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◆22話
 町の灯りは消え、辺りは薄暗く、月明かりを頼りに見られる程度。
 その中で動く人影を数人見つけた。

 何をしているのかと気になって近づいてみると、身なりの粗末ないかにも悪人ぽい様相の男など4人、ひそひそと話している。

「いいか、声を上げられないように、さっさと殺せよ? 顔なんて見られてもかまわねぇ。女、子供も容赦無く皆殺しだ。持てる限り金目のものを持ったらさっさととんずらするからな」
「ああ」

 男達が一斉に視線をある店先に投げる。
 その店構えには私も見覚えがあった。

「裏口から押し入る。卯田、お前は表を見張れ」
「お、おう!」

 貧相な体格の男が返事したとたん、私は目が醒めた。

 今見たのは夢ではない。
 私は素早く布団から起き上がった。

 不思議な夢を見るせいなのか、ごくたまにだけど正夢と言うか、今起きていることを見ることがある。
 その時、これは夢じゃないとわかっていて、まるでそこにいるかのように見ることが出来た。

 まだ強盗は店に押し入っていない。

 あの店には子供が2人いた。
 今日、ここに連れてこられる時通った店で、店先で子供がいたことを覚えていたのだ。

 ここから歩いて10分。
 走れば5分程度で着くはずだ。

 今行けば間に合う!

 私は素早く寝間着から着替えはじめた。

 本当は着替えている時間さえもったいないんだけど、寝巻きは普通の着物で、これじゃ走りずらいし動きに制限もある。

 強盗を相手にするのだ。
 着替えるしかない。

「土方さん、斎藤さん! 私出かけます!」

 布団の上で着替えながらそう大きな声を出すと、すでに起きていたのか、隣の襖がスパン!といい音がして開けられ、土方さんが立っていた。

 私が着替えているのを見ると睨みつけてきたが、着替えていたので、すぐに視線を自分の着物に戻す。

「何をしている!」
「出かけるんで、私の刀を返してください! 出来れば腕っぷしのある人を2人ぐらい貸してもれると助かります」
「なんだと?」

 訝しげな声。
 まあ、突然のことだし仕方ないだろう。

「今日ここに連れて来られる途中に菱沼って大きなお店がありました。ここから歩いて10分ぐらいの場所で、暖簾の色は草色で、白抜きで菱沼と書いてあるお店です。そこに今から強盗が入ります。男が4人。店にいる全員、女子供もすべて殺してから金品を奪うそうです」
「……何言ってやがる?」
「信じる信じないは後でいい! 人の命がかかっているんです。四の五の言わずに刀を返してください!」

 やっと袴の紐を結び、土方さんに向き合う。

 こんなことをしている時間なんてない。
 ここから走っても5分くらいかかるのだ。
 今すぐに押し入られて間に合うかどうかの瀬戸際だろう。

 私は動かない土方さんの前に行って手を出す。

「早く刀を!」

 そうせかしたけど、土方さんは驚いたように私を見るだけだ。
 埒があかない。

「土方さん、ゴメンなさい!」

 そう謝って、次の瞬間。
 私は土方さんのスネを思いっきり蹴っ飛ばしてやった。

「てめぇ……」

 苦しそうに前かがみになり、刀を持った右手が前にきた途端、その刀を奪った。

「おい!」
「出来るだけ早く応援をお願いします。私、人なんて切ったことないんですから!」

 止めるのも聞かず、私はそう言い捨てて刀を持って廊下に出る。

 草履を探す気もないので、足袋のまま下に降りて走り出す。
 するとすぐ後ろで誰かが砂利を踏んだ音がして振り向いてみれば、斎藤さんが私のすぐ後ろにいた。

 どうやら話を聞いていたらしい。
 寝巻きのまんまって感じだけど、来てもらえるだけでもありがたい。

 私は安心してそのまま記憶を頼りに菱沼屋へ向かった。

 こんな時、男の体で良かったと思う。
 全然息が乱れないし、しかもこの体、足が速い。