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十四 死闘の前
 二十二日の未明。

 修理は庄左右衛門の部屋に別れを告げに言った。静音も修理の後を部屋に付いてくる。庄左右衛門は既に起きており、上座でその挨拶を受けた。
「御武運を祈り申す」
 静音は試合場に付いて来るのかと思ったが、式台で見送った。
 怒りの目で言った。
「後でお前の骸を取りに行ってやる」
「息災でな。・・・静音」
 最後の名を心に刻みながら呼ぶ。

 修理は捨吉と共に上京に馬で向かった。

 向かうは曹洞宗、萬松山天寧寺!
 山門から東を眺めやれば比叡山が絵の様に見えるところから額縁寺と俗に言われる。

 明け六の鐘が鳴り始めた。広い境内は周りを竹藪で囲まれている。修理と捨吉は馬を降り、既に開いていた額縁の山門から入って行った。
 見ると境内の周りには幔幕が掛けてある。その上から見事な孟宗竹が、背を競うかの様にそそり立つ。

 修理は捨吉に言った。捨吉は小袖の裾を捲り脇差しを刺して短い槍を持っている。
「捨吉さん!良いか、手を出すな。その武器はあくまで貴方の身を守る為じゃ!」
「・・・へい、儂が十年、若かったらのう」

 本坊を左手に、境内の奥に陣羽織を着た武士が床几に座っていた。その周りに襷の四人の配下。
「御身が佐久間五部浄殿か!」
「いかにも。お前に討たれた一雲が兄。また我等のお役目もお前のお陰で解かれた!佐久間一族、ここで終わる!お前には共に死んで貰う」

 その時、嗄れた声がした。
「やれやれ、境内を貸せと治部(石田三成)様から言ってきたので、どういうことかと思っていたらこんなことか」
 皆がその声に顔を向けると、本坊の玄関に一人の老僧が座っていた。

善吉ぜんきつ和尚!黙っておれ!別にお主に加勢せよとは言わぬ」
「こんな老いぼれに治部殿は何をせよと申すのかの。お前等の様な者達に剣を教えたのは間違いじゃった」
「お主の剣と先祖伝来の流れを工夫して我が流れとした。それで満足じゃろうが!」
「・・・じゃがお前等は無垢の者達を殺めたであろう!」
「役目じゃ!」
「許せぬな」
「!」
 老師はふらと立ち上がると本坊の高みから階段を一つ一つ降りだした。齢は七十は越えているだろうか。その歩みはしっかりとしている。
 手には笹がまだ付いた細い長竹を持っていた。



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