警告
この作品は<R-18>です。
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第三話 不安
その日の夜は何故だか寝れなかった。
亮輔に初めて告白された部屋の入り口。
亮輔に茶化された脱衣所。
そして初めて亮輔が抱いてくれたベット。
その一つ一つが僕の大事な宝物。
痛かったけどちゃんと最後までしてくれた。
僕の為に涙を流してくれた。
初めて気持ちが通じた部屋で今日は僕一人だけ。
それが僕の眠気をさらっていく。
ただひたすら、ベットに座ったりお風呂に入ろうとして赤くなってやめたり、かれこれ色んな所を十秒間隔位で四時間ほどウロウロしてる。
朝もやの中で寝不足の為目の下に豪華な隈が出来上がった僕の顔が今手洗い場の鏡に映っていた。
「やっぱりこの部屋は駄目だ。恥ずかしくておちおち寝てられない」無理やりこの部屋を空けて貰って強奪するように部屋を確保した優夜自身何故この部屋じゃないと嫌だったのか今ではわからない。
背広に腕を通しそのままホテルをチェックアウトして帰途に着く。
電車に乗り込んでもまだ自分がどうしたらいいのか、それすらも浮かんでは来ない。
電話のバイブがなり始め急いで公衆電話が設置してある場所に向かう。
着信記録から康宏の携帯に折り返しの電話を掛けるとすぐに康宏が出てきた。
「康宏? どうしたの? 急に電話してきて」
「優夜兄ちゃん今何処? あー! 亮輔兄ちゃん邪魔しないで! これ一応僕の携帯なんだからね! 国久ぁー亮輔兄ちゃん止めてよ! 」何か喧嘩のドタバタに混じって亮輔の叫び声がかすかに聞こえてくるが何を言ってるのか定かじゃない。
「亮輔近くに居るの? 亮輔ちゃんとご飯食べてる? 体調悪くなってない? 」
「それは大丈夫。亮輔兄ちゃん食べないって言い張ってたけど交換条件突きつけたら食べてくれたから」
……康宏…なんて怖いことしてるの?
国久以上に亮輔が怒ると怖いんだよ?
「それで、優夜兄ちゃん電車の音してるから新幹線に乗ってるんだね。よかった。今日は国久も亮輔兄ちゃんも優夜兄ちゃんも皆休みになったらしいから安心して帰ってきてね。それじゃ」矢継ぎ早にそれだけ言うと慌しく通話が切れた。
多分康宏に亮輔が怒鳴って国久と康宏で亮輔に言い返してるのが丸判りなのが簡単に想像できて面白い。
そこで、ふと思い出した。
今日は平日で康宏の学校は七時までに家を出ておかないと遅刻のはず。
今の時間は八時半。
という事は……ずる休み?
一人で黙々と探偵もびっくりな程の推理を頭の中で繰り広げ、今更昨日から食べてないことを思い出す。
「もー。亮輔ばかり心配して僕自身が食べてなかったら駄目じゃん! 」一人突っ込みをしながらお弁当を売ってる人からお弁当を二つ買うとそそくさとお弁当をかき込む。
おいしいかおいしくないかなんてどうだっていい。
だってこれは誰か一人に対しての愛情が入ってる訳じゃないだろうし。
何とかお昼過ぎには家の前に着き玄関の鍵を開ける。
すると中からいきなり亮輔が飛び出してきて抱きしめてくるものだからご近所さんに見つからないようにさっさと入る。
「ただいま。康宏ごめんね。国久もごめんなさい」玄関口で仁王立ちしてる康宏と国久に謝って亮輔を引きずりながらリビングに行く。
「お帰り。亮輔兄ちゃん! 優夜兄ちゃんから離れて! 全くどっちの方が年上何だかわからないよ! ねー国久」国久に言う時だけは猫なで声でニッコニコの康宏。
当然か。僕だってそうだもん。
何とかリビングの椅子に座ると康宏と国久も自分の席に座って問いただしてくる。
「優夜。一体何があったんだ? 大体の事は康宏から聞いたけど。亮輔に嫌な事されたのか? されたんだったら俺に言えよ? 今すぐこのバカぶん殴ってやるから」意気込んで聞いてくる国久の横で康宏の国久に向く視線が怖い。
(康宏ってこんなに怖かったっけ? もっとホンワカしていつもニコニコ笑顔で人懐っこくて優しい子だった気がする。そうか。康宏もやきもち妬いてるんだ)人のいい所も悪い所も見つけると僕は無条件に嬉しくなってしまう。
だっていい所も悪い所も全部含めてその人だから、何かを知るって事はその人自身を知るって事に繋がってる気がする。
「国久ぁー優夜兄ちゃんばっかり構ってると僕本気で怒っちゃうよ? いいの? 」康宏の声とは思えないほどの低い声が聞こえた途端国久は首から錆びた鉄を擦り合わせるような音が聞こえそうな程カクカクと康宏の方に首を回す。
康宏の顔を見れただろうと思った時には国久の顔面に康宏のグーパンチが思い切り当たり国久は椅子から転げ落ちた。
「国久なんてもう知らない! それと! 亮輔兄ちゃん! いつまで引っ付いてるのさ! 優夜兄ちゃんから聞いたけどお弁当無駄にしちゃったんだって? 優夜兄ちゃん毎日太陽も出てない時間に目を擦りながら起きてきて出勤までに二人分のお弁当と朝ごはん作ってるんだよ? その気持ち無駄にするなんて僕は許さないからね! 今回だけは僕本気で怒ってるんだから! 」国久のほうから視線を亮輔側に向けた途端亮輔の腕が僕を抱きしめる力が増す。
昨日こっぴどく怒られてあの亮輔でさえ康宏の怒りは怖いのだと瞬時に判断できる。
「それに亮輔兄ちゃんは誤解して優夜兄ちゃんのお弁当無駄にしたって意味でも僕は怒ってるんだよ? 昨日の夜お父さんに問い詰めたら白状してくれたよ! 優夜兄ちゃんは亮輔兄ちゃんの為にお見合いその場で断ったんだって! 何で優夜兄ちゃんに直接聞かずにお父さんの嘘で勝手に勘違いして優夜兄ちゃん虐めるのさ! 」ヒートアップする康宏にそれまでびくついてる亮輔に気を取られてた僕がそっと言う。
「康宏ありがとう。ごめんね。でも、もういいんだ。僕はお見合いなんてしない。でも、亮輔自身どうしたいのかは判んないけど社長って立場考えると悩んでるみたいだし、どっちにしても亮輔は亮輔の人生で僕は僕の人生なんだよ。毎朝目を擦りながら作ってるお弁当だって僕が勝手にしてる事なんだからさ」康宏に笑いかけながらそっと諦めたような言葉を紡ぐ。
「優夜兄ちゃんがもういいって言うなら僕はこれ以上言わない。けど、これ以上優夜兄ちゃん悲しませたり苦しませたら僕が許さないからね! 」それだけ告げると康宏は国久を放置してさっさとリビングを出て行った。
「康宏。待ってくれよ。頼むから」鼻を押さえて国久は康宏の後を追って出て行く。
康宏が出て行った時に亮輔の腕の力が弱まり僕の膝の上にストンと落ちる。
「亮輔も嫌な思いさせちゃってごめんね。あと、お見合いしたかったら僕に構わずしていいよ。亮輔の人生は僕が決める事じゃないもんね。僕がお見合い断ったのは僕自身が一つ人生の選択肢を決めただけだから。それじゃ、背広暑っ苦しいから部屋で脱いでくるね」亮輔をリビングに残したまま自分の部屋へと歩いていく。
自室に戻り鍵を閉めて、ただ黙って思いに馳せる。
(もし僕が女の子だったら何にも問題なんて起きなかっただろう。でも、付き合えてたかどうかは謎だけど。亮輔やっぱり女の子の方がいいの? 離さないって言ってたけど亮輔にお見合いをどうするのかなんて僕から聞くと絶対急かしてるように聞こえるだろうし、嫌な奴に見られそう。だから僕からは聞けない。でも、知りたい。そして知るのが怖い。もし亮輔がお見合いするってあの優しい声で言われたりしたらその場で泣いちゃいそう。僕って本当に亮輔が居ないと脆いから……)考えてる間に涙が頬を伝っては落ちまた伝っていく。
床に落ちていく涙を拭う事の無いまま背広を脱いでパジャマに着替える。
着替え終わるとそのままベットに倒れこんで流れる涙を隠すように静かに眠りの泉へと落ちていくのであった。
読んでくださった皆様ありがとうございます。
今回は優夜大人しかったです。
優夜の代わりに康宏が大暴れしてくれましたが。。。
ラストはとんでもない爆弾を用意済みですので是非とも最後までお付き合いください。
それでは次話「終・永遠に大好きだよ」でお会いしましょう。