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十八 勝負
 庄左右衛門が馬で左横に移動した。

 見事な手綱さばきで馬を横に歩かせる。中央に修理と五部浄を残し、右後ろの二人を相手にしようと言うのだ。
 その二人は、じりじりと八艘と車の構えで庄左右衛門に躙り寄ってきた。
 一人は馬を斬り、もう一人は庄左右衛門の足を斬るか。

 庄左右衛門が突然馬を立たせた!
 馬は前足を高くばたつかせて敵を敬遠する。
 庄右衛門の足が馬の腹を蹴ると、馬は後ろ足を蹴って右の男の方に素早く飛びかかった!
「う、うわ!」
 馬を斬ろうとしたが、その巨大な身体がのし掛かってきたのだ!前足が男の胸を蹴った。
 倒れたその上に庄左右衛門は馬を乗せた。
「うぎゃーっ!」

 そしてもう一人に向かおうと馬の首を廻そうとした時、左下から逆袈裟で腹を斬られた!
「うがっ!」
 落馬した!
「だ!旦那様!」
 捨吉がへっぴり腰で槍を構えたが、その男が振り向くとぺたんと尻餅を突いた。

 修理と五部浄は構えを取って睨み合っていた。静音や庄左右衛門の方を見ようものならその時が最後になる!心を無にしようとするが、集中出来なかった。
(・・・やはり、駄目か・・・)

 真剣での立ち合いでは剣を無意味に振っても疲れるだけである。相手に当たっても太刀筋が悪ければ斬れないのだ。
 古来からの武道は、斬れば必ず相手を真っ二つにする工夫を重ねてきた。生半可に斬っても致命傷でなければ相手は攻撃してくる!
 斬る時には、足の裏、膝、腰の三点を揺らぎ無き様に据えねばならない。それを瞬時の動きで完璧に行うのは、心技一体となっていなくては駄目なのだ。

 五部浄の正眼の構えに一分の隙もない。そして少しずつ剣の中に彼の身体が隠れるように思えてくる。既に死生の狭間に入っている!
(来る!)
 修理は背筋がぞぞと寒くなった!

 八艘の構えのまま飛び下がった!だが五部浄も前に飛んでいた。修理が肩を廻し袈裟に五部浄の肩を切る。だが、その前に正眼の剣が修理の左肩を突き刺した!
「ぐっ!」
 修理は痛みで左手を柄から離してしまった!五部浄の勝ちを見た顔が間近にあった!
「見たか!青二才!」
 修理は咄嗟に五部浄の陣羽織の裾をひっ掴んだ。それに五部浄の刃を巻いて、その上から貫かれた肩の痛みを堪え、渾身の力で握った!
「馬鹿な!」
 五部浄は剣を肩から引き抜こうとしたが修理の握力で簡単に抜けない!
 そして修理の大刀が、自分の鳩尾から首の下に突き抜けるのが分かった。
「ぐおうっ!」


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