警告
この作品は<R-18>です。
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天木眞希5−4
すいません、話がよくわからないんですが……」
離れへともどる中庭を歩きながら、眞希は結城に説明を促した。
「榊さんは、自分が相手では嫌やろうから、一緒にいる俺が相手をしろとそう言うたらしい。です。俺の恋人だといえば誰も手を出さないやろうからと。それを見せろというのは、たぶん鎌田の希望やろな。高野が縄師をしていたというのを聞いて勘違いしてるらしい。つまり、あんたを……」
「調教してるとか?」
「下種のかんぐりやな。」
「けど……」
「たぶん、榊さんには断れなかったんやろう。……ふりだけでも嫌か? 嫌ですか?」
結城の話し方は、丁寧になったり、そうでなかったりする。眞希にどう接していいのか、戸惑っているのだ。鎌田というのが、榊の上にある組の組長であることは聞いていた。つまり、断れば榊の立場が悪くなるということらしい。
「敬語使わなくてもいいですよ、けど……」
眞希は、結城の目をのぞきこんだ」
「ふりだけですむの?」
「さあ」
いつの間にか二人は中庭で立ち止まっていた。向かい合うというより、少し斜めに相手の顔を見ながら話をしていた。触れ合うほど間近にいながら、以前のような恐怖も感じなければ、嫌悪感もなかった。
「ここを出て、安全な場所ってあるの?」
「まだ、つかまっていない幹部がいるやろからな」
つまりは安全ではないということだ。
「勇次は嫌がらない?」
「あんまり気にせんかもな。それより、高野に頼まれてるから、あんたを守るとそればっかりや。」
眞希の質問に、結城はぽつりぽつりと答える。まるで決意をするのを待っているようだと、眞希は思った。
「結城さんは、嫌じゃないんですか?」
「俺は……」
珍しく結城が言葉を濁した。その意味に気づくよりも早く、眞希は言葉を続けていた。
「榊さんに、言ってきてください。恋人のふりをするって。」
「……」
「いま、言ってきてください。お願いします。勇次に話したら、また、迷うでしょう?」
「ほんとうにええんやな。」
「はい」
今度はためらわずに眞希は答えた。あれこれ考えたら、身動きができなくなりそうだった。
貢物が欲しいと言うのなら、見世物になるくらいなんでもない。くじけそうになる心に言い聞かす。
「行ってください。」
結城が行ってしまうと、眞希はゆっくりと息を吐き出した。言葉を吐き出すたびに緊張で強張っていた体の力が抜けていく。
中庭の池に開いた睡蓮の清冽な美しさが目を射た。
自分が、結城の前で勇次にしたことに比べれば、なんでもないことなのかもしれない。
けれども、高野を裏切ることになるのだろうか? 初めてそんなふうに思った。
離れに向かって歩いていくと、勇次の姿が目に入った。
「遅かったやないか?」
座敷に上がるよりも早く、そう声を掛けられた。
「勇次」
「なんや?」
「ごめん、結城さん借りるから」
自分が恥ずかしい思いをするよりも、もっと、勇次につらい思いをさせる。そんな風に考えて、眞希はこの場を切り抜けていこうとしていた。
「俺は行かへんで」
勇次の声が追いかけてきた。眞希は隣の部屋へのドアを開いた。
「うん」
頷きながら振り返ると、勇次が見ていた。
「ふりだけだから」
「そやな」
その答えを聞いてから、眞希はドアを閉めた。
そのあともどってきた結城と勇次の間でどんな会話が交わされたのか、眞希は知らなかったし、聞く気もなかった。結城にすまないと思っていた。自分をレイプした男に抱く感情ではなかったが、ここに来てからも、それ以前にも、結城は常に眞希のボディガードのような立場でいることが多く、いつのまにか、眞希は結城の姿を見つけては安心するようになっていた。自分をレイプした男だと繰り返していなければ忘れてしまいそうなほど近しさを感じるようになっていた。
その理由をあえて、深く考えようとはしない眞希だったが、心の奥ではとっくに知っていた。高尾を思い出させるのだ。
高校生のとき、自分を守ろうと、いつでもそばにいてくれた、死んでしまった友人を思い出させるのだ。
だから、余計に巻き込みたくはなかった。すまないと思った。
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