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七 俺と立ちあえ!
 皆呆気にとられた。

 修理は鼻を押さえて頭を抱えた。
 庄左右衛門は言った。
「静音殿。今日は遅い。明日になされよ。見れば旅でお疲れの様子。今晩は風呂に入り、飯を食べてゆっくりと鋭気を養いなされ」
 静音は顔を上げて庄左右衛門を見た。
「風呂・・・飯・・・」
 静音は思わずごくりと唾を呑んだ。

 庄左右衛門は、静音がどれほど苦労して旅をしてきたかよく分かった。身のこなし、礼儀作法を見ればその出自は高い身分だろう。何不自由なく暮らしていたに違いない。その一途な言動からしても親御に慈しまれて育ったからだろう。
 修理が何故静音を旅に連れて来なかったか、理解していた。
 静音は必死に訴えた。
「でも・・・卑怯な修理のこと、またもや逃げるやも知れませぬ!」
「では儂等が見張って居てやろう」

 静音は長い時間掛けて風呂に入っていた。時々着替え部屋に声を掛ける。
「修理!いるか!」
「・・・うむ。ここに居る」
 鼻に膏薬を貼った修理が、そっと風呂場の戸を少し開いて覗こうとした。
 ばしゃっと湯が目に当たる。

「捨吉さん!上がるので修理をお願いします!」
 捨吉が修理に付いて部屋に行く。
「・・・修理様、申し訳ありません」
「いや・・・連れてきてくれて礼を言う」
 静音が京の喧噪の中をあのような風体で歩くよりは、自分が殺されても身近に置いた方が良い。

 ようやく静音は上がった。久しぶりに身体を洗った。着替え部屋に入ると着ていたものが無くなり、麻の帷子が置いてある。兵児帯しか無いので大小を前に抱えて捨吉の前に立った。
 捨吉は静音の容姿を改めて見て、目を丸くした。自分の感が当たっていた。

 湯上がりの若衆は、男でもむしゃぶりつきたくなるほどの色香を放っていた。
 何気なくであろうが、火照った肉体から上がる湯気と熱さをいなすために、うなじを大きくはだけて帷子を着ている。
 足の運びは無骨ではなく何となく恥じらいのある動きだ。
(こ・・・これは万作様に引けを取らないかも知れぬ!修理様はなんと若衆に好かれるお人じゃ!羨ましい!)



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