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加虐の一環
作者:遠野ましろ
 そりゃ、誰でも驚くだろう。

 気がついた時にはベッドの上。

 素っ裸。

 腕を動かそうとすると、冷たい金属音。手首は手錠でベッドに繋がれて頭上に。

 もがく肘先の間に薄暗い部屋の全体と、近づくそれまた男の裸が見えていることだろう。

 睡眠薬が容易に入手可能なこのご時世。

 二度目とはいえ、簡単に隣人の部屋に上がり、気を許す。愚かな。

 いやあ、なにこれ、離して。

 明るく清楚な女子大生。どんな風に叫ぶのか聞きたいのは山々だが、ガムテープが貼られた口では不可能な話。むぐぐ、と言語化されない息が漏れるだけ。

 抑止する為ではない。趣向だ、単なる。

 身をよじり、訴えてくる。見開かせた瞳。やめて、と。

 足をばたつかすと隙間に見える性器の色。電気を消した夕方の室内でもありありと。

 そうだ、大学で上京したんだっけ。尚更教え込む必要がある。

 柔肌を愉しみながら、俺は圧し掛かる。

 目の前の双丘。手に余るほどの。やっぱり着やせするタイプだ。

 思い切り、握りつぶす。

 叫び。よじらせる。首を振る。

 その反応を見ながら揉みしだく。固い。明らかに男を知らない。

 貫く最初となれる――さらに血流が速まる気がした。

 顔を歪ませ、早鐘を鳴らす心臓、上下する度に大きく揺れる乳房。熱い。柔らかくなってくる。

 足りない。

 たまらず舐めた。舌先で転がす。指で引っ張る。歯で、噛む。

 尖ってきた、そう指摘すると涙ながらに首を振った。

 ふくよかな胸を両手に掴み、顔に挟んでスライド。恍惚に意識が飛びそうになる。

 天井を見上げる抵抗には、乳首をつねることで直視させる。

 よく、見とけ。

 つぶせば正直な本能がうずく。ああ、気持ちいい。

 ん、ん、と息を漏らすのは、気持ちいいからだろ。気持ちいいんだろ?

 言葉に刺激されるほどエスカレートする内情に俺は笑った。

 
 上半身だけでたっぷりと三十分はかけただろう、気の長い俺のこと。

 初めまして、隣に越してきた……黒髪の長い髪を揺らし、口角を上げて挨拶してきた爽やかさなど微塵もない。

 だからこそ穢したくなったのだが。

 諦めたように動かなくなった。遠い目。胸元に貼り付いた髪の毛。

 諦め?

 膝の辺りにいきり立つ俺自身を感じてないのなら、それは酷く楽観的観測だ。事態を把握していない。

 胸の谷間から、臍、下部に向かって舌を滑らす。手も同時に。

 途端、自由な足で暴れた。だが暴れ方を知らない。ひざ蹴りにすれば多少は効果があったものだが。

 膝の裏を持ち上げられ、開かせる、これが現実。

 からだの中心。

 挿れたい、と願望が走った。真っ先に。

 視姦され、ひく、ひく、と動く。

 誰にも触られたことのないそれが、触られるのを待ち望む。

 かぶりついた。口に含んだ。舌で転がした。蜜。唾液。柔らかさ。粘膜。蹂躙。

 唇で挟みこみ、引っ張ると反動ではじける飛沫。

 尖らせた舌をねじ込ませると、拒むように閉ざす、そこを押し入る。

 しっとり、と狭き内部。

 未開の園の先を知りたくなる。

 待てないのが俺の悪い癖だ。

 あてがうと腰を振って抵抗した。泣いて懇願する。言葉にならない響きで。

 お願い、それだけは。

 わざとずらし焦らし俺は嘲笑した。

 考えてやってもいい、口でしてくれんなら。

 その瞬間を狙った。かすかな希望に震えたその瞬間。

 ずぶり、自身を沈みこませる。

 絶叫。絶叫。枯れるほどの絶叫。

 当然ナマだ。

 固い、狭い壁を押しやって柔らかい襞へと。それだけで射精しそうになる。

 お楽しみはこれからってのに。

 中々入りきらない。動くから尚更時間がかかった。動くなって言ってんのに。

 全て飲み込まれて、ああ、と息が漏れた。

 恐ろしく締めつけてくる。熱い熱い内部。

 小さく上下する肩。泣きじゃくり、顔を逸らす冒涜には、ベッドに膝頭を強く強く押しつけることで対処。

 見ろよ。

 結合部が丸見えだ。

 直視する目、怯えが走る。

 再度叫ぶのを皮切りに、抽送を開始した。

 ぐったりとした人形。つまらない。頬を打つ。締めつけが強まる。からみついてくる。

 血肉の音、粘液の音、激しく揺れるベッド、応える上体がその度浮くほどに。

 ああ、いい。

 抵抗が締めつける、何事にも代えがたい快楽。

 ガムテープを力任せに剥がす。痛みに顔を歪め、息を許された瞬間を封じた。

 気の毒なことに、処女喪失と同時に自分の味を味合わされるのだ。

 奥へ引っ込ませる舌。これにも頬を殴った。俺の手は痛むが代えられない。応えろ。

 痛い、痛い、痛い。いやあ。

 こんな言葉しか出てこないのか、初めてで犯されて。

 やがて、その時が訪れる。

 一挙に集中、本格的にスピードを速める。

 意図を悟り、暴れだす。中だし。そんなの当たり前だ。

 ああ、いやあ、やめて。

 本能的な絶叫だった。その叫びに血がたぎる。

 ほとばしる大量を最奥に叩き付けた。脈打つ度にうち震える、その感覚がたまらなかった。

 
 これで終わるなどとは、楽観的に過ぎる。

 こんなのは前哨戦だ。

 繋がったままでからだを反転させて、後ろから攻める。

 違う角度に当たる、その愉楽。

 叩きつく度、尻の肉が、乳房が大きく揺れる。

 淫臭が増す室内、汗が流れ落ちる。べたべたな粘液同士。肉と肉の攻防。

 やめて、と哀願する尻を打つ。更に締まった。面白い。

 骨盤を割らせるくらいの攻めに、とうとうからだが崩れた。

 倒れても離れるはずがない。味わう。完全に圧し掛かると虫の息。

 快楽とないまぜの苦痛ってのはどんなだろう、される側に回ってみたい。

 徐々にスムーズに滑るようになってきた、膣内。

 クリトリスいじりながら、言葉攻め。

 なあ、犯されて感じてんだろ。

 腰をかき抱いて引き寄せると、間もなくして達した。

 精液を受け入れきれず、太ももにまで流れた。そこには血の色が混ざっていた。

 
 立ち、座り、攻め……あらゆる行為に乗じた、あの六時間。

 十年経とうと忘れられない。

 見下ろして目にする、絶叫。

 結合部のアップを撮られたわめき。

 懸命にフェラにいそしみ、髪を耳にかける動き。

 吐き戻しても従順に咥えこむ。

 大量にぶち込まれてひくつく子宮。

 全身精液まみれにされて身を起こす、諦め。

 ああ、美しい。穢されて泣き叫ぶその姿が。

 恐ろしいほどの達成感だった。

 去り際、見せつけた。犯された自分の画像。映像。

 可哀想なことに、抵抗手段は皆無に等しい。

 暗い、冷めた目をしていた。

 翌日、姿を消した。

 一ヶ月もせぬうちに引っ越した。母親らしき人が引き取りにやってきた。

 お宅のお嬢さん、名器でしたよ。

 そう伝える悪趣味は流石に自粛した。

 然る行為に至るのは育ちに問題を持つ人間に限られるなどと言われるが、根拠なき俗説だ。

 教師をする厳格な両親の元に育った、俺は模範的な子供だった。

 いまは結婚して二人の子供がいる。それとこれとは別だ。

 どうでもいい人間もいれば、守り抜きたい人間もいる。

 単にそれだけの話だ。

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