ……抵抗するようだったら少しぐらい痛めつけても構わんっ!」


アイツは私の問いかけには答えずに連中を促すと、私を取り囲む連中の円が次第に小さくなっていく。


「ハァッ!」


「ウグッ……」


「ヤァッ!ハッ!タァッ!」


「ガハァッ!ウッ、グッ……」


私は近づいてくる連中に,
氷室家で習った体術を駆使して脱出をはかっていたけど……多勢に無勢、後ろから睡眠薬のような物を染み込ませた布で口を押さえられると、私はゆっくりと意識を失っていった。


「ウッ、ンッ……」


私は意識を取り戻すと、いまだに朦朧とする瞳で自分と周りの状況を確認した。


どこかの倉庫らしき場所に私は連れ込まれてしまったみたいで、私は両手を上げた姿勢で手首に手錠をかけられ、その手錠と繋がっていたチェーンで吊られている状態だった。


「忠親様、女の意識が戻りましたっ!」


手下が私の意識が戻ったことをアイツに報告してしばらくすると、ニヤケた顔で私に近づき、アルコール臭い息を吹きかけるようにして私の顎を持ち上げ言い放つ。


「少しは大人しくなったみたいじゃないか。俺の嫁になる覚悟ができたのかな?クックックッ……」


「誰がアンタみたいなゲスに。アンタに嫁ぐぐらいなら死んだ方がマシよっ!」


「クックックッ、死んだ方がマシか?なら仕方がない。お望み通りに殺してやるよっ!もちろん思う存分俺たちを楽しませてもらった後にな。アッハッハッハッハッハッ……」


私が当然のように断ると、アイツは私を絶望の淵に落とすかのように恐ろしいことを、平気で笑いながら言っている。


「忠親様が終わられたら、俺たちも楽しんでいいっすか?」


「あぁ、いいぜっ!可愛がってやりな……アッハッハッハッハッ!」


アイツは自分が私を犯した後、手下に輪姦まわすさせるつもりなんだ……こんな下衆なヤツ等に私の処女はじめてを奪われてしまうと考えると、悔しさのあまり涙が溢れ出してしまい、頬を伝いながらブラウスの襟を濡らしていた。


私の処女はじめては、フロリダにいる大好きなまぁ君にもらって欲しかったのに……


こんなヤツに奪われるぐらいなら舌を噛んで死んだ方がましよっ!私は武系四家の娘として、恥辱にまみれるより誇りある死を選ぶわっ!


「フッフッフッ……俺に処女を捧げられること、有り難く思うんだなっ!」


『ビリッ、ビリビリビリッ!』


『ごめんねまぁ君。死ぬ前にもう一度、あなたの笑顔を見たかったわ……』


ヤツがいやらしく笑い、ふざけたことを言いながらブラウスを引き裂くと、私は覚悟を決めて心の中でまぁ君にお詫びをして、叶いもしないことを考えながら舌を噛むため意識を集中させることにした。


『ガァーーーンッ、ガラガラガラッ……』


倉庫の入口あたりで、大きな音をさせながら扉を破って突入する車が私の視界に入ってくる。ヘッドライトの逆光によってハッキリとは見えなかったけど、人影らしきものが運転席から降りると、私の方へとゆっくりと近づいてきている。


「迷子の迷子の仔猫しずかちゃん〜♪あなたの草薙屋敷おうちへ帰りましょ〜♪」


「えっ!?嘘っ!この声は……」


「誰だてめぇはっ?」


鼻歌を歌いながら近づいてくる、聞き覚えのある私の大好きな男性ひとの声。アイツの手下が怒鳴るように聞くと、影の主が答えた後、私を安心させるように優しく語りかけてくれた。


「俺か?俺は通りすがりの政影まぁくんだ。待たせたな静、怖かっただろう?もう大丈夫だから安心していいからな……」


「まぁ君、まぁ君、まぁ君……まぁくぅーんっ!ワァーーーンッ!!」


私は驚きよりも、大好きな人が私を助けに来てくれた嬉しさで、悔し涙を嬉し涙へと変え、何度もまぁ君の名前を呼びながら叫ぶように泣いていた。


「まっ、政影だとっ!?フロリダにいるんじゃないのかよっ!」


「ああ、フロリダこうの金髪姉ちゃんに飽きたところだったからな。忠親てめぇ、俺の大事な可愛い静に、なにしてくれてやがるんだ?お前が馬鹿とは知ってはいたが、まさかここまでとはなぁ……今の俺は非常に機嫌が悪い。死にたくなかったら今すぐここから失せやがれっ!!」


まぁ君の出現によって慌てて叫びながら聞く忠親アイツに、彼は私への気持ちを言ってくれた後、今まで私が見たこともないような険しい表情でアイツを睨みつけて怒鳴っている。


「フンッ!いくらお前が武系筆頭の如月家の跡取りでも、噂によれば能力チカラも実力もないらしいじゃねえか。これだけの人数を一度には相手にはできないないだろ?お前たち、政影こいつを早く殺してしまえっ!」


「チッ、俺も舐められたもんだな。じゃあ仕方ない……お仕置きタイムのはじまりはじまり〜♪」


アイツは手下にまぁ君を殺すように命じている。まぁ君は舌打ちし、彼の愛刀である『村雨』を鞘から引き抜くと、鼻歌交じりに襲いかかってくる手下たちを、草薙家うちの稽古では見せたこともない見事な太刀捌きで打ち倒している。


「ガッ!」


「ギャ――ッ……」


「ガハッ……」


「ハグッ!」


「安心しろっ!みね打ちだから死にはしない……まだやるか?」


次々と倒れていくアイツの手下たちにまぁ君が問いかけると、我先へと手下たちが倉庫の外へと逃げて行った。


逃げる手下たちを見送っていたまぁ君が私のもとへ辿り着き、『村雨』を一閃させてチェーンを切断すると、落下する私の体を片腕で軽々と私を抱きとめてくれた。そして彼は私の瞳を見つめ、微笑みながらで囁くように言ってくれた。


「静、お前が無事で本当に良かったよ。」


「うん。ありがとう、まぁ君……」


私はまぁ君に答えると、嬉しさのあまり再び涙が溢れ、彼の胸に顔をうずめて泣いていた。


「さぁ、あとはこの忠親バカの後始末だな。ハァ〜……」


まぁ君はアイツに対して面倒臭そうに言い、溜息をついて胸にすがる私を優しく床に座らせてくれると、アイツに向かって歩き出している。


「二度とこんな悪さができないように、忠親てめぇの相棒を村雨これで切り捨ててやろうか?」


「やっ、やめてくれっ!たっ、助けてくれっ!政影、いっ、いや政影様……ヒィィィ―ッ!!!」


まぁ君はアイツにナニを村雨で切り捨てるかと問いかけ、アイツはまぁ君に泣きながら懇願すると、情けない悲鳴をあげて泣いていた。


「ダメッ!そんな事したらまぁ君の将来が……」


「お前がそう言うのであえば仕方がない。それに『村雨コイツ』に粗末な物を切らせる訳にはいかないからな。しかしコイツにはお仕置きが必要だ。」


とっても悔しかったけど、アイツのせいでまぁ君を犯罪者にする訳にもいかないし……私が彼を制止すると、彼はアイツにお仕置きをすると言い放ち、両手に気を練り始めている。


私がはじめて見る赤色と青色の二色の炎が、まぁ君の掌の中に包み込まれていくと次第に紫色に変化し、電気が放電するかのようにパチパチと輝いているのを見て、私は思わず呟いてしまう。


「綺麗……」


「そうか?でも静、『紫電コレ』のことは俺とお前の秘密だから、誰にも言わないでくれよなっ!」


まぁ君は私の呟きに答えるとアイツの股間めがけて紫電を放とうとしている。


「ヒィィ―――――――――ッ!!!」


「チッ、情けないやつだ……こいつションベンを漏らしやがった。」


アイツがひときわ大きな悲鳴を上げながら気絶したみたいで まぁ君はアイツを軽蔑するかのように舌打ちをして言い放っていた。


「静、帰ろうか?」


「うんっ!」


私は帰る途中、あの運動公園にさしかかったあたりでまぁ君に聞いてみることにした。


「ねぇまぁ君……さっきあなたは私のことを大事で可愛いって言ってくれたわよね?」


「ああ、言ったな。」


「私ね、あんな状況だったのにとっても嬉しかった。まぁ君が御前の仕事をし始めてとっても寂しかったの……」


「そうか静は俺をそのように思っていてくれたのか……なら『村雨こいつ』をお前にやるよ。俺だと思って大事にしてくれよなっ!」


「『村雨』はまぁ君が生まれた時に、あなたのお父様が送ってくれた大事な物でしょう?」


「そうだけど、今の俺がお前にしてやれることはこれぐらいしかないしな。、お前みたいな美人が持っていた方が、『村雨こいつ』もきっと喜ぶだろうからなっ!アハハハッ」


「まぁ君、私を美人だなんて……ありがとう大事にするわ。」


大好きなまぁ君にプレゼントをもらって、しかも美人だなんて言われた私は天にも昇るような気持ちになって、自分でも顔が真っ赤になっているのがわかるぐらいだった。


「まぁ君にお礼がしたいから、ちょっとしゃがんでくれない?」


「お礼?」


私がまぁ君に言うと、彼は不思議そうな顔をしながらもしゃがんでくれていた。


お礼としてまぁ君にファーストキスを貰ってもらおうと思い、彼の首に腕を回して顔を寄せて唇をあわせようとしていたのに……


「私はまぁ君、あなたを……心から……」


「ヘックショーン!ズズッ……誰か俺の噂でもしてんのかな?てか静、心からなんだって?」


私が囁くように言いながら唇を合わせようとした瞬間、まぁ君はクシャミをした反動で顔を反らしてしまい私の唇は目標を失って彼の頬に当たっていた。


「静、ありがとう。お前のお礼は確かに受け取ったよっ!」


まぁ君ははにかみながら私にお礼を言っていたけど、私は納得がいかず思わず叫んでしまったの……


「私も子供じゃないんだから、頬へのキスで満足するとまぁ君は思っているのっ!?」


「子供じゃないか。最近は金髪姉ちゃんサイズに慣れてしまってなぁ。静もせめて椿姉さんや楓姉さんぐらいのサイズがあればなぁ……」


『ブチッ!』


まぁ君の発言によって私の中で何かがキレる音が聞こえ、私は彼に問いただしていた。


「まぁ君、あなたは私の身体的な面で不満があると言いたいの?」


「まぁ平たく言えばそうなるのかな。」


私の問いかけに素直に答えてくれたまぁ君だったけど、私はキレてしまった。


「誰が平たい胸ですって!?」


「はぁ~?俺はそんなことを一言も言ってねぇだろっ!静、悪いが『村雨それ』返してくんないかなぁ?」


「嫌っ!」


「お前にそんな危険な物を持たせるのに、一抹な不安を感じるんだ。なっ!そんなこと言わず頼むからさぁ。」


「絶対に嫌っ!」


「なぁ静、俺は誰よりもお前を愛しているんだ。」


まぁ君ったら私の弱点につけこんで、そんな大事ことを簡単に言うのね。


私はまぁ君が言った軽はずみな一言を聞くと更に頭にきてしまって、彼から貰った『村雨』の鯉口を切ると斬りかかりながら言ってやった。


「アンタなんて大っ嫌い!死んじゃえばいいのよっ!!」


「静、今のお前はとってもいい顔をしてるぜっ!お前が心から望むのであれば俺は世界中の何処にいても、今日みたいに駆けつけるつもりだ。フロリダにいる圭吾オッサンに黙って帰ってきてるから、そろそろ向こうに帰るけど……元気でなっ!」

アイツは私から逃げながら大声で叫ぶと、まるで五月の青々とした草花を優しく撫でる爽やかな一陣の風のような笑顔を私に見せながら走り去っていた……
ヘタレ作者が愛用していたPCが壊れてしまい、準備していた本編の数話のストックを失ってしまい心を折られた私が気分転換に書いてみました。少しでも多くの方に読んで戴いて感想や評価を貰えたらヘタレ作者も幸せです。しかし携帯での投稿はかなり手間がかかりますねぇ……(汗)
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