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  誘拐 作者:asami
3・学校で
 月曜の朝、教室に顔を出した葵あさこは元気がなかった。
 自分の席についてからも、両肘を着き、うつろな表情で、ため息ばかりついている。
 授業中もずっと同じ調子だった。
 ――土日のことがそんなにショックだった? あさこなんてあんなこと、どうせ彼氏と何回も経験済みでしょう?
 南さやは昼休みに葵あさこの携帯電話にフリーメールで名を伏せてメールを送ってみた。
『葵あさこ、昨日は何回イッタ?』
 葵あさこの顔が青ざめ、教室を見回している。
 クラスの男子だと思っているようだ。続けてメールする。
『アノときの顔、送ろうか?』
 今度はすぐに返信が来た。
『いや、やめて!』
『じゃあ、次の授業はアソコに鉛筆を入れて受けろ』
『いや』
『やれ、アノ顔をばら撒くぞ』
『はい』
『そのまま放課後、第二視聴覚室へ来い。目隠しをして待て』
 葵あさこは青ざめた顔をして、椅子から立ち上がり、ふらふらと教室を出て行った。
 数分後、教室に戻ってきた葵あさこは、小股に歩き、そっと椅子についた。座る時、僅かに体をびくりとさせ、目を伏せた。
 きっとトイレに行き、指示通りのことを実行してきたのだろう。
 手に入らない葵あさこが自分の言いなりになっている。それも、屈辱的な恥ずかしい行為を命令されて従っている。
それを想像するとぞくぞくした。

 放課後、南さやは第二視聴覚室に続く小さな小部屋、操作室に潜んでじっと待った。
別棟にある、普段誰も行かない教室。
 葵あさこは本当に来るのだろうか。
午後四時、教室内が薄暗くなりかけた頃、葵あさこは現れた。
 教室内に入って来た葵あさこは、不安そうに辺りを見回してから一番前列の椅子に座ると、ポケットから取り出した布で自ら目隠しをした。
「いるんでしょう?」
 葵あさこは震える声でそう呼びかけてきた。
 南さやは彼女に気づかれないよう、極力気配を殺して近づいた。
 それにもかかわらず、葵あさこが僅かな気配に反応し、立ち上がってこちらに振り返ったのだ。
「動くな!」
 一瞬、葵あさこはびくりとしたものの、怯まず、南さやのほうへ片手を伸ばしてきた。もう片方の手で目隠しを取りながら。
「誰なの! 正体を見せなさい!」
 慌てた南さやは足がすくんでその場から動けなかった。
 葵あさこに肩を掴まれてしまった。
――もうだめ! ばれてしまう!
無駄だとわかっていても、南さやは反射的に俯いて首をすくめた。
「えっ? 女の子? ……南、さん?」
 薄暗がりの教室で、肩に手をかけたまま、葵あさこは目を凝らしてこちらを見ている。
「まさか……どういうこと?」
 問いかけられても、南さやは、身を硬くして俯くしかなかった。
 どう思われただろうか。女の子を好きな女の子なんて、気持悪いと思われてしまっただろうか。それとも、馬鹿にする? あなた、おかしいんじゃないの? 変態! 今まで私のことをそんな目で見ていたのね。
 南さやの頭の中は、自分を罵倒する、ありとあらゆる言葉で一杯になった。
「ふうん、そう。南さんて……意外」
 優位な立場になった葵あさこは、ようやく肩から手を離し、南さやを嘗め回すような目つきでじろじろと見た。
 ――軽蔑しているの? いや、そんな目で見ないで!
 南さやは怖くて葵あさこの目を見られなかった。俯いても、彼女の好奇に満ちた視線を感じる。
「南さんて、可愛い顔して酷いことするのね。私の体をめちゃくちゃにして……さっきも……責任とってよ」
「……責任?」
 意外な言葉に、南さやは葵あさこの顔を見上げた。
 葵あさこの瞳は潤み、紅潮した頬をしている。
「そうよ、私のことこんなにしちゃって……」
 彼女に右手をつかまれ、その手を彼女のスカートの下、パンティへと持っていった。
 しっとりした感触が下着の上からでもよくわかった。
「アレ、まだそのまま……授業中、恥ずかしくて、変になりそうだった。こんなの……どうしてくれるのよ」
 葵あさこの責めるような言葉には、怒りの感情は感じられなかった。甘い囁きのような吐息混じりの言葉。
 感じている。
 南さやは、パンティに触れたままの指先を、その部分をさするように動かした。
「はぁっ」
 葵あさこは、よろけて後ろの机に寄りかかった。
「……しても、いいの?」
 恐る恐る訊いた。
「馬鹿……」
 南さやは、その一言で自分の顔がのぼせていくのがわかった。
明らかに、葵あさこは嫌がっていない。それどころか誘っている。
葵あさこを机の上にのけぞらせ、キスをした。
葵あさこの唇も、キスを求めてくる。互いの舌をからませ、キスをしながら、南さやは制服を脱がさないまま葵あさこのブラジャーのホックを器用にはずし、ワイシャツの上から乳房を揉んだ。
乳首がはっきりわかるくらい、葵あさこは感じていた。
キスをやめ、びっしょり濡れたパンティを脱がした。
悪戯した鉛筆が、濡れてとろりと落ちた。
もう、蕾は充血し熱を帯びていた。
机に寝かせたまま、両足を広げさせた。彼女はまったく抵抗しない。
 指を二本、ゆっくりと挿入させた。
「うぁ」
葵あさこの腰が浮く。もう我慢できないとでもいうように。
指を激しく突き上げた。
「あぁっ……」
 葵あさこが、しがみついてきた。
「ひぁっ……だめぇ……ああぁっ」
 激しい指の動きに、葵あさこの体はびくんびくんと波打った。
 まだ息の荒い葵あさこの唇をキスで塞いだ。
それだけで再び、びくりと彼女の体が反応した。
「南さん……こんな、私、いや……」
「本当にいや? 葵さん……綺麗」
 果てることのない南さやの欲望は、葵あさこを何度も絶頂へと導いた。
 葵あさこはもう自分のものだ。南さやはそう思ってにやりとした。
  
「お早う」
「……お早う、南さん」
 葵あさこは、教室で南さやを見るなり、顔を赤らめ、目をそらした。
「葵さん、今日も、一緒にお勉強しましょうね」
「え? ええ」
「あら、南さんと葵さんていつの間に親しくなったの?」
「ちょっとね、話してみたらとっても気があったの。そうよね、あさこ」
 呼び捨てにしてみた。「あさこ」と口にするだけで、心地よい。
 まるで恋人気分。
だが、これは葵あさこの弱みを握った上で成り立っている関係だった。
昨夜の情事の後、南さやは葵あさこにこう言ったのだ。
「彼氏に言われたくなかったら、私の言うことを聞くのよ」
 葵あさこは、我に返ると、泣きそうな顔をして無言で頷いた。
 手に入らないと思っていたものが手に入った。だが、それはうわべだけ。葵あさこの心は手に入らない。
 どうせ手に入らないのなら、うわべだけでもいい。
 放課後。南さやは同じ場所を指定した。
「南さん」
「さやでいいわ」
 おずおずと、葵あさこは教室に入ってきた。
「脱いで」
「え?」
「私の前に立って、脱ぐの。早く」
 葵あさこは椅子に座っている南さやの前にゆっくりと立ち、自分の制服ののネクタイに手をかけた。
「さあ、早く」
 葵あさこの手が震えているようだった。
「もう、もうやめて。昨日は私、どうかしていたの。南さんは、私がそんなに嫌いなの? 私を苛めて、楽しい?」
 ――何を言っているの? 私はこんなにも愛しているのに。愛しくて愛しくて、振り向いてくれないあなたの前で、気が狂いそうなのに!
「そんなこと言うなら、してあげない」
「えっ」
「自分でして」
 言っている意味がわからないとでも言うように、葵あさこは呆然としていた。
「しなさいよ」