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十九 鉄砲
 落馬した庄左右衛門にとどめを刺そうと緊那羅きんならは近づいた。

 背中から落ちた庄左右衛門は、腹の傷を押さえて慌てて槍を握った。
「武田のくたばりぞこないめが!地獄へ行け!」
 その時、境内の中頃に歩いて近づいてきた善吉が緊那羅の目に入った。善吉が右手の竹を緊那羅の方へ突きだした!飛鳥の声とも思える気合いが鼓膜を震わせた!
「喝!」
「うぐっ!」
 善吉が目の前に来た様な気がした。
 八艘に刀を上げた身体が一瞬動かなくなった!

「庄左右衛門様!」
 振り向くと八艘に構えた静音が駆け込んでくる!
「うぬ!」
 斬られても骨を断つ!緊那羅は静音の顔に向けて、肩を廻して太刀を水平に振った。だが、善吉の気合いで心が落ち着かず、振るその剣は達人のものでは無かった。
 それが静音に当たる寸前、ふっと静音は消えた。下に沈み込んだのだ。後ろから庄左右衛門の槍と、前から静音の剣が、緊那羅の腹に刺さるのが同時であった!

 五部浄が、自分が負けたことが信じられないのか、修理の顔を凝視しながらずり下がって行く。
 だが次ぎにその顔は笑った様だ。
 五部浄の左手が挙がる。幔幕の一部が翻った!
「あ!修理!」
 静音が修理の前に走った。
 五部浄の身体は修理の足下に崩れていた。
 だーんだーんという音!
 修理の前で、静音の右肩と左足から血が飛び散った!
「静音!」
「修理!早く種子島を!」

 うぬっと言って修理は幔幕に駆け寄った!その影には種子島に次弾を込めている奴ばらが!
 鬼の様な顔で修理は幔幕の中に駆け込んだ!
 一人が種子島を両腕で一文字にして、修理の剣を避けようとする!修理の怒りの剣が真っ向から振り下ろされた!その大業物は銃の鋳鉄を両断し、その男を悲鳴も上げさせずに真っ二つにした!
 幔幕が切り裂かれ血潮が飛び散った!

 二人を倒すと静音に走った!
 静音は足を庇って座り込み、剣を地に刺してようやく身体を起こしていた。修理が抱き起こすと夥しい血が肩と足の傷から出ている!
「誰か!戸板を!医者を呼んでくれ!」
 静音が痛みを堪えながら言った。
「修理・・・今度は俺と勝負じゃ!」
 そしてゆっくりと目を閉じた。


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