警告
この作品は<R-18>です。
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◆47話
まず、逃げる人達がパニックになっているので、その人達を誘導する。
大きな声をあげて、逃げる方を指し示すのだ。
こんな時、火事のどさくさに紛れ、色んな事件が起こり易い。
そのために新選組が活動する。
私が汗だくになりつつ、逃げ惑う人を誘導していくと、目の前に刀を腰に差した男が立っていた。
その男は私を見て驚いたような表情を浮かべている。
「楠……」
ざわめく声や、悲鳴が聞こえる中で、はっきりとそれが聞こえた。
見た目はいかにも武士って感じだ。
年齢は私より上で、土方さん達ぐらいだろう。
「楠、貴様! 何故新選組の羽織など着ている!」
憎むような瞳が私に向けられる。
楠さんのことを知っている侍ということは長州の隊士だ。
さりげなく周りを見るが、誘導しているうちにバラバラになったのだろう。
浅葱色の羽織が見えない。
まずい。
そう思いつつ腰を落とし、いつでも刀が抜けるようにする。
取りあえず、ここは楠さんの振りをしてみることにした。
「お前こそ、ここで何をしている。……まさか、この火事もお前達がやったのか?」
「すべては天子様の恩為!」
「罪もない人の命を奪う事が、天子様の為か?」
「何を言う。天子様の為に命を奉げられるのだぞ?」
相手の刀が鞘から抜かれた。
私も覚悟を決めて、自分の刀を抜く。
正直に言えば、もしまた殺してしまったら……そう思ってしまうと怖い。
現状的に考えれば、私の方が殺される確率が高いんだけどね。
剣道は自分の精神を高めるものであって、人を殺す太刀筋はない。
例えば、面。
刃の3分の1ぐらいの場所で、頭を打つ。
人間の頭を勝ち割るには刀では不十分だ。
殺すなら額などを深く切った方が早い。
小手は刀を持てないようにはできるが、反撃に遭う可能性が強い。
慣れていて私が使うとすれば胴なんだろうけど、それには相手の懐に入らなければならなかった。
背中に冷たい汗が流れているのがわかる。
相手は人を斬るのに慣れている侍だ。
それに対して、私は人を斬ったことがない。
圧倒的に不利な状況だった。
斬り合いになる前に、1つだけ確認しなければならないことが私にはあった。
「カグラチはどうした?」
「神楽地?」
相手の顔が怪訝そうになる。
もしかしてこの人はカグラチを知らないんだろうか?
「神楽地ならこっちにはいない」
今、『こっちには』と言った。
「では、今回のこの件にカグラチも関わっているのか?」
「いや、関わってはいない。違う場所に潜伏している。そんなことを聞いてどうする?」
「カグラチに会いたいからだ」
私がそう言うと男は少し考えたものの、改めて刀を握りなおす。
「どうせお前は裏切り者だ。教える義理はない」
一瞬聞きだせるかと期待してしまった。
もう何を聞いても話さないだろう。
相手からは明確な殺意を感じる。
私は刀をしっかりと握った。
殺したくない。
その気持ちが私を追い込む。
相手は躊躇しないで動けるのに、私は躊躇してしまうかもしれない。
そう思っていても、やるしかないのだ。
キン!
金属音を立てて、私の刀が相手の刀を受け止める。
相手の動きを良く見なきゃ。
2、3と刀を受け止め、相手から離れる。
……暑い。
火事が近いせいもあるんだろうけど、息があがって、汗が流れた。
また男が刀を振り下ろす。
それを見極めかわし、また相手と距離を保つ。
こんなことしててもきりがないのはわかる。
こちらが一方的に逃げていても仕方ない。
何とか動きを止めないと。
そう思ってはいるけど、そう簡単には思い通りにならない。
また男の刀を受け止める。
何度も鋭い金属音がして、気づくと、私の方が追い詰められていた。
すぐ後ろは誰かの家だ。
男は私を追い詰めて余裕が生まれているのか笑っている。
「くぅ」
歯を食いしばって、ゆっくりと横へと歩く。
「死ね!」
男の刀が振り下ろされ、避けようとしたのだが、右肩に激痛が走った。
あとは焼けるような痛みがする。
斬られた。
刀を持つ手が痺れる。
「松坂!」
この危機的な状況に聞き覚えのある声が聞こえた。