ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
警告   この作品は<R-18>です。 18歳未満の方は移動してください。
十と一 阿修羅
 作兵衛が長大な業物を抜いた。
 右肩上に八艘の構えにそれを引き上げる。しかし左肩を大きく前に出しその構えは高い。
 力で防御さえも叩ききる据えもの斬りである。
 本来動かぬものを斬る技ではあるが、実戦に即し目にも止まらぬ速さで切り下ろすのが作兵衛の技であった。
 師が負った傷を観察した静音は、それがどのような太刀であるか分かっていた。

 しかし静音にとってこれは初めての真剣での立ち会い!勝算はあるのだろうか!

 だが、静音の心は死を覚悟し落ち着いていた。
 剣の極意は相討ちの心。
 相手の繰り出す刃を避けるのでは勝敗は運を天に任せるしかない。相手の振り下ろす刃に乗り勝つには、自分の身体の中心線にそって、相手よりも早く正確に剣を切り下げるしかないのだ。
 だがその前の策略も方便。静音の心に奇策があった。
 じりじりと間合いをお互いに詰める。静音は柄に手を掛けたままだ。横に抜くつもりか。

 作兵衛は勝利を確信した。
 横に抜くために鞘を払う時間にくらぶれば、八艘から振り下ろす時間の方が圧倒的に早い。こ奴、道場ではならしたのだろうが、それで儂に立ち向かうとはまだ経験が足りぬ。
 ・・・だが直ぐ殺すのは惜しい。
 右腕を切り落とし、戦闘力を奪って後は出血で死ぬまで陵辱の限りを尽くす・・・ぐふふ、それに決めた。
 この外道は舌なめずりした。
 静音が前に少し踏み込んだ!
 貰った!作兵衛の足が大きく踏み込み肩がもの凄い速さで回転した。雁金に大刀が振り下ろされる。
 静音の身体がその瞬間後ろに撥ね飛んだ!右手を柄から離した!
 何!作兵衛は違和感を感じた。だが、振り下ろされた剣はその慣性で止めることは出来ない。
 静音の右手首を切り落とすはずの作兵衛の剣先は、空を切り静音の足下に落ちた!そして静音は手の平を上にして剣のつかを握った。そして引き抜いた!
 作兵衛の振り下ろされた剣は今度は左肩の上に引き上げられる!
 静音の抜き方は本来の方法と逆であった。
 抜いて左肩の上に上げるが、柄の持ち方は逆である。だが上に上げられた剣の柄を待っていたのは左手だった!左手で順に持つ!そして右手が離され、順の持ち方に変えられる!
 香取神道流にあるさか抜きの太刀!
 全ての武道流派の源流といえる神道流のこの技は、幼い時新右衛門が教えてくれた。まだ非力の静音と修理には、敵の目を眩ませて勝ちを取る方法だった。
 だが、一度見せれば二度と通じないと念を押された。
 作兵衛が左八艘に剣を上げるのと静音が両手を順に持ち帰るのと同時であった。そして同時にそれが振り下ろされる。静音は無心であった。
 ごきという不気味な音がして両者の動きが止まった!
 作兵衛の剣は静音の胴を斬る寸前に止まっていた。そして静音の太刀は作兵衛の頭を真っ二つに両断し首まで沈んでいたのだ!

 迸る血飛沫に静音は血まみれになり、額から被った血潮が頬を通り口に入った。そして長い首に幾条もの筋が垂れまるで血の首釧くしろの様に見える。
 目を剥いてその顛末を見ていた三人の若者は、憤怒の顔の興福寺少年阿修羅像が降臨したと考えた。
「ああーっ!人間ではない!逃げろ!」
 裕之助達は命からがら一目散に逃げることとなった。

 知らせを聞いて内藤上総と古性家の男どもが百済廃寺に着いた時、もう静音の姿は無かった。そこには頭を割られて絶命した伊那作兵衛の骸が、胸に手を合わせて横たわっていただけだった。


衆道剣風録その二、如何でしたでしょうか?
こういうTVドラマみたいな書き方をしたのは初めてで、楽しいですね。
さて、都に上った修理は?静音は修理に会えるのでしょうか?
会ってちゅーをするか怒りでぶん殴るか、斬って捨ててしまうか?いやー衆道小説って面白いですね・・・(?
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
※感想を書く場合はログインしてください。
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。