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五 珍客
 若侍は庄左右衛門の屋敷の居間に通された。

 捨吉が主人と修理を捜しに行って戻ってきた。
 済まなそうに言った。
「お侍はん。儂はこの二日、野暮用でお暇を貰ってたんで知らんかったですが、お殿様と修理様は近江の石山寺へお参りにいらはってます。明日くらいとは思うがいつ戻るかは分からん、と賄いの婆は言ってました」
「そうですか・・・では出直してきます」
 捨吉は泊まらせてくれとこの若侍は言うと思っていたので、意外な顔をした。これは本当に知り合いなのかも知れぬ。
「・・・お侍様。どうでっしゃろ。泊まっていきなはれ」
「え・・・でも」
「お殿様の書き置きがあり、儂は留守中はこの屋敷を任されたんや。よかったらお殿様達が帰るまで泊まっておくれなはれ」
 帰る寸前にこいつは逃げ出すかも知れないが、まあ二、三日ぐらいの飯ぐらいどうと言うことはない。また、自分の目がどのくらい確かか知りたかった。
 だが若侍は断った。
「明日の午後、また来ます」
(ふーん、結構堅いのう。ひょとすると本物かも)

 翌日、庄左右衛門は昼頃に伏見の屋敷に帰ってきた。馬の轡を取って捨吉は、
「お殿様、お暑いなか、お疲れはんです。修理様は?」
「宇治の平等院に寄って、阿弥陀如来の前で少し座禅をするそうじゃ。午後には帰るじゃろう」
 捨吉が報告した。
「ほう!修理殿にお客とは」

 修理は平等院の如来の間で読経の声の中、静かに瞑想をしていた。暑い日だったが、時々堂内を駆け抜けて行く風が心地よい。
(万作殿はこのような一陣の風だったのだ・・・儂にはまだ静音がいる。どうしていることか)



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