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◆52話
 一瞬、記憶を失っていたのか、目を覚ますと体は違う意味で気だるく、甘いうずきの余韻が残っていた。
 バラバラだった思考が段々と集まってきて、何が起きたのか理解出来た頃には、斎藤さんがすべてを処理してくれた後だった。

 私は毟り取る様に目隠しの手ぬぐいを外す。

「さ、斎藤さん、ごめんなさい!」

 1番最初には謝る言葉しか出てこなかった。
 もう、何が何だかわからなくて、ただ泣きたい気持ちだ。

 斎藤さんが私に何をしてくれたのか、それぐらいはわかる。

 いわゆる、フェラチオ……。

 男の斎藤さんが、男の体の私のアレを口でしてくれたのだ。

「隣で辛そうに泣かれるよりマシだ。気にするな」
「でも……」
「楽になったか?」

 優しい瞳が月明かりで光っているのがわかった。
 その瞳に胸がつまる。

「斎藤さん……」
「……松坂」

 ゆっくりと斎藤さんの顔が近づいてきて、私の唇に斎藤さんの唇が一瞬だけ重なった……。

 優しく触れただけのキス。
 私にとってのファーストキスだった。

 斎藤さんにキスされたが、山南さんにキスされそうになった時に感じた恐怖はない。

「お前は元気な方がいい」

 頬に斎藤さんの甲がすべり、涙が拭われる。

 こうして涙を拭われたのは2度目だ。
 申し訳なさと、感謝の気持ちが一度に心を満たす。

「また辛かったら俺がしてやる。だから笑っていろ」

 それだけ言うと、斎藤さんは自分の部屋に戻って行った。

 パタンと襖が閉まるまで、私は斎藤さんの背中を見つめていた……・。






 あの夜のことがあってから、私はまた高熱を出して寝込んだ。
 何度か気づいて目を覚ます度、違う顔を見たような気がする。

 良く見たのは、土方さんと斎藤さん、原田さんだった。

 目をさましても、すぐに眠りが訪れる。
 眠りに落ちる寸前に、激しい体の痛みに顔をしかめたが、体の痛みより眠気の方が強かったのだ……。