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九 朝
 朝の陽光に静音ははっと起きた!

 見ると修理は床には居ない!
 不覚!
 障子を開けると籐の籠に麻の上物の小袖と短袴が入っている。着ると静音の身体にぴたりだった。

 押っ取り刀で庄左右衛門の部屋に駆けた!
 この屋の主の部屋は、床の間に鎧櫃に乗せた南蛮兜に赤糸威の見事な鎧、その横には種子島三丁、太刀拵えの大小が置いてある。すわという時はこの場で出陣するためだ。

 上座に庄左右衛門が座り、その前に修理がいる。なにやら書状を前に話している。
 静音は修理を見て安堵し、部屋の前の廊下に正座した。
「おお!静音殿!うむ、その衣服、丁度良かったようじゃな」
「数々のおもてなし、本当に有り難う御座います。して昨夜の約束、果たしとう御座います。なにとぞお庭をお貸し下さい!」
 修理は横に少し動いて、この屋の主に背を向けぬ様にして静音を見た。その目は優しく愛しき人を見る。
 そのような目で俺を見ても容赦はせぬ!
 静音は怒りの目で睨み返した。
 その端座して睨み居る姿は興福寺の阿修羅像が生身の姿で降魔ごうまの剣を振りおろさんとする如く。

 庄左右衛門が言った。
「静音殿。しばしお待ちくださらんか」
「待てとは!」
 庄左右衛門は、前の書面をすっと前に滑らせた。静音は部屋に入りそれを読む。裏には男と女の絡みを思わせる落書きがしてある。

 意趣状
 海道修理殿
 弟佐久間一雲の仇
 尋常に勝負申し入れ候
 御加勢いかにてもご自由
 七月二十二日卯の刻(午前六時頃)
 天寧寺境内
      佐久間五部浄



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