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  bloom 作者:美夕
story・28 追い詰められて…
          見下ろすと眠らない街が僕を一瞥した
          夕刻から降り始めた雨は段々と雨足を強め 街を飲み込んでいった
          激しい雨… 
          何かに怯え 逃げ惑い、せわしなく動き続けるワイパー…
          クラクションが悲痛な叫びをあげ 助けを求める
          だが、街は無関心だった… 
          冷たく背を向け 横たえた体を持て余していた
          逃げ惑う姿はテールランプの赤い配列となり、殺伐とした街と、荒れ狂う雨粒を赤く染めていった
          強風に煽られた赤い雨粒がバルコニーの窓ガラスに叩きつけられ流れ落ちていく
          それはまるで あの夜、車の中から見た血模様に似ていた


血の匂いと奴の狂気がビル間によどんでいる
僕達は通報で駆けつけた警察官に署へと同行を求められた
警察署の医務室で純一と彼女が怪我の手当てを終わる頃には 廊下にはマル暴の姿があった
金髪野朗から薬物反応が出たんだろう
そして純一が岡崎組組長、岡崎康文の長男であり 事実上、跡継ぎである事
金髪野朗が対立状態にある。と、言われている○×組に出入りする使いっ走りのガキである事が 刑事達を興奮させている事は予想出来た
ただの”喧嘩”と言う夜の街の日常が”薬”と言うキーワードで二つの組を結びつけたのだ
『重箱の隅を突っついても良い』と言う暴対法と言う名の夜景は用意されている
刑事達は”男女関係のもつれ”などと言う アルバイトが作る食い慣れたジャンクフードではなく 
有名料理人の作る”暴力団撲滅・麻薬ルート解明”と言う名の 華やかで派手なディナーを食いたがっていた



   …過去はまだあたしを追いかけて来る
   あたしは医務室で手当てを受ける前に 何枚もの写真を撮られた
   引き裂かれたブラウスから 下着があらわに覗く 
   殴られ切れた唇… 叩かれ晴れ上がった頬… 掴まれ痕が残る腕… 身体のすべての擦り傷…
   隠す事、拒む事は許されなかった
   あたしの気持ちを無視してシャッターが切られフラッシュがたかれる
   そのシャター音からは 警察官達の興奮がもたらす昂揚感さえ感じられた

   忙しく出入りする婦人警官の断片的な会話の中に ”薬物乱用”と言う単語が聞き取れた
   事態があたしの見知らぬ方向に走り出している様だ

   指紋と髪の毛数本の提出を求められ 簡単な説明を受けた…
   武の尿から薬物の成分が検出され それは過去 長い間乱用されていたと思われる事…
   その時期とあたしと付き合っていた時期が同時期である事…
   
   何かで聞いた事がある…。
   髪の毛は毛根から生え伸びる時期に摂取した薬物をそのまま細胞内に蓄え伸び進む
   だから髪の毛を調べれば過去の薬物使用歴の有無、摂取した時期と期間が分かる。と…

   警官達のあたしを見る目… 
   ”同じ穴の狢…”と蔑んでいる様に見える
   あたしは疑われ、調べられているのだ
   
   
     あたしにはずっと 聞こえるはず無い武の狂気な笑い声が聞こえる
       << …… クックックッ お前は俺と来るしかねぇ〜んだよ   …… >>


   いつになったらあたしは過去から許されるのだろうか



だが、警察の思惑通りにはいかなかった
僕達の証言には多くの証人と目撃者の証言があった
異常行動者の対処方法について 百貨店側から警察に相談をしていたと言う事実
そしてその書類に添付されていた”要対象者”としての金髪野朗の数点の写真と 膨大な防犯映像
それに沿って提出した”被害届け”が金髪野朗の長い間のつきまといと、嫌がらせを証明した
更には ○×組の捜査さえ出来なかった 金髪野朗は組員でも準構成員でもなかったからだ
薬は繁華街をうろつき見知らぬ外国人から買っていたと自供したらしい
警察は筋書きを書き変える事は出来なかった
   


   …ねぇ 何でみんなには聞こえないの? あの鍵束の音がっ!
   嫌っ! どんどん近付いてくる まだあたしを探してるんだ   
   闇の中を近付いてくる 逃げなくっちゃ!!
   ほらっ! 笑ってるじゃない! 聞こえないの?! あの声が!

      −−−あっ!廊下にいるっ! 煙草を揉み消した!!
        << あぁ〜おぉ〜いぃ〜ちゃぁぁ〜〜ん… 見ぃ〜つけたぁ〜… >>

      −−−…?? ベッドの下?? あたしの足を掴もうとしてるっ!!
        << セックスしよぅよぉ〜 今夜はちゃんと前戯してあげるからさぁ〜 >>

      −−−今、ベランダから覗いてる ガラス叩いて呼び続けてるっ!!
        << 今度お迎えに来るからね… >>
   
   だめだ! 動いたら見つかっちゃうっっ!!
   闇の中に引きずり込まれるっっ!!
   ”!! っっっぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!”
   あたしは手の甲を噛み 悲鳴を噛み殺した
   口に広がる血の味が 過去をあたしにつきつける


   闇の中、街路樹が強風に煽られ枝葉を散らし笑い狂う
   雨粒はガラスにネットリと絡みつき あたしの部屋に忍び込んでくる
   あたしは耳をふさぐ…
   涙がとめどなく流れる…
   身体の震えが止まらない… 

   ベッドの上で膝を抱きかかえあたしはジッと朝を待つ
   今夜も眠れない…
    

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