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◆48話
 声が聞こえ、道の向こうから斎藤さんが走って来るのが見えた。

 姿の見えない私を探しに来てくれたのだろう。
 しかし、私の場所まで距離があり過ぎる。

 男は方を斬られて刀を持つ力が弱まっていることを知って、私を斬れると確信しているかのような表情を浮かべていた。

 すぐに刀が振り下ろされる……。


 ガイ〜ン!


 鈍く金属音が響く。

 刀を振り下ろした男は、驚いたような表情を浮かべていた。

 私が左で刀を受け止めていたからだ。

「生憎ですが、本当の利き腕はこっちなんです」
「なんだと……」

 刀を押して男を振り払う。

 そして、側に来た斎藤さんの方へと逃げる。

「斎藤さん!」

 斎藤さんは私を上から下まで見て、他に怪我がないか確認してから男に視線を向けたことに気づいた。

 守られていると感じた。

「長州の者か?」
「貴様は、新選組の斎藤一かっ!」
「いかにも」

 すっと、斎藤さんが刀を構えなおす。

 斎藤さんに刀を振るわせれば、男は殺されてしまうだろう。
 けれど、殺さないでと言うことは出来ない。

 斎藤さんだって自分の命を張って男と対峙しているのだ。

「……」

 じりじりとした緊張が漂う。

 男が先に動いた。
 斎藤さんは最低限の動きだけでその刀をかわし、男を斬った……。

「うぐぉ!」

 くぐもったような悲鳴を上げて、男が右肩を押さえる。
 男が斬られた場所は私と同じ場所だ。

 わざわざ右肩を斬らなくても、他にも斬れる場所があったことは見れてばわかる。

 もしかして私の敵と言うか、応酬してくれたのかも。
 
 男は私と違って利き腕だったようで、その後、殺されずに斎藤さんに捕まった。

 斎藤さんは気を使って、私の前で殺さないでくれたのかもしれない。
 口には出さないけれど、なんとなくそう思った……。

 捕まえた男の他に、もう1人長州の藩士が捕まった。
 今回の火事はこの2人が引き起こしたことらしい。

 男達を取調べ当局に引き渡す時、私と遭った男が、1つだけ教えてくれた。

 カグラチは京に潜伏して、何か大きなことを引き起こそうとしているらしい。

 その言葉を受け、潜伏中の長州人探索の為に、島田さんや山崎さんに加え2人の監察方が動き始めた。

 カグラチ トラヨシ……。
 文字は神楽地 虎義。

 ある日突然長州藩に入り、それから急速に力をつけてきているらしい。

 桂さんとか、中心となっている人物とは別行動が多く、また随分な過激派と言う。

 神楽地。

 彼こそが、今後私と深く関わる人物となっていくのだった……。