警告
この作品は<R-18>です。
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第二話 誤解
亮輔は今父さんの会社を継いで社長に昇進してる。
当然と言えば当然。
でも、社長だからお見合いも僕みたいに簡単に断る事は難しいのだろう。
僕なんて亮輔しか見えてないからすぐに断っちゃうけど、亮輔は考えてる。答えを自分で探してる。
まだ僕を捨てるって決まってる訳じゃない。
僕の第一志望は当然社長の側近である秘書。
でも、受かったからと言って秘書になれる訳じゃない事も知ってる。
多分亮輔が結婚なんかしたら耐え切れなくて辞めちゃうだろう。
それでもいい。
亮輔が考えて出した自分の道なんだから。
僕が亮輔の人生を束縛していい理由にならない。
だから亮輔の傍で隣で亮輔の決めた道を一緒に見たいと思う。
例え離れたとしてもそれが僕に出来る最後の愛情だと思うから。
「社長。お茶が入りました。どうぞ」会社は会社なので気安く亮輔なんて呼べた雰囲気じゃない。
落ち込んで一ヶ月。
何とか第一志望の秘書にはなれたけど会社とプライベートはちゃんと分けなきゃ一人前の社会人とは言えないだろう。
「ありがとう。優夜。少し時間ある? 」社長室には今二人きり。家に居る時のように話しかけてくる亮輔に嬉しく思う反面その場が社長室となると僕も家に居る時の話し方はご法度って事位、弁えてる。
「社長、何でしょうか? 私が何か失態を致しましたか? 」社長室で話すのと一緒の話し方をしながら冷静に答えているが内心では慌しく混乱の渦に飲み込まれていく。
(亮輔。ごめんね。本当は家に居る時みたいに、何? 亮輔。どうかしたの? って聞きたいのにここが会社で社長室って思うとどうしても家で話すような言葉じゃ話せないの)気持ちの中では混乱の中泣きが入りそうな勢いを見せるものの表情には何一つ見せてはいけない。
仕事に私情を挟むのはもってのほかなのだから。
「いや。何でもない。次の会議は何時からだ? 」そんな事僕に聞かなくったって頭のいい亮輔なら一年位先の用事だって覚えてるのに。
「十三時から企画部の会議が入っております。その後は」
「わかった。もう下がっていいよ。ありがとう」それだけ答えると亮輔は社長室のデスクへと顔を下ろした。
僕も亮輔に一礼してそっと社長室の隣にある秘書室へと戻っていった。
ここ最近は亮輔とすれ違いばかり。
凄く寂しくて辛くて悲しくて、やるせない気持ち一杯だけど、社長の肩書きが重く圧し掛かってる亮輔と比べれば僕のやるせなさ位大した事じゃない。
「社長どうだった? ここ一ヶ月位何か悩んでいたみたいだけど優夜君は何か知ってる? 」同僚で先輩の女性秘書が話しかけてきた。
「普通でしたよ。一ヶ月位ですか? 何があったんでしょうね? 僕も詳しい事はわかりません。すみません」先輩に頭を下げ、そのまま自分のデスクに着き仕事を始める。
(一ヶ月位って丁度お見合いの話があった時位か。悩んでる理由なんて知ってる。だけど玉の輿狙ってるのが丸見えな先輩に教えてやるものか! 亮輔が自分で決めなきゃ駄目なんだからお前に言ったらますます亮輔悩んじゃう! )
口を硬く閉ざし、ひたすらに仕事を片付けていく。
僕が秘書になってからお茶出しや書類を届けるのも亮輔の一存で僕一人が社長室に出入りしてる始末。
他の人が向かおうものなら亮輔が自分から秘書室に飛び込んできて僕のデスクにある仕事道具を掻っ攫い社長室に持って行き僕一人だけ社長室出勤にされた事もある。何とか僕が頼み込んで秘書室には戻してくれたけどそれから僕以外の秘書が社長室に入る事は出来なくなってしまった。
お昼休みの時間になり周りの先輩たちはそれぞれ外に食べに行く。
皆が居なくならないと亮輔と二人だけでお弁当食べれないから皆が出て行くまで僕は仕事を続け、誰も居なくなったのを確認してから二人分のお弁当を社長室へと持ち込むのだった。
「亮輔? 入ってもいい? 」ノックをして小さな声で亮輔に呼びかける。
「いいよ。おいで」中からのんびりした返事が返ってきてそっとドアを開け亮輔の笑顔を見る為亮輔を探す。
亮輔は僕が秘書室へと戻って行った時と同じくデスクの上で書類に目を通していた。
その姿はやはり簡単に近づけないような空気を纏っていて社長室に数歩入った時に僕の足を止めさせた。
それに気付いたのか不思議そうに亮輔が顔を上げて近付いてくる。
僕の前に立つと腰に手を回しそっと唇を奪われる。
その唇は何年間も我慢していたように性急に僕の口に入ってきて強引に口の中を暴れ僕の中を侵食し味わいつくす。
口の端からは唾液が混じりあい垂れていく。
それでも足りないと言いたげに意地悪な手は下半身で主張してる中心に触れ始め、空いている手は僕を逃がさないとお尻に伸びて感触を楽しんでくる。
会社のお昼なんて一時間位しかないから、エッチなんてしてたらお昼ご飯なんて食べる暇も無い。
もしかするとお昼休みなんて過ぎ去って会議に遅れるかもしれない。
まだ二時間半もあるのにって皆思うだろうけど、亮輔はねちっこいから一回のエッチだけで最悪二時間か三時間位掛かることなんて普通だよ?
でも、僕も我慢出来なくなってきた。
体の中で亮輔が欲しいってざわめいて、泣いてる。
亮輔の楔に繋がれて独占されて何処にも行かないように亮輔から離れられないように縛って欲しいって体が泣くんだ。
お見合いの話をされた時の様にあんな一人で寂しい思いしたくない。
「りょ・・・亮輔。したいのは僕も一緒・・・だけどさ、お弁当だけ机に置かせて? 」僕の声に熱が上がってるのが自分でも判って恥ずかしい。
だけど、亮輔に触れられるだけでキスされるだけで僕の欲望に火が付いちゃうんだから仕方ない。
性欲とお弁当は違うから、毎朝早く起きて亮輔の為だけに頑張って作ってるお弁当を無駄にはしたくない。
愛情たっぷりの愛妻弁当でいいのかな?
愛妻弁当でもなんでも、愛情たっぷりには変わりないからちゃんと亮輔に食べて欲しい。
愛情もお弁当も僕自身でさえも全てを食べて味わって欲しい。
亮輔の中から僕が消えてしまわないように。
亮輔にお迎えが来るまで亮輔と僕を切り離せないように。
「いいよ。置いておいで。でも、そこまで待てないかもよ? 」意地悪そうに言って、亮輔の手は僕のバックルを外し、スラックスを脱がしに掛かる。
「ちょ! 待った! 少し位時間頂戴! じゃないとお弁当落ちちゃう」慌ててズボンが落ちないように右手で掴んで左手を器用に近くにある応接用の机に手を伸ばしお弁当を置こうとする。
それでも、亮輔は止める事なんてなくて、お弁当を置き終わる前に下半身を素っ裸にされた。
「優夜は会社でこんな風に欲情してどうしてそんなにスケベになったのかな? 」楽しそうに笑いながら僕の中心で自己主張してる物を力強く握ってくる。
「いたいっ! 亮輔! そんなに力入れないで。お願い。痛いよぉ」痛みで溢れてきた涙を流しながらお弁当になんて気を配れなくなった僕は両手で亮輔の手首を握って懇願した。
「優夜のは本人と違ってとっても素直なんだな。お見合い受けるんだって? 俺を捨てるの? 優夜。お前だけは絶対に離さない。嫌がっても逃しはしない」力を緩めるどころかもっと強く握ってきて僕の敏感な所を舐め始てくる。
快感と痛みで下を向きながら目を瞑ると最後に見えたのは床にばら撒かれたお弁当の残骸。
亮輔の為に眠い目を擦りながら毎朝作ってたお弁当。
亮輔の喜ぶ顔だけが楽しみで嬉しそうな顔が目に浮かぶようで頑張って作ってた。
でももう床に散らばってしまった今じゃお弁当で亮輔の喜ぶ顔が見られない。
何でお弁当なんて作ってるんだろう?
何で今日作っちゃったんだろう?
何で床に散らばってその上亮輔不機嫌なんだろう?
もうわかんない。
気がつくと亮輔を突き飛ばし秘書室に逃げ込んで行ってた。
(亮輔のバカ! アンポンタン! トンチキ! 鈍感! 大嫌い! でも、大好きだよ。何でいっつもこうなんだろう? 何で素直に喜べないんだろう? 僕だって亮輔としたかったはずなのに。亮輔の傍に居たいのに……)そのまま誰も居ない秘書室で身なりを整え会社の近くにある食堂へと就職して初めて足を向ける。
お昼休みが終わって秘書室に戻ってきた僕はお茶も書類も全て先輩にお願いしてその日の業務を終えた。
その後は亮輔と顔を会わせにくくて、近くのカプセルホテルに足を向けながら携帯で康宏に電話する。
「もしもし。優夜兄ちゃん? どうしたの? 」元気一杯の声が聞こえてきた。
「康宏。ごめん。母さんに今日は外で用事があって泊まるって伝えてくれる? 」出来るだけ普通に声を出す。
「へ? 仕事で何かあった? 今日は国久も残業で遅れるらしいから話してよ。力になれる事はするからさ」心配そうな少し暗めの声が聞こえてきて涙が溢れてきた。
「ごめん。また後で連絡する。あと、母さん心配するだろうからちゃんと言ってね? こんな涙声って言っちゃ駄目だよ? 」声が震えて泣いてるのさえ康宏に伝わってるだろう。
亮輔と何かあったと伝えてるようなものだ。
(僕って卑怯。亮輔に言えないからって康宏に言おうとしてる。助けてって伝えたいのは一番に亮輔のはずなのに)
「わかった。今は聞かないことにする。でも、ちゃんと教えてね? 教えてくれなきゃ国久に泣きついて聞き出してもらって大事にしちゃうからね? 」最後の方はイタズラっぽく言いつつ、それでも心底心配してくれてるのがわかって少しだけ気持ちも落ち着く。
「うん。それじゃ、また後でね」そのまま通話を切り、僕は近くのカプセルホテルに足を進めた。
翌日、出勤の時間前に仕事場に欠勤の連絡をした。
当然身体は何とも無いからずる休み。
僕はそのままフラフラとスペースワールドに足を向ける。
一番楽しかったあの頃に戻りたくて。
何時間も新幹線に乗り続けスペースワールドについた頃、何故か作者がホームで待ってた。
「もう今更喧嘩なんて買う気も無いよ。お願いがあるんだ。僕の事もう書くの止めて。公開するの止めて。お願いだから」
「わかった。公開はしてないから安心しろ。ただ、原本だけは残させてもらう。お前たち二人いやお前が関わる全ての者はあれによって成り立ってるんだからな。それとここでもう会うことは無いだろう。俺もそろそろ天命かもしれないからな」そのまま背を向けて立ち去っていく。
「ありがとう。そしてごめんなさい」その言葉は届いたのかどうかもわからないけど、ちゃんと届くだろう。
彼の手に原本があれば。
そのままスペースワールドの入り口まで辿りつき、お金を払って中に一人で入っていく。
古びてはいるが当時の面影がちらほらと見え隠れして何故かますます気分は落ち込んでいく。
大人になると責任も仕事も一杯で、息苦しくって、悲しくて。
好きな人の気持ち一つ見えやしない。
何で大人なんてなったんだろう?
僕はあの頃のままが良かった。
何も変わる事無く楽しかっただけのあの日々がずっと続くと思ってた。
亮輔が僕の隣から居なくなったら僕は生きてる価値なんてこれっぽっちも無い。
亮輔が隣に居てくれるからずっと一緒って思えたから僕は笑ってこれた。
僕は何で息をしてるんだろう?
悩みにとっぷり浸かってる間に既に空は茜色に染まり、周りの人達は帰り支度をして出口に向かってる時刻だった。
携帯がいきなり鳴り出し、僕はスペースワールドの一番静かな近場に身を隠し、電話に出る。
「もしもし? 」
「優夜兄ちゃん? 大丈夫? 仕事休んだって? さっき亮輔兄ちゃんドタバタ血相変えて帰ってきたよ? 俺のせいだって言いながら」
亮輔から何度も電話掛かって来てたけど話す事なんて出来なくて亮輔からの電話は全て出なかった。
「そう。亮輔にちゃんとご飯食べさせてね? 僕が居ないとすぐご飯抜いちゃうんだから」何でだろう? 本当に僕の頭って何処をどう切っても亮輔の事しか出てこない。
亮輔に染められてる。
嬉しいけどこんな時は非情な程悲しくなる。
「それは別に大丈夫と思うんだけど、優夜兄ちゃん一体何があったの? もうそろそろ僕も限界なんだけど。って言うより僕じゃなくて国久が暴れて……昨日の夜国久止めるの苦労したんだよ? 帰ってくるなり亮輔兄ちゃんに殴りかかって大変だったんだから! 今晩は理由国久に言わないと僕でも止めれないよ」涙声になりながら昨晩の状態を必死に伝えてくる康宏。
「ごめん。心配掛けちゃったね。あのね、昨日のお昼……」それから僕は康宏に包み隠さず全て話した。
エッチにもつれ込みそうになった事も亮輔を突き飛ばしちゃった事も。
でも、仕事が終わってから後の事は言えなかった。
「そっか。優夜兄ちゃん辛かったんだね。国久が僕にそんな事したりしたらその場で殴りつけて踏みつけて怒鳴り散らして暴れてたと思う。でも、優夜兄ちゃんは我慢したんだよね? 亮輔兄ちゃんの事一番に大好きだから。全て投げ捨てても一番だから我慢したんだね。やっぱり優夜兄ちゃんは凄いよ」優しい言葉を言ってくれる康宏に今まで我慢してた分の涙が一気に溢れ出して嗚咽とも絶叫とも言えない声を上げて泣いた。
落ち着いた頃康宏はもう一晩だけゆっくり気持ち落ち着けて帰っておいでと告げると通話を終わらせる。
その後は亮輔と初めて繋がったホテルで僕の初めてを貰ってくれた部屋に一人だけで泊まった。
読んでくださった皆様ありがとうございます。
のんびり書いてたら何とか出来ました。
大まかなストーリーは決めていて、それでも少しだけ脱線していますがこれからも読んで下さると大変ありがたいです。
それでは次話「終・永遠に大好きだよ」でお会いしましょう。
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